神奈川県横浜市に、改正住宅セーフティネット法で新たに定められた「居住サポート住宅」である「まごころアパート松葉台」が誕生した。企画・運営を行うMIKAWAYA(ミカワヤ)21(東京都荒川区)は、安否確認・見守り・福祉サービスへのつなぎといった制度上の要件を満たしながら補助金を最大限活用し、表面利回りは20%を想定できるモデルをつくった。
改修費補助で利回り20%想定
中庭・デッキで交流 みとりも居室内で
まごころアパート松葉台は、人との交流を重視した住宅確保要配慮者(以下、要配慮者)向け賃貸住宅だ。同物件は、横浜市営バス八反橋停留所から徒歩5分の場所に立つ。新築である西棟と築34年の物件を改修した東棟の2棟から成り、いずれも木造2階建て。西棟は単身者向けの1DKが3戸と2人での入居が可能な1LDKが1戸の計4戸、東棟は単身者向けの1DKと2Kが計6戸となっている。
入居者同士や地域の人が顔を合わせることができるよう設計にこだわった。西棟・東棟はそれぞれ道路に面しており、2棟の間の中庭は地域の人が通り抜けられる「ミチニワ」とした。居室は道路側とミチニワ側それぞれに窓を設け、カーテンを開ければミチニワにいる人と目が合う造りだ。西棟1階の居室では、窓台を広く取って小さなテーブルにして、外の人と話しながらお茶を飲んだり読書をしたりできる空間としている。
既存物件を改修した東棟
MIKAWAYA21の青木慶哉社長は「ミチニワを歩く人と入居者が窓越しにあいさつを交わせるような集合住宅を目指した。居室内は浴室やトイレを広く取って介護に対応できるようにしたほか、寝室は医療機器が置ける広さを確保し、この住宅でみとりまで行うことを視野に入れている」と話す。
入居時にはまず2年間の定期借家契約を結び、希望者は更新時に終身建物賃貸借契約に切り替えていく予定だ。入居者同士や地域住民との交流を重視する物件であるため、最初の2年間で入居者自身に相性を確認してもらう意図がある。
助成金・融資を活用 国から1戸50万円
同物件は、関東で最初に改正住宅セーフティネット法で定める居住サポート住宅に認定された。改修には、国や自治体の補助金を活用しているのがポイントだ。既築物件を改修して居住サポート住宅とする場合、国から1戸あたり50万円以上の補助金を受けることができる。
さらに物件の所在地によっては、自治体からも補助金が出る。まごころアパート松葉台東棟では、国のモデル事業として補助を受けたという。居住サポート住宅の改修には、独立行政法人住宅金融支援機構(東京都文京区)の融資「賃貸住宅リフォーム融資(住宅セーフティネット)」も受けられる。工事費の80%までの金額を、最長20年固定金利で借りることが可能だ。
MIKAWAYA21の平川健司社外取締役は「補助金と住宅金融支援機構からの融資を組み合わせることにより、まごころアパート松葉台と同様の居住サポート住宅を展開する場合の表面利回りは20%を想定できる」という。
補助や融資は居住サポート住宅としての認定が前提になるが、国は登録要件を柔軟に設定している。居住サポート住宅には、安否確認や見守りが必要な要援助者のみが入居対象となる「専用住宅」と、そうしたサポートは必要ない子育て世帯、外国人、健康な高齢者といった要配慮者が入居対象となる「非専用住宅」がある。居住サポート住宅としての認定を受けるためには1戸以上の専用住宅の設定が必須だが、物件のすべての住戸が専用住宅である必要はない。非専用住宅の改修費用についても、補助金や融資を活用することができる。
3種の支援提供 外部事業者と提携
居住サポート住宅として認定されるためには、面積・設備要件のほかに安否確認、見守り、福祉サービスへのつなぎの3種の居住サポートの提供が必要だ。
同物件では安否確認のため、各居室にWi‐Fiセンシング型の見守り機器を設置している。室内3カ所のコンセントに設置した機器が1日以上入居者の動きを検知できない場合に、MIKAWAYA21に通知が届く。万が一の際は、有償ボランティアが居室に訪問する仕組みだ。
同社では高齢者の日常の困り事を有償ボランティアが解決する「まごころサポート」というサービスをフランチャイズチェーン(FC)方式で展開している。「部屋や水回りの片付けをしてほしい」「病院や買い物に付き添ってほしい」といった要望をMIKAWAYA21や地域の加盟店で受け付ける。
地域の高齢者の支援をしたいという考えに共鳴し「コンシェルジュ」として登録する有償ボランティアが、高齢者の居宅に訪問する。高齢者は20分1000円からサービスを利用することができる。
見守りに関しては、月に1回、同社の社員もしくは有償ボランティアが居室を訪問する形をとる。
福祉サービスへのつなぎは、居住支援法人のあんど(千葉県船橋市)が担当する。介護が必要になった際の地域包括支援センターへのつなぎなどはもちろん、入居者の意思能力に不安が見られるようになった際の金銭管理サービスの紹介や相続関連の相談受け付けなども行う。
家賃は周辺相場に合わせ、管理費・共益費込みで8万〜14万円とした。居住サポート住宅の要件である安否確認・見守り・福祉サービスへのつなぎが必要な場合は、家賃とは別に支援費として月に1万9800円(税込み)を受け取る。支援費の一部は、福祉サービスへのつなぎを担当するあんどに支払う。
住み替え需要対応 持ち家所有者狙う
青木社長が居住サポート住宅の企画・運営に乗り出したのは、まごころサポート事業で高齢者の住み替えニーズを感じたためだ。
「『高齢になり持ち家の管理が負担になってきたが、住み慣れた町で、施設には入らず自由に暮らしたい』という高齢者に大勢会ってきた。まごころサポートの日常生活支援の延長で、住まいまで提供したいという思いで居住サポート住宅を造った」(青木社長)
持ち家を所有する高齢者が入居者ターゲットであるため、まごころアパート松葉台の家賃は特別低額にはせず、相場並みとしている。本格的な入居募集は2025年12月末から開始。12月15日までに複数の問い合わせが入っているという。今後は高齢者専門の部屋探しポータルサイト「R65不動産」への掲載や、病院・介護施設への訪問により、入居促進を図っていく方針だ。
MIKAWAYA21
東京都荒川区
青木慶哉社長
(中村)
(2026年1月5日33面に掲載)




