人口減少とともに、近隣市町への人口流出が進んだ和歌山市では、市の中心部の衰退が一気に進んだ。行政はコンパクトシティーを打ち出し、中心市街地のにぎわいづくりに動き出した。これに呼応したのが、中心部に和歌山市駅を擁する南海電気鉄道(以下、南海電鉄:大阪市)だ。
南海電鉄と和歌山市
和歌山市駅の乗降数60年前の3分の1に
南海本線和歌山市駅は、1903年に開業し100年以上の歴史を持つ。地元では「市駅」の愛称で親しまれてきた。その乗降客数も、60年代の1日約5万人以上をピークに、近年は3分の1程度にまで減少していた。
和歌山市では、郊外のロードサイドで大型商業施設の開設が相次いだ。それに従って、住民の買い物先はまちなかから郊外に広がった。まちなかの人口減少が進むにつれ、中心市街地に空き地ができると、多くの場合、駐車場として運用された。その結果、にぎわいがさらに遠のいた。
南海電鉄にとっても和歌山市駅周辺の衰退を見過ごすことはできなかった。同社は、和歌山市と協議し、市の玄関口としてふさわしい駅施設と、まちなかの再生を目指すことで一致した。2015年、和歌山市と南海電鉄は、和歌山市駅活性化計画を発表し、官民連携で和歌山市駅の再開発に取り組んだ。