サービスで業界課題解決目指す【賃貸住宅フェア2025 不動産AIテックコンテスト】
REMODELA(リモデラ),Nice Eze(ナイスエズ),COSOJI(コソージ),estie(エスティ),nat(ナット)
管理・仲介業|2025年09月16日
賃貸住宅フェア2025東京の主催者特別企画「不動産AIテックコンテスト」で登壇するファイナリスト5社が決定した。業界の課題解決につながりうる独自のAI(人工知能)サービスが目白押しだ。
不動産AIテックコンテスト、5社が登壇
REMODELA、退去立会・精算を無人化
全国で導入100社超
REMODELA(リモデラ:大阪市)が提供する「AI退去立会」は、退去立ち会い関連業務の効率化に寄与するサービスだ。管理会社が退去立ち会いを行わずに、入居者自身がスマートフォン上でAIアバター(分身)とチャットをしながら退去精算を行う。2024年12月の提供開始以降、利用事業者数は100社を超える。
同サービスはオンラインで退去立ち会いを完結させる。賃借人がスマホで室内の動画を撮影。AIが傷や汚損の有無や状況を判定する。傷などが生じた理由については賃借人自身がチャットで報告。その後、退去精算に関する工事内容や賃借人の負担額、負担割合が自動で提示される。
負担割合や修繕費用は、国土交通省が示すガイドラインや事前に登録した契約書の内容、案件ごとに設定した工事単価表を基に算出。なお、算出にはLLM(大規模言語モデル)は活用しないため、AIが事実と異なる回答をするハルシネーション(幻覚)は生じないとする。
顧客層は管理会社がメインで、エリアは全国。管理戸数500戸未満から10万戸を超える規模の事業者まで、幅広く利用しているという。福本拓磨社長は「月の退去件数が5〜10件程度を超えると効果が大きくなるため、導入に至りやすい」と話す。
アバターが退去立会に対応
AIは主に二つの点で活用されている。一つ目はアバターを通じた会話機能。もう一つは動画から汚れや破損箇所を識別する画像認識だ。同社は過去に手がけた原状回復工事の実績やサービスを通じて蓄積してきた画像データをAIに学習させ、画像検知の精度を高めている。「AIにゼロから考えさせると誤答が生じてしまう。だからこそ、ガイドラインや契約書などの判断基準や工事の単価表はシステム側で固めて、AIには傷や汚れの検知だけを任せるようにした」(福本社長)
今後は家賃債務保証会社と連携し、AI退去立会が提示した傷や汚れについて賃借人の同意がなくとも代位弁済できる仕組みを発表する予定だ。
福本社長は「AI退去立会を業界の当たり前にしていきたい」と話す。年間300万件といわれる退去立ち会いのうち、3分の1にあたる100万件の利用を目標に掲げる。
REMODELA
福本拓磨代表取締役
Nice Eze、省スペースAI宅配ボックス
初期費用なしで設置可能
Nice Eze(ナイスエズ:東京都港区)が提供する「スマロビ」は、サイズ変形式のAI宅配ボックス「スマロビAIラック」と無人販売機「スマロビAIストア」をマンション向けに提供するサービスだ。物流問題の解決を目指し、2023年5月にサービスの提供を開始。利用物件数は10棟程度で2000世帯超に上る。
AIラックは、荷物のサイズに縛られないのが特徴だ。横の仕切りがない棚で、ゴルフバッグや飲料入りケースなどの大型荷物から、書籍や日用品といった小包まで柔軟に収容できる。AIセンサーにより、アプリを通じて荷物が届いたことを入居者にリアルタイムで通知。入居者はマンションのエントランスにある棚から荷物を直接受け取れる。
スマロビAIストアはAIラックに併設する無人販売機。入居者はスマロビAIストアで直接商品を購入できるほか、飲料水や酒類を各住戸で受け取ることも可能だ。
導入ターゲットは賃貸・分譲マンションやホテル、オフィス。初期導入費用は無料で、保守料は月額2万円程度。配送事業者からの委託料で収益を確保する。松浦学社長は「人手不足が深刻化する中で、入居者・管理人・配送事業者、全員にとって使いやすいサービスを目指した」と話す。
AIを活用している点は大きく分けて三つ。
サイズの柔軟性があるAIラック
一つ目は、荷物の位置の検知。棚に入った荷物の位置をAIが自動で検出し、途中でずれても最新の位置を検知する。使用許可を持たない人が無断で荷物を取り出すとアラートが鳴るためセキュリティー面でも効果があるという。
二つ目は荷物の利用状況の分析だ。サービスを導入してから入居者の利用状況をデータ化してAIで分析する。運用を重ねることで必要な容積を把握し、器具の配置などを常に最適化していく。
三つ目は、AIストアや入居者向けアプリで得られた利用者の需要の分析。
「マンションを一つの生態系と捉えてマーケティング分析する」(松浦社長)。
30年までに導入物件400万世帯を目指す。
Nice Eze
松浦学代表取締役
COSOJI、BM作業報告を自動化
500社超が導入
COSOJI(コソージ:東京都千代田区)が提供する「COSOJI」は、ビルメンテナンス(BM)業務の作業予定や報告書をアプリで一元管理できる。AIにより現場の報告業務の効率化や作業の質向上に寄与していく。
同サービスでは、管理会社やオーナーが日常清掃、定期巡回、設備交換、大規模修繕などのBM事業全般を外注できる。「COSOJI BM」で現場作業を地域の工務店や作業員に外注。AIサービスの「COSOJI Hub(ハブ)」で物件情報や作業予定、報告書を一元管理。発注者の管理会社やオーナーは、AIが作成補助した報告書を専用アプリで確認可能。
顧客は不動産投資家、賃貸管理・BM事業者のほか、FC・小売業・物流事業者など幅広い。サービスの導入数は全国10万施設、100万世帯を超える。
サービスの独自性は大きく二つ。一つ目は不動産業界出身者が開発を手がけている点だ。富治林希宇社長は現場施工・BM・PM・AMなど不動産業界での実務経験を持ち、宮川沙織執行役員は15年以上にわたる管理業界の経験を生かして現場支援や管理会社対応を統括。宮川執行役員は「現場の課題や専門用語を理解したうえで、利用者の声をサービスに反映し続けている」と話す。
二つ目は現場で蓄積してきたデータをAI開発に生かしている点。同社は事業開始以降、導入数の拡大とともに、全国の建物情報や写真付き報告書のデータや見積もり、不具合情報のデータも蓄積してきた。それらのデータをAIに学習させ、撮影画像から汚れや放置物、修繕するべき箇所などを自動で検知する機能を実装。自動で修繕工事の見積もりや提案書を作成する機能も提供を始めている。
アプリで現場のBM業務の生産性・質を向上
今後は、写真を撮るだけで物件管理を効率化できる仕組みをリリースする予定だ。
修繕時期の提案や見積金額の査定、長期修繕計画の作成、オーナー向けの修繕提案書をAIが生成する機能なども企画・検証中だという。
富治林社長は「管理会社の担当者は出社したらほとんどの事務作業が終わっていて確認するだけの状態になり、余力を付加価値の高い事業に充てられる」と語る。28年までに設置を管理する事業者6000社の達成に向け動く。
COSOJI
宮川沙織執行役員
estie、独自のデータ基盤を構築
不動産アセット領域を拡大
estie(エスティ:東京都港区)は19年に提供を開始したオフィス情報データベースを皮切りに、5年で10種類のサービスを展開する。
「estie マーケット調査」はオフィスビルの賃料、空室率、テナントデータなどを網羅。「estie 物流リサーチ」では物流施設、「estie レジリサーチ」では賃貸住宅と、それぞれのマーケット情報を網羅的に検索して市場分析に活用できる。
estieレジリサーチの画面イメージ
さらに、案件管理や物件売買の支援ツールも備え、情報収集から売買まで不動産取引業務を一気通貫で支える。これらのサービスを活用することで、営業先選定の効率化や新規顧客の開拓、提案内容の高度化、取得・売却のための戦略立案の効率化につなげられるという。ターゲットはデベロッパーや仲介会社といった不動産事業者と収益不動産を扱う金融機関。
同社のデータ基盤の独自性は情報収集の手法にもある。データベースの情報として、一般的な公開情報であるパブリックデータに加え、不動産業界のみで流通するセミパブリックデータの収集を推進。その中にはインターネットで公開されていない情報も多く含まれる。例えば、ビルの1階にある案内板で把握できるテナント情報や仲介会社に直接問い合わせてのみ知ることができる賃料などだ。約50社のパートナー企業とのパイプラインを生かし、潜在的な情報の収集を可能とする。
データ基盤をつくるには、AIが分析しやすいように情報を整理する必要がある。だが、企業ごとに独特の入力方法がある表やマイソクなどのデータから分析に適した情報を自動的に抽出するのは技術的に難しい。同社では、構造が定義されておらず、情報がバラバラになっていた「非構造化データ」を、分析に適した「構造化データ」にするために「大規模言語モデル(LLM)を活用する。
岩成達哉CTOは「オフィスや物流、住宅など多様な不動産アセットに対応した複数のプロダクト群を連携させることで、バリューチェーン全体をカバーする。意思決定の質を飛躍的に高めたい」と語る。
estie
岩成達哉取締役CTO
nat、3Dアプリでミリ単位計測
累計700社が利用
nat(ナット:東京都中央区)が提供する「Scanat(スキャナット)」は、ミリメートル単位での採寸や住戸内の3Dモデルが簡単に作成できる空間AI(人工知能)測定アプリだ。iPhone(アイフォーン)やiPad(アイパッド)に搭載されたセンサーを活用。誰でも簡単に空間を3Dスキャンできる。
端末一つでスキャン・画像処理・図面化までを完結できるのが大きな特徴。
2022年のリリースから3年半で累計導入社数が700社を突破。リフォーム会社を含む不動産関連企業のほか、買い取り再販、賃貸管理、仲介など幅広い業態で活用が進んでいる。
賃貸管理の現場では、入居前後で室内をスキャンし、画像にタイムスタンプやメモを残すことで、室内の傷など現況記録として活用している。
複数デバイスで使えるScanat
AIはScanatの核となる技術基盤の一つだ。スキャン画像に映る空間の位置情報を自動で推定し、正確に3Dモデルへと貼り付ける処理にAIを活用できるように取り組む。スキャンで得られたデータを学習した過去の情報と照らし合わせることで、壁や床、ドア、天井などの構造をAIが自動で判別。平面図や断面図、見積もり用データなどを自動生成できるよう取り組む。社長室の若狭僚介ジェネラルマネージャーは「導入後もカスタマーサポートが運用を支援する体制を整えている。そのため、利用を浸透させている」と語る。
nat
若狭僚介社長室ジェネラルマネージャー
(2025年9月15日10・11面に掲載)




