【賃貸市場エリア別分析】~岩手県盛岡市編~

アート不動産,熊谷興産,アパートセンター

企業|2022年11月29日

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 全国の主要都市における賃貸市場の動向を取材するシリーズ企画。今回は、岩手県盛岡市だ。再開発を機に賃貸需要が高まる市内南部。一方、医大が郊外移転した中心部では、家賃相場が下落傾向にある。

総合病院移転で中心部に影響 医療関係者向け家賃下落

 盛岡市は、北東北の玄関口と呼ばれ人口は約28万人。青森県、秋田県、岩手県の中で、最初に新幹線が開通したことから、北東北を代表する都市として法人が拠点を置いてきた歴史がある。地域の色合いがはっきりと分かれている点も特徴だ。農村エリアの北部。再開発が進み若年層に人気の高い南部。また、大学や専門学校が集まる中心部には、学生需要も集中する。

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高家賃物件が苦戦 新築の入居1割も

 地場大手不動産会社のアート不動産(岩手県盛岡市)は、市内中心部での家賃相場が局地的に下落傾向にあるとした。場所は、JR盛岡駅からバスで10分程度の県庁などが位置するエリアだ。

 19年9月、県庁エリアにあった岩手医科大学付属病院が、約10km離れた市内南部に隣接する矢巾町に移転した。移転先の病院の規模は、1000床。これをカバーする医療関係者が市の中心部から流出するとみられる。

 そのため、医療関係者向けに、高価格帯でも需要の高かった県庁エリアの賃貸住宅の成約が鈍っている。

 同社担当者は「入居者のうち、もともと医大病院関係者が3〜4割を占めていた物件で、家賃を5000〜1万円下げている例もある」と話す。

 医療関係者向け物件は、新築の1LDKで8万円台。市内の同じ間取りの家賃相場より1万円ほど高い。

 同エリア内のハウスメーカーによる新築物件への入居状況も、竣工から1、2カ月で1〜2割程度と厳しい状況だ。担当者は「3年前ならば、建設中に満室になっているような物件だが、問い合わせ自体少ない状態」と危惧する。

人口流入進む南部 医大関係者で活況

 一方、再開発が進み若年層からの人気が高い市内南部。隣接する矢巾町への医大病院移転によるさらなる人口流入で、賃貸需要の厚みが増し、特に繁忙期には貸す部屋がない。

 市内南部を商圏とし、約1300戸を管理する熊谷興産(同)賃貸営業部の島田真一本店長は「3月の繁忙期に紹介できる空室がなく、一部屋に対する入居申し込みが5番手までつくこともあった」と話す。

 同エリアの開発は、約10年以上前から現在まで継続して行われてきた。商業施設や住宅開発が進み、生活利便性が向上したため、同エリア内に立つ向中野小学校は、数年前から市内で生徒数1位を誇り、第3校舎まで増設された。

 ここに、医大病院関係者の住み替えが加わり、単身者向けの1LDKへの反響も高まっている。家賃は6万円半ば〜7万円前半の需要が高い。

 賃貸需要の増加に伴い、ハウスメーカーが供給する物件のバリエーションも豊富に変化。医大病院関係者以外にも、間取りや予算感から法人需要も高まっている。

法人成約21年比130% 在宅勤務で業種変化

 市内中心部、南部共に、新型コロナウイルス下で低迷していた法人需要が回復傾向にある。

 アート不動産では、22年上半期における法人の問い合わせと賃貸仲介の成約件数は、21年同期比で共に130%となった。担当者は「中心部は、既存取引先の法人からの問い合わせが再開した印象」と話す。

 また、コロナ下で法人需要に新たな変化も生まれている。熊谷興産の島田本店長は「テレワークの普及が影響してか、コロナ前は南部で部屋探しを行っていなかった製薬会社や外資系企業など新たな業種による契約が増えてきている」と話す。

 生活利便性が高い再開発エリアの南部だが、駅までは距離があり、交通手段は車が中心だ。そのため、コロナ前は、JR盛岡駅前にオフィスを構える企業の部屋探しは、電車を利用できる市内中心部で行われていた。

 コロナ下で浸透したテレワークの影響で、オフィスへのアクセスに重きを置かず、住みたい街で部屋探しをする法人の案件が南部に流入しているようだ。「転勤層の顧客の声からも、再開発による街の新しさや、新築供給の多いエリアとして注目が集まっている印象」(島田本部長)

学生移動、未回復 1Kの仲介に苦戦

 一方、学生の動きは回復の兆しが見られない。

 年間仲介件数1042件のアパートセンター(同)は、コロナ下のオンライン授業により、20年4月以降から学生による引っ越し需要の低迷が継続していると話す。

 市内中心部は、大学や専門学校が多く、学生需要が高いエリアだ。中でも岩手大学では、10月6日以降より、対面授業を再開しているが、1〜3月の繁忙期中はオンライン授業が行われていた。

 谷上昭夫社長は「家賃が抑えられることから、学生需要の高かった1Kが、リーシングに苦戦している印象。オンライン授業の導入で、引っ越しを選択する学生入居者の絶対数が減少したことが原因の一つだろう」と分析する。

 これに対し、1LDK以下のハウスメーカー物件は、フリーレントや礼金カットなどで対策を取り始めている。

盛岡市、SNS活用で関係人口創出

 盛岡市は、定住者や移住者を増加させるべく、その前段階となる地域と継続的に関わりを持つ関係人口の創出に取り組む。

 その中で、SNSを活用した取り組みが反響を集めている。

 市が行う関係人口創出施策の例には、主に首都圏を拠点とする、盛岡市に縁のあるコミュニティー活動への支援などがある。

 中でもユニークなのがSNSの活用だ。市は、18年度から公式インスタグラム「盛岡という星で」を運用。11月17日までの約3年間でフォロワー数は1万4000人を突破した。投稿内容は、街の風景や市内のイベントの告知がメインとなる。

市の公式インスタグラム

市の公式インスタグラム「盛岡という星で」。毎日最低1回の投稿を行う

 市の人口動態の課題は、若者が進学や就職を機に首都圏や宮城県に転出することだという。市長公室企画調整課都市戦略室の勝又洸樹主任は「SNSへ1日1回投稿することで、盛岡を離れた人たちの頭の中にある〝盛岡〞を更新したい」と話す。

 市は、関係人口が移住、定住人口へ転じた場合、そのエリアの賃貸需要増加にもつながるとみている。

(2022年12月5日6面に掲載)

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