収納スペースの開発・運営や、BPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)サービスを手がけるパルマ(東京都千代田区)は、商品・事業領域を拡大。コンテナボックス(以下、コンテナ)事業を成長ドライブとし、収益性向上を図る。
3年で営利5倍目指す
運営・開発の両輪
パルマの木村純一社長は事業構造改革を進める。同社が展開する事業は、レンタル収納スペースに関するBPOサービスと開発・販売事業の2本柱。
BPOサービスは賃料の債務保証付きで、トランクルームなどレンタル収納スペースの集客・利用手続き・施設管理などを代行する。同サービスはトランクルーム事業者の約6割が利用しているという。ストック収入として安定した収益基盤となっている。
もう一つの柱である開発・販売事業は、トランクルームの用地仕入れから開発、販売までを手がけてきた。施設管理の代行やマスターリース付きで販売し、開発から販売、売却後の運営受託のサイクルを加速させる。
2024年9月期の売上高は28億1000万円で、そのうち開発・販売事業が14億2600万円、BPOサービスが13億8400万円と約半々だ。全体の営業利益は1億2300万円で開発コストなどの増加の影響により、前期比4500万円減。

新事業を開始
建築費の高騰を背景にトランクルームの開発事業の利益が圧迫される中、新たな成長の柱に据えるのがコンテナの開発・販売事業だ。
用地を借りてコンテナを設置し、投資家へ売却する。木村社長は「コンテナは借りた土地に設置するだけなので、トランクルームの一棟ビルの建築と比べて低コスト。長期的に安定して高い利回りを得られるのが魅力で、日本の新しい投資商品の一つとして普及させたい」と語る。23年後半ごろから着手し、2年足らずで、事業単体で黒字化したという。
運営プランは、管理委託と利回り保証付きのリースバックの二つがある。管理委託は開発したコンテナを投資家が購入した後、パルマが運営を代行する方式。利回り保証付きリースバックは、投資家に物件を販売したうえで、パルマが借り上げて借地料込みで年8%の利回りを保証する。契約期間は最短5年、最長で10年だ。
コンテナの投資家の顧客層は、余剰資金の有効活用を目的とした法人が9割を占め、不動産会社も多い。長期運用を基本方針とする。立地はロードサイドが多く、100〜150坪程度の土地が最適だという。10〜13本のコンテナを設置し、20〜25室を確保する。賃料は20フィート(約6メートル)のコンテナ1本につき、都内であれば3万〜5万円、地方では2万〜2万5000円程度が相場だという。
北関東に開拓余地
コンテナのエリアは1都3県(東京、神奈川、埼玉、千葉)を中心に地方にも展開。コンテナは20〜25室と小規模なため、地方でも1年から1年半ほどで収益化が可能だ。
今後は競合の少ない北関東エリアに事業を広げていく方針。車の夏・冬用のタイヤやレジャー用品を収納する個人のニーズを取り込む。5月には名古屋証券取引所メイン市場に重複上場。東海エリアへの展開も視野に入れる。年間60物件の新規開発を目標に掲げ、短期間でスケールを拡大させる計画だ。
「売却前のコンテナの損益分岐点は、稼働率20〜30%が目安。早ければ数カ月で黒字化する。基本的には開発したら売却し、運営で売り上げを立てるのが当社のビジネスモデル。一部のコンテナは自社で数年間保有することも考えたい。ストック収入を積み上げたうえで、しっかりと稼働率を上げて販売する流れを構築していく」
BPOを横展開
もう一つの事業の柱であるBPOサービスの売上高・利益は堅調だ。24年9月期のセグメント利益は4億7600万円と前期と比べて5600万円増加。開発事業の赤字をカバーしている形だった。ただ、BPOサービスは事業としての安定性はあるものの、保証料などの単価の低さから今後の利益拡大の余地は限られているとみる。
そこで構想しているのがBPOサービスの他業界への展開だ。木村社長は「レンタル収納業界に限らず、より幅広い市場へ債務保証事業を広げていきたい」と話す。
コンテナ運営事業者の借地や、不法投棄のリスクがある資材置き場に関する債務保証に需要があるとみる。「レンタルオフィスの保証事業は、一時的な使用という点でトランクルームと似ている。既存のトランクルーム運営事業者の顧客には不動産会社が多く、レンタルオフィス運営も行っていることが多いため引き合いは強い」
コンテナボックスの開発を強化
インフラ分野への保証事業の展開も検討している。店舗や事務所の電気代の債務を保証し、レンタルオフィス保証とセットで提供することも構想する。ゆくゆくはガスや水道などへの進出も狙う。BPOサービスの受託は27年9月期までに20万件の達成を目指す。
コスト管理を重視
今後はコンテナの開発を進めることで、収益力の向上を見込む。開発案件の変動で売上高の振れ幅が大きくなることを想定し、目標については売上高ではなく収益性などを重視。営業利益は、27年9月期には24年9月期の約5倍となる6億円を目指す。
利益体質の改善に向けて、売り上げや利益が伸びてもコストが比例して増えない体制を構築していく。木村社長は「人件費削減ではなく最適化」と強調し、DX(デジタルトランスフォーメーション)化を積極的に進める方針だ。従業員の7割が在籍するBPO部門に改善の余地が大きいとみて、コールセンター業務などの外注やDX化に取り組む。コストマネジメントも強化しているところで、1円単位で見直すために、支出項目の棚卸し作業を始めたという。
「ストック型のBPOサービス、フロー型の開発・販売事業、両輪のバランスを見ながら成長を加速させていきたい」
(2025年10月6日20面に掲載)




