【賃貸市場エリア別分析】~高知市編~

高知ハウス,タクシン不動産,大京穴吹不動産,高知信用金庫,ファースト・コラボレーション,高知市

管理・仲介業|2022年10月11日

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 本企画では賃貸市場に関わるデータ分析や地場不動産会社への取材を通して、全国の主要都市の賃貸マーケットを分析する。新築の供給が少なくマーケットの安定する高知市を取り上げる。

供給不足で根強い新築ニーズ 2LDK、2年で家賃4万円高

 高知市は、高知県の人口67万6278人(9月1日時点)のうち、32万513人(同)と約半数の人口を有する県最大の都市だ。山が多く、居住可能地域が限られるため、新規賃貸物件の供給が伸びず、家賃帯が四国でもトップクラスだという。南海トラフ地震の可能性から、津波の危険性が少ない北部エリアに絞って物件を探す顧客の需要もある。

高知市の人口データ 高知市の賃貸住宅着工戸数 高知市の住宅総戸数 高知市の人口推移グラフ 高知市の家賃相場 高知市の賃貸仲介の商習慣

商業施設大規模化 月間契約1.5倍も

 「高知市は四国の中でも家賃が一番高いエリア」と話すのは、高知ハウス(高知市)リーシング営業部の片岡由依サブマネージャーだ。同社は、管理戸数7903戸(9月27日時点)のうち、そのほとんどを高知市で管理する

 同市は、高知県の人口の約半数が集中している上、山が多く居住可能エリアが限られる。そのため、供給の少ない新築はニーズが高く、竣工前に満室になっている。

 家賃相場は、この5年間でほとんど変わっていないものの、一部ハウスメーカーによる新築は2020年ごろから設備を充実させることで家賃を上げている。新築に関しては20年以前は2LDKで9万円ほどだった相場が、13万円程度と4万円アップした。高知市では今までになかった家賃価格になっているという。

 新築が多いのは高知市西部にある朝倉エリアと東部の弥右衛門エリアだ。朝倉エリアは昔からの住宅地ということもあり、古いアパートの建て替えが多い。一方、弥右衛門エリアは商業地のため、閉店した店舗跡地に土地を購入した投資家系オーナーが賃貸住宅を建てることが多いという。

 同社の賃貸仲介のうち、約25%は法人だが、新型コロナウイルス下1年目の20年では法人が全体的に異動をしない方針となり、打撃を受けた。法人契約は感覚的に2〜3割減ったが、現在ではほぼ例年通りに戻ったという。

 20年には市内秦南町にあるイオンモールの増築があり、四国で一番規模が大きい商業施設になった。その際に、同施設勤務者の転勤が多く発生し、賃貸特需が生まれた。異動が相次いだ9月ではイオングループの成約件数が例年の1.5倍となった。年間を通しての成約件数も例年の1.2〜1.3倍にまで増加した。現在では依頼件数は落ち着いている。

 「南海トラフ地震による津波や土砂災害が警戒され、JR土讃線高知駅から北に2〜3kmのエリアが危険性が低いことから人気」(片岡サブマネージャー)

アニメ産業を誘致 賃貸需要増に期待

 管理戸数約2800戸のうち9割以上を高知市で管理するタクシン不動産(同)営業本部の梅下和美氏は「市内の法人需要は、21年から引き続き、単身赴任が多い傾向にある」と話す。21年にはコロナ下で家族帯同の異動が減り、その代わり単身赴任が増えた。その傾向は22年に入ってからも続いており、法人契約のうち、単身赴任の案件が8割を占めている。

 21年には引っ越し控えから落ち込んでいた全体の成約数も22年には回復。21年と比べ20%伸び、例年より多かったという。引っ越し控えが解消されたことによる反動が一因とみる。

 管理ビジネスに関する変化では、21年に大京穴吹不動産(東京都渋谷区)が高知営業所を閉鎖し、四国の物件管理を香川県高松市に集約したことが挙げられる。そのため、遠隔での管理に不安を感じた地元オーナーからの管理依頼が増えた。同社でも3棟を新規で受託した。

 市内では、高知信用金庫(高知市)が、サブカルチャー関連の企業誘致を積極的に行っている。

 同信金は、アニメ関係の企業にテナントや自社ビルを貸していることに加え、9月には市有地を落札。アニメ産業の拠点としてビルを建築する予定だ。「街の中心部に立つことになるため、観光が盛んになることも予想される。関連事業や観光業従業員の賃貸需要を期待している」と梅下氏はコメントした。

物件余りで家賃競争激化

 約5000戸を管理し、そのうち約8割を高知市で管理するファースト・コラボレーション(同)では、賃貸仲介の約15%を学生が占める。高知市には短期大学も含め、大学が7校あるが、学生の需要で大きいのは高知大学、高知工科大学、高知県立大学の3校だ。

 学生需要が高いのは家賃3万5000〜4万円程度の1K。3点ユニットの物件は避けられる傾向にある。中でも高知大学のキャンパスは昔からあるため、周辺の学生向け物件も多く、物件が余っている状態だ。そのため、価格競争が激しい、激戦区となっている。

 賃貸事業部の秋吉智文部長は「高知市の大学はコロナ下でオンライン授業になった。いつ対面授業が再開するか不明なため、県外からの学生は部屋を借りることが多く、入居率は大幅に落ち込むことはなかった。現在ではほとんどが対面授業に戻っていると思う」と話す。

高知市、賃貸住宅への用途変更可能に

 高知市では市街化調整区域における人口減少が顕著であることから、同区域内の住宅の用途を「賃貸住宅」に変更可能な基準を策定した。19年5月より運用している。過疎地の農業の担い手不足の解消が狙いだ。しかし、賃貸住宅に用途変更された物件はいまだ0件だ。

高知市の市街化調整区域の地図

高知市の市街化調整区域(高知市ホームページから引用)

 同市では13年4月に3万232人だった市街化調整区域の人口が、翌14年4月には2万6714人と1年で約4000人減少。22年4月には2万7257人と若干増えたものの、以前ほどの人口ではない。

 こういった状況を踏まえ、市街化調整区域の住宅で一定条件を満たした物件に対しては、賃貸住宅への用途変更を認めた。

 ただし、あくまで農業を政策的に振興することが前提としてあるため、申請の条件が厳しい。所有者が空き家を持て余しており、すでに就農予定である入居者を見つけ、そのために賃貸住宅に用途変更したい場合などに限られる。

 「ニーズがあり制定したが、まだ門戸が広く空いているわけではない」と都市計画課開発指導室の杉村誠開発審査担当係長はコメントした。

(2022年10月10日6面に掲載)

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