不動産事業で社会問題解決【クローズアップ】

　国土交通省は3月14日、「第1回地域価値を共創する不動産業アワード」の表彰式を行った。地域関係者と連携した地域課題の解決に向けた取り組みを、不動産事業者らから募集。1回目となる今回は全国から97件の応募があり、10件11社が表彰された。

国が賞を創設、11社を表彰

　アワード大賞には、エンジョイワークス(神奈川県鎌倉市)の「共感投資プラットフォーム『ハロー! RENOVATION(リノベーション)』を活用した空き家・遊休不動産の再生」が選ばれた。空き家活用のための資金調達において、地方公共団体や地元金融機関と連携し、まちづくりファンドを導入した。今回の受賞にあたり福田和則社長は「共創パートナーの枠を広げて、ステークホルダーをより多く巻き込みたい」と話した。

部門別6件が受賞

　「低未利用不動産の有効活用部門」では、暇と梅爺(東京都墨田区)の「すみだ八島花(やつしまはな)文化創造区、創出のための老朽築古物件リノベマッチング事業」が受賞。

　「中心市街地・農村活性化部門」では、まちづクリエイティブ(千葉県松戸市)の「MAD City(マッドシティ)プロジェクト」が選出。クリエイティブな自治区をつくるという思いの下、サブリース型の不動産サービスや起業支援、都市再生コンサルティングなどを行う。寺井元一社長は「グローバルな視点で自治区を目指すまちづくりを進める」と話す。

　「居住・生活支援部門」はエステートイノウエ(岡山県倉敷市)の「地域共生で笑顔になれる住まいの支援」。主に住宅確保要配慮者に対する物件探しの支援や、物件売買の際に物件内に残った物品のうち、需要がある品物を社会福祉法人へ寄付をしている。

　「安全・安心部門」は一般社団法人熊本県賃貸住宅経営者協会(熊本市)の「被災者支援で感じた『競争』から『共創』への転換、そして一般社団設立による更なる活動の展開」が受賞。川口雄一郎会長は「行政、関係団体双方で災害対応力を継承していく」と話す。

　「イノベーション部門」では小田急バス(東京都調布市)とブルースタジオ(東京都中央区)の「住居専用地域内バスターミナルのコミュニティーハブ化事業」が受賞。

　「担い手育成部門」では一般社団法人全国古家再生推進協議会(大阪府東大阪市)の「ー『あなたの投資で社会が良くなる』ー空き家(古家)の再生で『四方よしビジネス』を全国に広める活動」が受賞。工務店と投資家に向けて、両者が同じ知識を習得する環境を整備し、資格制度を創出した。

特別賞3件選出

　「空き家・空き地相談窓口」の設置や行政区分にとらわれない活動が高く評価された、ありあけ不動産ネット協同組合(福岡県大牟田市)が特別賞を受賞。川添健一理事長は「地域をよくしたいという思いでやってきた。空き家予防活動のため公民館の館長や民生委員と連携していく」とコメントした。

　三好不動産(福岡市)は「誰一人取り残さない社会へ～『場の提供者』として地域に住まう方のお困りごと支援、及びお困りの『場』へ学生ボランティアと共に赴き災害復旧復興支援、こども食堂支援～」で受賞。三好修社長は「行政や異業種と共創できる場を提供していきたい」と話した。

　千島土地(大阪市)は所有する遊休不動産を活用しアートを軸にした、まちづくりを実施する「北加賀屋クリエイティブ・ビレッジ構想～創造的なまちづくりへの挑戦～」で選出された。

(舘野)
(2023年4月3日20面に掲載)