地場で95年続く老舗企業のオータニ(山口県宇部市)は、工業用機械の販売・メンテナンス事業から始め、建設・不動産事業へと領域を広げてきた。ストック型ビジネスを重視しながら、事業を多角化することで経営の安定を図る。2024年には農業を開始。新たな売り上げの柱をつくり上げることを目指す。
創業95年の知名度で管理獲得
売上高15億円
大谷英治社長は「会社全体でストック型ビジネスを重視し、主要事業はどれもストック収入が見込めるものを展開している。1年先の売上高が予測しやすいというメリットもある」と話す。
オータニは不動産事業のほかに、総合建設事業や工場構内作業の請け負い、沿岸荷役作業、機械のメンテナンス事業を展開。25年7月期は15億3000万円を売り上げた。ここ10年の売上高は10億〜15億円で推移しているが、工場の機械のリニューアルやメンテナンスが重なったことで、26年7月期までは売り上げが伸びる見込み。年間の売上高のうち、実に8割超がストック型ビジネスだ。

賃貸住宅事業は同社の売上高のうち1割超を占める。賃貸住宅事業の売上高の55%が自社保有物件からの賃料収入、25%が賃貸仲介、約20%が賃貸管理だ。
管理戸数は809戸。そのうち129戸が自社物件だ。管理物件の約9割が山口県宇部市に所在。そのほか同県美祢市や山陽小野田市でも物件を管理する。管理受託オーナーは240人弱で、地主が約9割を占める。入居率は87.3%(6月5日時点)だ。
受託部門を設立
同社は管理戸数の拡大に力を入れる。20年から積極的に管理受託営業を行っている。
同社の強みは、95年間経営してきた地場での知名度の高さと、築き上げた人脈だ。それにより、区分マンションや、オーナーが転勤期間中に貸し出す戸建ての管理受託も増えている。
21年には管理受託の専門部署を設立。3人が専任で所属する。商圏のオーナーリストを作成し、セミナーを通じて接点を持ち管理獲得を進める。
セミナーは年に4回開催。1回につき20人前後が参加する。そのうち3分の2が高齢者、残りは20〜40代だ。参加者の8割は次回以降のセミナーも聴講するという。リノベーションをテーマにした回が好評で、そのほかにも家族信託や相続について取り上げている。
リノベをテーマにする際は、リノベ実施により、自社物件の家賃や入居率をどれぐらい上げられたのかを説明している。「事例を紹介することで説得力が増し、管理受託やリノベの受注につながっている」と大谷社長は話す。
人口減少の影響で賃貸仲介件数が落ちている中、管理に力を入れ、安定的な売り上げ確保を目指す。
トマト栽培に参入
24年から農業に参入。事業の多角化をさらに進め、経営の安定を狙う。
栽培するのはトマト。ビーバーを自社のキャラクターとしていることから「ビバトマ」のブランド名で売り出している。2200㎡の敷地内に、栽培に必要な光・温度・湿度・二酸化炭素(CO₂)濃度などの環境要因を電子制御した環境制御型ビニールハウスを設置し、栽培を行う。これにより人員コストを削減しつつ、1年のうち9カ月間、反復して同じ株からの収穫を可能にする。環境制御型ビニールハウスで育てることにより、味のバランスも良くなるという。
栽培しているトマトと大谷社長
25年4月からスーパーなど27カ所で委託販売する。5月には駅前の祭りで試食イベントを行ったところ、500人以上が並んだという。
管理物件のオーナーにも配布することで、営業トークのきっかけにもなっている。
「事業の多角化により、いずれかの事業が不安定になっても、グループ全体で安定経営を行うことができる。ここ3年は全体的に業績が良いので、その間に新規事業を始めたいと農業を思い付いた。高品質な作物を作出できれば、農業はもうかると確信している」と大谷社長は話す。
26年7月期には農業のみで売上高3500万円以上を目標に掲げる。
オータニ
山口県宇部市
大谷英治社長
(野中)
(2025年9月1日20面に掲載)




