「繁忙期なのに仲介できる物件がない。目の前に顧客がいるのに、案内できない。売上はがた落ちです」
「仲介物件はなくても問い合わせだけは毎日増え続けています。現場は悲鳴を上げています」
仙台市内に仲介店舗を構えるある中堅管理会社社長の声だ。2〜3月で稼ぐはずの仲介売上だが現在、一部のワンルーム物件を除き空室物件はまったくなく、完全な在庫不足に陥っている。
8700戸管理している山一地所(宮城県仙台市)でも、震災前までは管理物件の入居率が93〜94%だったが、今は98・5%。紹介できる物件がないのが同社にとっても頭の痛い問題だ。
「特にファミリー物件がなく、法人契約の依頼があっても紹介できず困っています」(渡部洋平社長)
管理物件で損壊した建物について、取り壊しはほぼ終わったが、建て替えの動きは鈍いという。多くの家主が数棟所有しており、1棟取り壊しても急いで新築する理由はないのだ。
震災前、仙台市内の入居率は8割を割っていた。長きにわたり空室に苦しんできたオーナーが多いだけに、長期間にわたる経営が求められる賃貸経営には慎重にならざるを得ない心理もある。
仙台市内で最も大きな被害を受けた若林区荒浜。現在、瓦礫こそ撤去されたが、新規の建設は進んでいないという。
被災地は深刻な人手不足で人件費が跳ね上がり、建設費も高騰している。しかし発注者の圧力を気にして結局は下請け業者が泣いている状況もあるという。
「受けざるを得ないから仕事量は多いが、ちっとも儲からない」という声は少なくない。そのため、少しでも工事費が高い現場が優先され、なかなか工事が進まないというのが現状だという。
そんななか、宮城県気仙沼市の地場ゼネコン住研工業は、震災以降9棟のアパートを受注した。同社の強みはユニット式で、工場で製造して、現場では組み立てるだけの簡易施工。そのため、職人の手をあまり使わずに建設できる。とはいえ、戸数でいえば受注数は39戸。需要に答えるには少ない。
県による被災者向けの借り上げについても、昨年12月の時点でまだ家賃の振り込みが行われていなかったというケースもあるほどで、震災から1年たった今でも現場業務は落ちつかない状況が続いている。住宅という生活の基本をなす産業だけに、民間賃貸住宅が新規で建設されやすい環境作りが今後の課題といえる。





