【2023年賃貸市場大予想 新春記者座談会】デジタル・アナログ両輪の深化 業務効率化の先、管理の充実へ

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ニュース|2023年01月16日

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それぞれの取材内容を持ち寄った

 ウクライナ情勢や円安を受けての物価上昇、日銀による金融緩和の縮小など、先行きが不透明な中、幕を開けた2023年。新型コロナウイルス感染拡大から丸3年が経過し、テレワークや非対面化で働き方や暮らし方が多様化。電子契約の全面解禁を背景にこれから不動産業界のDX(デジタルトランスフォーメーション)も一気に進んでいきそうだ。編集部記者が23年の賃貸住宅市場を大予測する。

滞納時の明け渡し条項違法 家賃債務保証の運用に影響

 デスク 賃貸業界の関係者の注目を集めているのは、22年12月に最高裁の判決が出た、家賃債務保証契約における滞納時の明け渡し条項の違法判断だろう。自社で家賃債務保証会社(以下、保証会社)を設立している管理会社も多い。今後の家賃債務保証ビジネスの運用にもかかわってくるはずだ。

 記者A この裁判では、消費者団体のNPO法人消費者支援機構関西(大阪市)が保証会社のフォーシーズ(東京都港区)に対し、同社の明け渡しについての条項が消費者契約法に抵触するとして差し止めを求めた。同法10条では、「民法第1条第2項に規定する基本原則に反して消費者の利益を一方的に害するものは、無効とする」と定めている。最高裁ではフォーシーズの明け渡しについての条項が、賃貸借契約の解除が終了していない場合に適用される点を問題視。法的手続きによることなく、実質的に明け渡しが実行できる状態は不当と判断した。

 記者B ある保証会社からは、今回の判決の影響で、家賃債務保証の審査が厳しくなる可能性を指摘する声が上がっている。消費者保護の訴訟が結果的に審査の厳格化を招き「入居できない人が増えるのでは」と判決を疑問視しているようだ。

 記者C 私が取材した管理会社では、グループで行う家賃債務保証事業の契約書に違法とされたものと同じような条項を記載している。そのため、現在、社内で契約書をどう修正していくかを検討していると話していた。

 デスク 少子高齢化やオーナーにとっての利便性などから、保証人ではなく機関保証の利用が今後も増えていくことが予想される。今回の判決を踏まえ、関係者がどのように対応していくのか、引き続き追いかけていこう。

電子契約、ますます浸透 不動産会社がDX推進

 デスク 22年に全面解禁された電子契約は、DXを進める不動産会社にとって大きな追い風になった。契約に関する書面を電子交付できるようになり、エンドユーザー、不動産会社双方にとっての利便性が大幅に向上したといえる。賃貸仲介においては、23年の繁忙期から、本格的に電子契約を現場で利用する動きが出てくるだろう。そのフィードバックを業務全体にも生かすことで、生産性向上の道筋が見えてくる。23年はDXがさらに進んでいくといえそうだ。

 記者D 賃貸仲介の現場からは、電子契約の積極活用の声が聞こえてくる。年間の賃貸仲介件数1500件のユーミーホールディングス(神奈川県藤沢市)では、月の契約のうち、50〜80%で電子契約を活用している。メリットは業務の効率化。紙の場合に必要となる顧客への契約書の送付、返送後の記入漏れやミスのチェックといった一連の手間が省けるので、営業スタッフ1人あたり月20時間の残業時間の削減になったそうだ。

 記者E 売買仲介においても電子契約のメリットを実感している会社が出てきている。投資用マンションを販売するFJ(エフジェー)ネクスト(東京都新宿区)は、既に9割以上の売買契約で電子契約を活用しているという。同社では印紙代のコスト削減を目的に電子契約を導入。年間2000万円以上の印紙代の節約になっているといい、コストメリットはかなり大きい。特に、投資家向けの不動産販売会社では電子契約の積極活用が進んでいるようだ。22年に引き続き、システム提供会社の競争も激化しそうだ。

スマートロック、複数社で導入 高齢者見守りにIoT

 デスク 管理業務のDX化の一環として、22年には大手管理会社のスマートロック導入が目立った(表1参照)。22年5月にはパナソニック ホームズ不動産(大阪府豊中市)導入を開始。初年度で7000台の設置を目指すとした。同月にミサワホーム不動産(東京都新宿区)も首都圏の既存の管理物件へ設置を開始した。22年6月にはレオパレス21(東京都中野区)が管理物件44万戸へ順次施工を発表し、野村不動産(東京都新宿区)は新築の自社開発物件9棟650戸への採用を決めるなど、各社積極的に導入を進めている。23年は準大手や地場大手でのスマートロックの導入推進も予想される。

表1 大手のスマートロック導入の動き

 記者A レオパレス21は、導入費用を自社負担することで、普及を実現していくという。管理会社にとって、運用上のリスクがあり、煩雑になりがちな実物の鍵管理業務がなくなることで業務効率化になる。加えて、空室を犯罪に悪用されるケースも減りそうだ。電池が切れたり誤作動したりした際の対応や責任の所在、物件によって設置の可否が分かれるなど実際に使用する上での課題はまだある。一方で、部屋探しの希望者が不動産会社スタッフの同行無しで行うセルフ内覧が増えることで、仲介業務の非対面化も加速しそうだ。

 記者B 賃貸住宅のIoT化も進んでいくいえそうだ。22年9月には、And Do(アンドドゥ)ホールディングス(東京都千代田区)が、IoTサービス「スマートDO(ドゥ)ホーム」を、グループで管理する賃貸住宅へ提供開始した。初期投資としては単身者向けであれば10万円ほどでIoT化できるという(図1参照)。

図1 スマートホームデバイス設置例

 記者A LIXIL(リクシル:東京都品川区)が22年10月に埼玉県越谷市にオープンした、IoT体験住宅「みらいえらぼ」には、ハウスメーカーやビルダーが分譲価格を上げる方策を探すために体験に訪れていると聞いた。IoTホームデバイス自体も低価格化が進んでいる。LIXILが発売するホームデバイスは発売当初の同シリーズから比較すると購入費用が半額になり、月額費用も不要になったという。この流れは賃貸住宅にもくるはず。IoT化による賃貸住宅の賃料アップの事例がこれから出てくると、導入の動きも加速するだろう。

 記者B 一方で「IoT化しても、利用したことのない人にとってはメリットを実感しづらく、家賃に転嫁できない」というオーナーや管理会社の声も聞こえてくる。確かに、新しい技術は浸透するまでに時間がかかる。だが、特に高齢者にとっては必要になってくるサービスのはずだ。

 記者C IoTを活用した見守りは、孤独死の抑止にもつながるため、社会課題の解決にもつながるだろう。単身高齢者の部屋で反応が一定期間なかった場合に、離れて暮らす家族や管理会社に通知がいく。単身の高齢者が増加する中(表2参照)、孤独死を出さない工夫には頭を悩ませるところ。その観点からも、23年はIoTのますますの活用が図られるといえそうだ。

表2 65歳以上人口に占める単身暮らしの割合(男女別)

 記者E 高齢入居者の見守りは業界の関心事の一つだ。高齢者をターゲットに部屋探しをサポートするR(アール)65(東京都杉並区)からは、見守りサービスの契約数が毎年2倍ずつ伸長していると聞いた。東京ガス(東京都港区)が提供する高齢者見守りサービスの22年の月平均契約数は21年比で1.3倍だという(22年7月末時点)。独立行政法人都市再生機構(神奈川県横浜市)は、運営する賃貸住宅の入居者への見守りサービス提供を強化した。提携するサービス提供会社を3社に増やし、入居者のライフスタイルなどによって、内容を選べるようになっている。

 記者D デジタルでの見守り、既存インフラを活用したアナログの見守り、サービスの選択肢が広がることで、入居者の理解を得やすくなるのもメリットかもしれない。

シェアリング市場活況 コワーキング住宅流行の兆し

 デスク コロナ禍で一般化した、テレワークがしやすいコワーキング付き賃貸の増加にも注目だ。

 記者C 22年6月には三菱地所レジデンス(東京都千代田区)が「The Parkhabio SOHO(ザ・パークハビオソーホー)大手町」を竣工し大きな話題を呼んだ。職住一体型の高級賃貸マンションで、1階に60㎡のコワーキングスペースや、住民以外を招くことができるミーティングスペースも設けている。22年10月に竣工した、JR東日本(東京都渋谷区)の高級賃貸「目黒MARC(マーク) レジデンスタワー」には、1階と2階に計400㎡もの広さを誇るラウンジがあり、その中には30席のコワーキングスペースがあるという。賃貸住宅にも働くための場を設置することで、付加価値づけになる。テレワークを行う業種を入居者ターゲットとする場合には、有効な企画になりそうだ。

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約150㎡のコワーキングスペース(JR東日本)

入国制限緩和、外国人需要回復 観光業復調し民泊再起へ

 記者D 入国制限が緩和され、街中を歩く外国人が戻ってきた。一般社団法人日本シェアハウス連盟(東京都渋谷区)が22年9月に公表した「シェアハウス市場調査2022」では、22年5月以降の問い合わせ数が増加傾向にあると聞いた。特に、入国制限が緩和された外国人入居希望者からの反響が大きいという。200棟4600室のシェアハウスを運営するオークハウス(東京都豊島区)では、入国制限の緩和で留学生の需要を一気に獲得し、コロナ下の入居率から約10%上がったそうだ。

 デスク 入国制限の緩和に加え、円安が進み日本観光の魅力が高まったことを背景に、観光業や民泊ビジネスが息を吹き返しつつある。

 記者C 10月からスタートした「全国旅行支援」も民泊復調に寄与したようだ。東京23区を中心に225戸の民泊を運営するUnito(ユニット:東京都千代田区)は、都内に立地する物件の22年10月の稼働率は8割を超えた。22年3月比で、2割高まったという。

 記者B 22年10月には世界のホテル最大手マリオット・インターナショナル(以下、マリオット:米国メリーランド州)が運営するサイト「ホームズ&ヴィラズ・バイ・マリオット・インターナショナル」に、国内の民泊で第1号となる北海道の物件の掲載がスタートした。高級宿泊施設と利用者をつなぐマッチングサービスで、マリオットが設定した独自の基準があり、高級志向の民泊、貸別荘を掲載している。他社からも、同サイトの基準を通過した物件があるという話を聞いた。高級民泊が今後増えていくかもしれない。

 記者E 国は地方の既存物件を、民泊として積極活用していく方針だ。現在、民泊の管理・運営を行うために求められている不動産業の資格や業務経験を緩和する。23年度中には、指定講習を受けることで民泊運営事業に参入が可能となる。民泊は観光業との親和性が高く、マーケットの広がりに期待できそうだ。

デジタル証券が台頭 小口化商品にも反響

 デスク 岸田文雄政権が国民の資産を「貯蓄から投資へ」振り向かせようと、少額投資非課税制度(NISA)の拡充などを図る。そのような中で、不動産クラウドファンディング(以下、クラファン)や、不動産をデジタル証券化する不動産STO(セキュリティー・トークン・オファリング)などのビジネスも商機になりうる。建築費や土地の価格が上がり、手堅い都心の一棟ものに投資できるのは、富裕層や資産のある法人などに限られている。資産がない人は、地方の築古物件や区分マンションなどしか選択肢がなく二極化が進んでいる状態だ。不動産投資の選択肢をどのように増やすことができるかで、収益不動産ビジネスのすそ野を広げることにもつながる。

 記者A 不動産を小口化し、クラファンで運用資金を集める手法は、一口1万円程度からの投資が可能な商品もある。運用期間が短めで、利回り5〜8%の運用益を得られるケースがあり、初心者が手を出しやすい仕組みだといえる。22年はクラファンで資金を調達したという話題が多く聞こえた。茨城県の地場大手管理会社、香陵住販(茨城県水戸市)も22年4月に同社初のクラファンの出資を募った。同社が企画、建築した17年築のアパートを対象に、募集開始後1分で募集額5390万円満額を調達。翌日には1億6000万円の応募となり、キャンセル待ちの状態だった。市場の勢いを感じる。

 記者B 新しく出てきた不動産STOは、短期間・少額のクラファンと比較して、6〜10年の中長期で運用でき、数十億円以上の資産規模である点に差がある。ブロックチェーン(分散型台帳)技術を活用し「セキュリティートークン」を発行しデジタル証券化しているので、売買のタイミングが自由であることもメリットといえる。

 デスク 不動産アセットマネジメントを行うケネディクス(東京都千代田区)、三井物産グループの三井物産デジタル・アセットマネジメント(東京都中央区)に加え、22年11月にはいちご(東京都千代田区)も同社初の不動産STOの公募を行った。これからさらに参入企業が増えていくだろう。

ZEHの普及も進むか 賃貸経営にもESG視点

 記者C 23年に注目しているのはZEH(ゼロ・エネルギー・ハウス)基準の賃貸住宅の普及がどこまで進むかだ。2月には投資用ワンルームマンションとして日本初となる、ZEH基準の賃貸住宅が竣工する。22年には、ハウスメーカー大手がZEH賃貸の新商品を発売開始し、賃貸住宅においても徐々に供給が増えてきた。国のエネルギー基本計画では、25年には「省エネルギー基準」を満たすこと、30年に新築物件のZEH基準の義務化を目指している。ゆくゆくは、ZEH基準に満たない物件は建てられなくなるだろう。デベロッパーや建設会社は義務感を持って、ZEH仕様の建築を進めていくはずだ。

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ZEH賃貸住宅の一例(大東建託)。22年10月には同社初となる長期優良住宅の賃貸住宅商品も販売開始した

 記者D 入居者側にとっても、電気代をはじめとした光熱費が上がっている中で、ランニングコストを抑えられる省エネ住宅への関心は間違いなく高まっていくだろう。既存の築古物件について、どのように住宅性能を高めるのか、それとも建て替えるのかなど、管理会社はオーナーへの提案力が求められる。

 記者E ストック住宅の再生、流通促進も、ESG(環境・社会・企業統治)投資の視点からより重要視されていくだろう。ブルースタジオ(東京都中央区)の大島芳彦専務に取材した際、ストックを活用するという「点」の視点ではなく、エリアリノベーションという「面」の視点が特に管理会社には重要だと話していた。一つの物件の利活用や流通だけでは真に不動産の価値を高めるまでには至らない。地域全体の価値が上がることでおのずと不動産の価値は上がる。エリアの価値向上が重要だという。

 デスク 業務をIT化し、効率化できるからこそ、機械に任せられない、人にしかできない管理業の本質が問われる時代になってきている。22年、大阪府大手のTAKUTO(タクト:大阪市)は企業のパーパス(目的)を改めて定めた。愛知県大手のニッショー(愛知県名古屋市)もブランディングワードを定めている。22年11月に行われた公益財団法人日本賃貸住宅管理協会(東京都千代田区)のフォーラムで塩見紀昭会長は「22年は同業者から管理業の本質にかかわる相談が目立った」とコメントしていた。管理会社は、自身の存在意義を改めて考える時期に来ているといえる。23年も引き続き、業界のために取材を進めていこう。

(2023年1月16日4・5面に掲載)

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