新型コロナウイルス下で浸透したテレワークにより、"働ける住まい"として、共用部にワークスペースを置く賃貸に注目が集まっている。内閣府によると、全国のテレワーク実施率は30.6%(6月時点)。また、東京都の発表では都内に拠点を置く企業に関しては58.6%(8月時点)という結果になった。ワークスペースが付加価値設備となり、物件の稼働率は安定しているようだ。
都内のテレワーク率58%に対応
SOHO型高級賃貸
新築でワークスペース付きを手がけるのは、三菱地所レジデンス(東京都千代田区)だ。
高級賃貸路線で、職住一体型マンション「The Parkhabio SOHO(ザ・パークハビオ ソーホー)」シリーズを展開する。10月14日に2棟目をオープン。全81戸のうち、11月23日時点で51戸が入居または申し込みが完了した。
同シリーズのコンセプトは、住宅とオフィスの中間の領域にあたる住空間であること。賃貸住宅計画部福井一哉主任は「交流を意識的に促進すると、それを苦手とする人がターゲットから外れてしまう。よりマーケットを拡大させるためにも、働きやすさを含むハード面の居心地の良さに特徴を持たせた」と話す。
同物件のワークスペースは約120㎡。働き方に合わせ、個室タイプやオープンデスクなど5種類のゾーンを確保した。
実際の入居者は、IT系やコンサルティング、広告会社の勤務者が多い。契約が決まっている51戸のうち、SOHO利用の申請は7戸となる。
同シリーズは、新たに3物件が着工済みだ。テレワークの実施率や、高級賃貸の需要を見込める都心エリアを中心に展開を進めている。
交流拠点として需要
仕事場としての機能のほかに、入居者コミュニティーを求めた需要を獲得している事例もある。
丸井グループで、ワークスペース付き賃貸住宅「co‐coono(コクーノ)」の企画を手がけるokos(オコス:東京都中野区)は、6月、シリーズ第1弾物件を東京都杉並区にオープン。元社員寮をリノベーションした物件だ。
ターゲットは、Z世代。起業やフリーランスという働き方の選択をする20~30代を支援する目的で、ワークスペース付き物件の企画に至った。
同物件は、1階にワークスペースを確保した5階建て。2~4階に14戸の賃貸住宅、5階が全5室からなるシェアハウスとなる。
オープンから約半年の11月23日時点での入居率は9割。30代以下の入居者が9割を占める。一部、ほぼ毎日テレワークを行う入居者もいるが、出社をメインとした会社員も一定数入居している。
okosのTSUKURUBA事業部兼子卓也課長は「職場と家の往復になりがちな社会人が、ワークスペースでのコミュニティーを求める傾向にある。加えて、周辺エリアにカフェやコワーキング施設が少ない立地条件も需要獲得につながっている」と話す。
シェアハウスに仕事場
ワークスペース付きは、一部のシェアハウスにも浸透してきている。
共立メンテナンス(東京都千代田区)は、7棟展開するシェアハウスブランド「URBAN TERRACE(アーバンテラス)」の中で、3月以降にオープンした3棟についてワークスペースを確保している。
同ブランドで共通する入居者ターゲットは20代後半~30代の社会人だ。特にワークスペース付きの3物件に関しては、入居者の3割がテレワーカーだという。
シェアハウス事業部山下宏行部長は「当ブランドのワークスペース付きではない物件と比較すると、今回例に挙げた3物件へのテレワーカーの入居率は肌感覚で1.5倍」と話す。
ワークスペース付き賃貸は、働き方の柔軟性に伴い需要が高まっていきそうだ。 (齋藤)
(2022年12月12日1面に掲載)