IREMアメリカ本部、「世界的に不動産管理は専門化」

IREMアメリカ本部

2026年03月20日

IREMアメリカ本部 ザック・ウォルキストCEO

 技術の発達による情報量や取引数の増大で、複雑化が進む不動産管理。世界6カ国に支部を持ち、不動産経営管理の資格を運営するIREM(アイレム)では、世界の不動産会社同士のコミュニティ構築を推進。Zack Wahlquist(ザック・ウォルキスト)CEOは、ベストプラクティス共有を促進することで業界を繁栄させることを目指す。

米、CPM取得者は給与2倍超

世界6カ国に支部 会員数約2万人

 「世界的に不動産管理は専門化し、技術への精通が求められています。いまこそ実務教育や不動産取引に関わる人たちの倫理、そしてNOI(純営業利益)を最大化するためのベストプラクティスの共有が重要です」。ZackCEOは語る。

 IREMは世界6カ国に96の支部を持つ不動産経営管理の専門家の団体だ。IREMが運営する不動産経営管理の専門資格・CPM(米国公認不動産経営管理士)の取得会員は年々増加している。2月末時点で会員数は世界で約2万人。支部がある国は、本部のあるアメリカのほか、ブラジル、南アフリカ、日本、韓国、UAE(アラブ首長国連邦)だ。

 日本法人であるIREM JAPAN(アイレムジャパン)は、アメリカ本部を除くと最大の組織だ。東京都の本部のほか、大阪府や北海道など5カ所に支部を持つ。不動産会社の社長や役員、オーナーを中心に946人の会員を抱える。財務的な安定や業務遂行能力を持つ不動産会社を認める資格・AMO(認定不動産管理会社)の取得不動産会社は12社に上る。

 アメリカでは、CPMやAMOの価値が広く認められている。CPM取得者の給与は、取得していない人に比べて120%高い。AMOを取得した不動産会社は、取得していない不動産会社に比べて高い手数料を得ているという。

 ZackCEOは「アメリカには、価値がある人材にはより多くの給与を支払う文化があります。CPMがオーナーに対して大きな付加価値を提供できると、多くのアメリカ人が認めているということです」と話す。

aicon_key.jpg CPM(米国公認不動産経営管理士)

 IREMが運用する賃貸経営管理の専門資格。キャッシュフローや投資の分析、建物メンテナンス、不動産管理に必要な倫理などに関する9講座を受講する。講座は講師と受講生たちの対話が中心。

相続増の日本市場 専門性が重要に

 日本市場についてZackCEOは、人口高齢化に伴う相続案件の増加により、不動産管理会社の専門性がますます重要になっていると分析する。「不動産取引が複雑になると、不動産オーナーは信頼できる不動産会社を探して、相談しなければなりません。そうしたニーズはどんどん高まっていると思います」

 オーナーの信頼を得るためには、日々のキャッシュフローだけでなく、中長期的なNOI最大化の提案を行うことが重要だとする。

 NOIは賃料収入から管理費・修繕費・固定資産税といった運営費を差し引いた、物件の実質的な収益力といえる。オーナーにNOIの重要性を伝えていくためには、管理業務の可視化やコミュニケーション充実の必要がある。

 「専門知識を持ってオーナーへの説明を行う透明性の高い企業になるために役立つのが、われわれの認定資格CPMだと思っています」

「知識の共有で業界底上げ」

二つの国際潮流 AI活用・環境対応

 ZackCEOは、不動産管理における国際的なトレンドを二つ挙げる。一つ目は、情報技術の活用だ。すでにアプリなどのデジタルツールで業務を効率化する不動産会社は多い。さらに世界中でAI(人工知能)などを使った不動産管理ツールが次々と登場している。

 例えばアメリカのYardi(ヤルディ)は、不動産管理に特化した投資管理ソフトを提供。AppFolio(アップフォリオ)はAIを使ったリーシングや管理の業務効率化を行う。

 IREM本部は「業界パートナーシッププログラム」として、こうしたツールの会員不動産会社への紹介も積極的に行う。業界パートナーとなったサービサーに対して、会員へのアクセス権や利用料金の割引、IREM主催イベントでのサービスの紹介といった特典を付与している。

 トレンドの二つ目は、サステナビリティーだ。世界で排出されるCO₂(二酸化炭素)の4割は、建築過程やオフィスの運用・住宅の居住時に発生する建物分野が占めている。建物管理を行う不動産管理業界は、CO2削減のために大きな役割を担うといえる。

 アメリカでは、IREMが「グリーン対応ビル」の認証を行っている。同認証は、主に商業ビルを対象に、ハード面の環境性能や電気・水の使用量などの運用効率の基準をクリアした建物を認めるもの。運用面での基準が定められていることが大きな特徴で、プロパティマネジメントとしてCO2排出削減に関わっていくことが求められる仕組みだ。2月末時点で3148棟の認証実績があるという。「日本では賃貸管理会社が管理する建物の規模が違うため、すぐに同認証を運用することはできませんが、日本でも建物分野の環境負荷削減をリードするポジションとして賃貸管理会社ができることを探っていきたいです」

組織開発の実績 つなぐ役割重視

 IREMは現在、新たな5カ年戦略の初年度にある。柱は「会員基盤拡大」「専門能力開発」「グローバルコミュニティ構築」の3点だ。

 ZackCEOは、25年1月にIREMのCEOに就任。前職は、シカゴ不動産庁のCOOだ。キャリアのすべてで、さまざまな協会や非営利団体の管理や運営、組織開発に関わってきた。その経験から構築した哲学は「一人一人が仕事をするよりも、協力し合ったほうがより良い成果が出る」ということだ。この考え方が、5カ年戦略の「グローバルコミュニティー構築」にも大きな影響を与えている。

 具体的には、各国のCPM同士の交流の強化を図っていく。例えばアメリカでは年次カンファレンス「Property Con(プロパティーコン)」を開催しているが、同カンファレンスの国際展開を視野に入れている。これまで各国で行っていたベストプラクティスの共有を、国際的に行っていく構えだ。

 「日本のCPMがドバイやカナダのCPMから学べるような環境をつくっていきたい。知識の共有は、業界全体の底上げにつながります。私たちのビジョンは、適切に管理された不動産によって世界中のコミュニティーが繁栄することなのです」

(中村)
(2026年3月16日20面に掲載)

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