一般社団法人CCIM JAPAN(シーシーアイエムジャパン:東京都港区)は、収益不動産の投資分析ができるプロフェッショナル資格CCIM(米国不動産投資顧問)の日本における試験実施や有資格者の業務支援を行う。同協会の緒方大介会長にCCIMの資格としての特徴、協会の取り組みなどについて話を聞いた。
「資産組み換えで要請高まる」
CCIM JAPANの緒方会長は「まだ資格の認知度が低いのが課題だが、不動産業界においてCCIMへの要請は高まっていくと考えている」と話す。
CCIMとは、投資用不動産の経営分析の能力を持つプロフェッショナル資格だ。資格の運営団体であるCCIMは米国で1967年に設立し、全世界に50の支部を持ち約2万人の有資格者がいる。
日本においては、2012年に初めての資格講習を開催し、翌13年に正式な運営団体であるCCIM JAPANが発足した。現在、国内に190人のCCIM資格者がいる。
有資格者の傾向としては、CPM(米国不動産経営管理士)を取得後、さらに不動産のコンサルティング能力を高めたい場合にCCIMを取得するケースが多い。デベロッパーや不動産会社が9割、それ以外の税理士や公認会計士などの士業や、投資家が1割ほどだという。
「不動産の運用手法、事業性の分析、ファイナンスを総合的に教える環境が日本では皆無と言っていい。CCIMのプログラムは投資用不動産について複合的に学ぶことができる。また、グローバルスタンダードとして世界に通用する資格であり、海外のCCIM取得者とも同じ目線で話ができる強みがある」(緒方会長)
そういった能力が生きるのが、資産組み換え提案などのシーンだという。緒方会長自身、不動産の物件企画や建築、コンサルティングを行う会社を経営しており、一部で地主からの相談を受けることが多い。親から不動産を相続した2代目、3代目のオーナーで年齢層は50代くらいの企業勤め経験者が中心だ。緒方会長は「オーナーの代替わりが進んでいる。相続を機に資産組み換えもこれからさらに増えていくだろう。不動産の事業性の比較分析に必要な力が身に付くCCIMの需要は高まっていくはずだ」と話す。
さらに、今後は日本においても、個人事業主である不動産エージェントが活躍する時代になるとも見る。その場合、CCIMを取得し、アセットマネジメントの目線から売買のコンサルティングができる能力を身に付けることは、差別化の一つになるという。
同協会では、CCIM取得のための講座の運営方法もコロナ下において変えてきた。従来はリアルが中心だったのを、オンライン講座を取り入れ、さらに講師によるライブ講義に関しても、人数を抑えた会場での受講とZoomでの参加も併用するようにした。「オンライン講座で対応するようになったことで、これまで1年ですべての講義を受ける必要があったのが、2年かけて学び、資格を取得するケースも出てきている。結果的に取得者の幅を広げることにつながっている」(緒方会長)。
資格取得者向けの勉強会もオンラインで実施。台湾からの参加者もいたという。
CCIMは取得者同士で仕事の紹介などにもつながり、さらに世界のネットワークがある。緒方会長は「不動産の国際間取引が増えてくると、海外のCCIM資格者とのビジネスも生まれやすくなる可能性も出てくるだろう」と先を見る。毎年20人ほどの新規の資格取得者数を、50人ほどまでに増やし、5年後に日本でのCCIM資格者500人を目指していく。
≪CCIMとは≫
投資用不動産の経営分析の能力を持つプロフェッショナル資格。資格講座では、不動産の運用手法、事業性の分析、ファイナンスを総合的に学べるのが特徴。複数の収益不動産の事業性の比較の能力が身に付く。全世界に約2万人の有資格者がおり、会員間のネットワークも広い。日本の有資格者は190人。
(11月1日10面に掲載)