大和ハウス工業(大阪市)は、自社の賃貸住宅のさらなるブランド力向上を目指す。賃貸住宅の入居者が、同社グループのすべてのサービスの最初の接点になるという考えからだ。竹林桂太朗上席執行役員は「『意外と良かった』という評判を、『やっぱり良かった』に押し上げていく」と語る。
「意外」を「やっぱり」の評判へ
67万戸の顧客基盤 事業間連携で活用
ー機構改革により、賃貸住宅の建築を手がけていた集合住宅事業本部はハウジング・ソリューション本部の傘下に位置付けられました。その狙いは?
部署間のシナジー効果を高める目的があります。4月の機構改革で、住宅系の事業を統括する「ハウジング・ソリューション本部」と非住宅事業の「ビジネス・ソリューション本部」の2大本部制となりました。部門が統一されたことで、住宅系だと商材の共有がしやすくなったり、顧客に対する建築提案の場面でも、戸建てにするのか集合住宅にするのかなど提案の幅が広がったりします。部署単位だった情報リソースを、個人情報の問題をクリアにしたうえで横断的に共有し、ビジネスチャンスを逃さないことが狙いです。例えばグループ会社である大和リビングの管理物件の入居者が、当社の住宅展示場に来場した際に、既存顧客であることを把握したうえで商談を進めていきたいです。
ー顧客情報の管理が重要になってきます。
はい。そのために「一組の顧客が、さまざまな形で当社グループのビジネスにつながっていることを理解して仕事を進めていく」という思考を根付かせていきます。自社ブランドの賃貸住宅「D‐ROOM(ディールーム)」の入居者が、その後、当社の戸建てや分譲マンションを購入しているかを例に挙げると、その割合はまだまだ低いです。賃貸管理を通して、グループ内には顧客のビッグデータが蓄積されています。退去に際し、賃貸管理事業単体で考えるとつなぎ留められない理由でも、それが物件購入が理由であれば、建築事業としてアクションを起こせるはず。今までこのアクションをやり切れていなかったのではないかと考え、しっかり対応していく方針です。目指すのは高級ホテルのような顧客管理。フロントに電話をかけると「〇△さまいかがされましたか」と名前を把握していて、要望をヒアリングしてくれるような質を目指します。
ー賃貸住宅だけで見ると、67万戸超の顧客基盤が存在することになります。ここにしっかりアプローチしていくと。
大和ハウスグループとのファーストコンタクトは、賃貸住宅だと考えています。第一印象が良ければ、その後の関係性構築につながる。実際に、D‐ROOMの入居者がサービス面も含め住み心地を気に入り、住宅展示場で当社の住宅を見学してくれたケースがあります。これが理想の形です。われわれは、オーナーのビジネスを成り立たせることが使命ではあるものの、家賃を払うエンドユーザーがいないとビジネスは成立しません。オーナーの先に誰がいるか、目線を遠くに置いた仕事の進め方が重要になります。入居者からの評判の力を軽視してはいけない。それは商品設計・デザイン面においても、外構や植栽にまで気を配っていく必要があると考えています。
まちづくり参入 1000坪に10棟建築
ー3月から、重量鉄骨造の3・4階建て賃貸住宅「THE STATELY(ザステイトリー)」の販売を開始しました。
物件の大型化に対応できるラインアップを増やしました。これにより、顧客属性の幅を個人から法人にまで広げます。加えて、街並み形成の領域に入り込んでいきます。500〜1000坪の土地を自社で取得し、3〜10棟を建てるなど、一つのエリアとして賃貸住宅を開発し分譲する。そのためには、建物単体の魅力だけではなく外構や植栽の作り込みが求められます。
ー賃貸住宅で注力するのは開発の領域ということですね。一方、土地活用の伸びしろはどう見ていますか。
土地活用の案件獲得においても、入居者のニーズが重要になってきます。D‐ROOMの入居者から「意外と良かったD‐ROOM」という多数の意見をもらいました。評価は高いと思いますが、これを「やっぱり良かったD‐ROOM」という評判に持っていくことが私の最大のミッションです。入居者の満足度が高まり、安定したニーズが獲得できれば、同じエリアでアパートが何棟建っても、高い稼働率を維持できる。するとオーナーがD‐ROOMを建てる、という循環が生まれるでしょう。入居者にとって物件の価値が高まることが、「人口減」「過疎化」という理由と無縁になる一番の戦略だと考えます。
ー供給物件のZEH(ゼロ・エネルギー・ハウス)率が75%に到達しています。
目指すのは100%です。ただ寒冷地の北海道、東北、北陸地方においては、現状の商品ではZEHの条件を満たすことが難しいです。そのため今期は、GX(グリーントランスフォーメーション)対応の木造商品の販売を控えています。物件が建つ地域の間伐材を使用するなど、地元の林業の維持にも貢献できる商品として展開を予定しています。
(齋藤)
(2025年8月4日60面に掲載)




