講演者
アスタス
小林一恵 常務取締役
若手が後輩育成、離職ゼロ
新卒採用が中心「根っこから育てる」
当社は島根県安来市と松江市で不動産と建設を主な業務としている小さな会社。
現在、社員が30人、平均年齢は33歳。管理戸数は1500戸ほど。残業は1人あたり平均月4.6時間、休日は年間122日。
給料についても、ベースアップして新卒の賃金を上げ、それに合わせて既存の社員の給料も上げているので、これまでと比べるとかなり高くなった。昇給もこだわっていて、2024年から年2回の昇給を行っている。当社で長い期間働くほど給料が上がるようにしたいと考えており、これが社員定着の大きな理由になっているかと考える。
ただ、地方では待遇や働き方を改善しても、なかなか新人に来てもらえないし、定着につながらないという課題がある。当社でいえば、会社が軌道に乗って手が足りなくなってきた時、誰彼構わずどんどん採用した。しかし、何人かが示し合って同時に辞めてしまったり、不祥事が起きたりと散々な目にあった。体制を改善するため、10年ほど前に採用についての方針を改めた。他社のやり方を勉強させてもらったり、アドバイスをもらったりして採用基準を見直していった。
従来は中途社員の採用が中心だったが、これからは根っこの部分から育てていかないといけないと考えを改め、新人を取るという方向にシフトした。まず「誰でもいいから取る」ということをやめた。いくら人を増やしたいといっても、無理に入れることはない。誠実に、正直に、きっちりと自分たちの仕事を伝え、賛同してくれる人だけを採用する。
食事補助や育休推進 3年間離職者なし
当社の利点は、規模が小さく小回りが利くことと、社員同士の距離が近くて温かみがあるところ。そこを出発点と考え、自分たちにしかできないことは何かと考えた。そこで始めたのが、会社見学。これを毎日受け付ける。最初はほとんど希望者が来なかったが、それでもいろいろなところで募集をかけたり、大学や高校を訪問したり、営業のようなことをこつこつと続けた。
アスタスが学生向けに「部屋探し」の授業を実施した際の様子を紹介
もうひとつの試みとして「アス飯」という社員への食事の振る舞いがある。オーナーの皆さんからいただいた野菜や米を使い、会社でご飯を作って社員やインターン生に振る舞っている。これも社員の定着に役立っていると考える。
また、社員には家族との時間を大事にしてもらうことも重視している。当社には男性社員が多いのだが、彼らに子どもができると、半ば強制的に育休を取得してもらっている。
その結果、ここ3年で離職がゼロになり、成果を感じている。近年は働き方や制度の改革、さまざまな施策について、県から表彰されたり、いろいろな方面から評価されたりするようになった。
なぜ新卒を採用するのか考えてほしい。会社にとって実施しやすく、社員にも長く働いてもらえて、お互いのためになることは何か。その意義を見つめ直す必要がある。当社の場合、いま新卒の社員がどんどん入ってきているが、彼らに育ってもらうため、新卒の採用を続けている部分がある。若い人たちに後進の育成を任せる狙いだ。私を含めた古い社員ではなく、若い子がさらに若い子を育てることで、教えられる側だけでなく、教える側も成長し、会社も成長していく。そのような循環をつくっていくことが、採用の目的の一つになっている。
なぜ採用しなければならないか、その意味を社員全員に行き届かせて、皆のベクトルを合わせることが最も重要ではないかと思う。
(2026年4月27日18面に掲載)





