全国賃貸住宅新聞社は9月17・18日に「賃貸住宅フェア2025東京」を開催。東京ビッグサイトの会場では、2019年以来で最も多い230社の企業ブースが出展し、2日間で1万3838人が来場した。80講座のセミナーを設けたほか、主催者特別企画として、初開催の「不動産AIテックコンテスト」や3回目となる「空き家活用サミット」などを実施。「テナント土地活用展」も併催した。不動産会社や家主が会場を訪れ、企業ブースやセミナー会場で情報収集に勤しんだ。
2019年以来最多、230社出展
来場者の声
生存戦略に注目 地域活性化へ
石川県野々市市を中心に賃貸仲介・管理を行う絹川商事(石川県野々市市)の絹川善隆社長は、「最新の賃貸住宅のDX(デジタルトランスフォーメーション)のトレンドを学びたくて賃貸住宅フェアに来場した」と話す。
全国賃貸住宅新聞の河内鈴編集長による「管理戸数ランキング1000社超から分析賃貸管理ビジネスの生存戦略とは」のセミナーを聴講したという。絹川社長は「地方の不動産会社にとって生き残り戦略が重要だと改めて感じた。不動産は売って終わりではなく、その後長く住んでもらうことで地域が活性化する」と話し、管理事業の重要性を強調した。
絹川商事
石川県野々市市
絹川善隆社長
他社の情報収集 自社経営に生かす
山形市を商圏に賃貸仲介・管理を手がける太平堂不動産(山形市)の武田貴義社長は、2024年に引き続きフェアに来場した。主に不動産会社の代表が登壇するセミナーを聴講。「1日で複数の不動産会社社長の話がまとめて聞ける機会はなかなかないので非常に良い機会」と話す。
琉信ハウジング(沖縄県)城間泰社長によるセミナー「土日休み・健康経営・カスハラ対応 離職率2%を実現した社員満足向上戦略」を聴講した。
武田社長は「土日休みは革新的に感じたが、準備をしっかりと行えば業績に大きな影響がないことが学べた。自社に持ち帰り、今後の展開に生かしていくようなイメージが少しついた」とコメントした。
太平堂不動産
山形市
武田貴義社長

会議棟で行った主催者セミナー、展示会場で行った出展者のビジネスセミナーは共に、多くの聴講者を集めた
社員11人で参加 知識の社内共有
マルユウハウジー(沖縄県浦添市)の當眞嗣史社長は、24年に続き25年も社員11人を連れてフェアに来場した。各部署や担当者がそれぞれ興味のある展示やセミナーを巡り、得た情報を社内に持ち帰って共有する仕組みを設けているという。フェア後に学んだ内容をまとめてフィードバックする時間を設け、社員全体で知見を広げる取り組みをしている。
當眞社長は展示されていた商品では電子キーに注目し「導入することで物件の内見を入居希望者自身で行ってもらえるほか、暗証番号を遠隔で変更できる点に魅力を感じた」とコメント。今後、電子キーの導入を検討していきたいという。
マルユウハウジー
沖縄県浦添市
當眞嗣史社長
新商品を直接 確認リフォームに関心
5棟50戸の賃貸経営をする飯島雅美オーナー(茨城県つくば市)。物件の管理を委託している一誠商事(茨城県つくば市)から、賃貸住宅フェアの団体来場の招待を受け、初めて参加したという。
「普段は、大手メーカーの商品などをカタログなどで目にすることはあったが、中小企業の商品を見る機会はあまりない。展示会場で中小企業の新商品を直接見ることができてよかった」と飯島オーナーは話す。
飯島オーナーが経営する物件は築年数が古くなってきたため、リフォームにも力を入れていきたいという。「フェアではリフォームの参考になる製品やサービスがたくさんあった。今後は最新の設備を中心に取り入れていきたい」(飯島オーナー)。
飯島雅美オーナー
茨城県つくば市
空き家の活用方法 新事業を検討中
2800戸を管理しているジェイエイハウスサービス(群馬県前橋市)の上山和重社長は、空き家の活用方法について学ぶ目的で来場した。上山社長は「東京都と比較して群馬県は空き家がそれほど多くはないが、徐々に空き家の管理委託が増えてきているため、情報が欲しいと思った」と話す。
フェア会場ではセミナーの聴講を中心に、築古不動産の活用方法、耐震補強や補強の施工事例などについて話を聞くことができたという。
「空き家活用を含め、どのようにして地方で収益を伸ばしていくのか、今後の事業について考える必要がある」(上山社長)。
ジェイエイハウスサービス
群馬県前橋市
上山和重社長

東京ビッグサイト南展示棟では初の開催となったが、多くの来場者が足を運んだ
シェアサイクル目的 放置自転車が課題
120戸を所有、管理する永崎良二オーナー(神奈川県横浜市)は、特にシェアサイクルに興味を持ち来場した。所有する物件の駐輪場に放置自転車があることが課題だという。入居者の多くは所有する自転車ではなく、シェアサイクルを利用しているという。「所有物件の駐輪場にはパンクしたまま使われていない自転車があり、そこが実質的にデッドスペースになっている。シェアサイクルを導入することで、駐輪スペースを有効活用できるのではないか」と永崎オーナーは話す。
展示会場で見た遠隔で宅配ボックスの管理ができるシステムにも興味を持ったという。「宅配ボックスの利用方法にも課題があり、一部の入居者が宅配ボックスに宅配物を入れたままにしてしまう。宅配ボックスの空きをつくるための対策が必要で、今回ブースで話を聞いた」(永崎オーナー)。
永崎良二オーナー
神奈川県横浜市
シェアモビリティーの試乗コーナーも盛況だった
世代交代を意識 管理の負担軽減
横浜市で賃貸住宅を約40戸所有する金子光広オーナー(神奈川県横浜市)は、ほぼ毎年フェアに来場している。自主管理している物件もあり、次の代に家主業を引き継ぐ際、特に自主管理物件の管理業務の負担を軽減できるサービスに興味があるという。
今回は高齢入居者に向けたサービスや、入居者からの電話の一次対応ができるコールセンターなど、賃貸管理の負担が軽減できるサービスの出展ブースに足を運んだ。金子オーナーは「自分自身では普通に行っている管理業務でも、次の代では負担に感じるかもしれない。早めの対策を考えている。自主管理物件では、高齢者やひとり親世帯、ペット同伴、外国人労働者向けの法人契約などのさまざまな人の受け入れを行っている。物件のあるエリアに住む人々が『ここに住んで良かった』と思えるような地域づくりにこれからも貢献したい」と話す。
金子光広オーナー
神奈川県横浜市
設備をリサーチ 相談ブースも期待
集合住宅を2棟、戸建て賃貸を5棟所有する矢澤公司オーナー(神奈川県藤沢市)は、建築中の物件や所有物件のリフォームに活用することができる設備を探すためにフェアに来場した。特に安く取り付けられるオートロックを調査。同時開催の「リフォーム産業フェア2025」では水回りの設備を見て回った。
賃貸経営については法人化も検討中だ。個人で運営しているため、法人化や経営について相談できる出展ブースも探したという。矢澤オーナーは「地方の土地や物件の情報を提供してくれる業者と直接つながることができる機会をフェアで設けてほしい」と話す。
矢澤公司オーナー
神奈川県藤沢市
オートロック解錠システムの説明を聞く来場者
(2025年10月13日12・13・14面に掲載)




