廃業旅館をゲストハウスに

【連載】空き家で稼ぐ 第16回

管理・仲介業|2026年01月07日

 人口3000人の兵庫県豊岡市城崎地域で、事業承継できず廃業した旅館が、ゲストハウスとして再生された。食事の提供をしないゲストハウスは、「泊食分離」という宿泊スタイルのニーズに対応し、後継者にも引き継ぎやすい。まちづくり会社が事業スキームを構築し、金融機関が建物改修費用に投資した。

信金が改修資金を支援

食事提供がなければ

 城崎地域は、2020年に開湯1300年を迎えた城崎温泉を有する観光地だ。73軒(25年9月城崎温泉旅館協同組合加盟件数)の旅館があり、海外の旅行ガイドでは「ONSEN TOWN(オンセンタウン)」として知られる。だが、2000年代から観光客が激減。「後継者不足による廃業旅館の発生」や「素泊まりができる宿や飲食店などが不足し、泊食分離のニーズに未対応」などの課題があがっていた。

城崎温泉の川沿いの衜<

①観光客がそぞろ歩きを楽しむ、城崎温泉の川沿いの衜

 城崎温泉の「旅館若代」が廃業したのは2016年のことだ。後継者の姉妹は、経営を引き継ぐイメージを持てなかった。ただし、思い入れはあった。「祖母の代、ここは芸子が住む置屋だった。大正時代の趣ある建築で、私たちの思い出も詰まっている。建物を残す方法を考えていた」。このように話す姉の大石みずほさんが、まちづくり会社の湯のまち城崎(兵庫県豊岡市)へ相談に訪れた。

 湯のまち城崎の古田大泉取締役は「食事提供のないゲストハウスなら、運営できるかもしれない」と考えた。当時、城崎温泉にゲストハウスはなかったが、外国人宿泊者や若者も好む宿泊スタイルを定着させる必要性を感じていた。

 ゲストハウスを始めるには建物の改修が必要だった。また、集客や予約受付といった業務の対応も欠かせなくなる。湯のまち城崎が、大石さんら後継者から建物を借り上げ、改修工事のうえ運営することにした。大石さんと妹の吉高千尋さんは、接客をはじめとする現場対応を業務委託契約で請け負った。ゲストハウス再生の事業スキームは、後継者の負担が少ない形とした。

 内装等建物の改修には1500万円が必要だった。このうち「城崎まちづくりファンド」が600万円を投資し、地域の金融機関である但馬信用金庫(同)が500万円を融資した。

 城崎まちづくりファンドは、但馬信用金庫と政府系金融機関の一般財団法人民間都市開発推進機構(東京都江東区)が3000万円ずつ出資して、18年に組成された。建物の改修や建築に投資するまちづくりを目的としたマネジメント型まちづくりファンドだ。

 但馬信用金庫は、事業者支援と地域課題の解決に取り組んできた。21〜24年、事業支援部長を務めた川上晃弘氏(現・本店営業部長)は「地域課題に取り組むのは、まち全体を良くするため」と話す。

但馬信用金庫の川上部長(左)と城崎若代の大石さん

但馬信用金庫の川上部長(左)と城崎若代の大石さん

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