コロナ禍のシェアハウス最前線 ~後編~

Hidamari(ヒダマリ), Share-leaf(シェアリーフ), 一般社団法人こどもとみらい教育研究会

その他|2021年03月20日

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2021年2月、コロナ禍にオープンした埼玉県草加市のシェアハウス『シェア屯草加』

 コロナ下において、リビングやキッチンなどを共有するシェアハウスは入居付けに苦戦し、一部の事業者からは事業縮小の声も上がっている。その一方で、コロナ禍により出てきたテレワークのニーズをいち早く取り入れた物件も登場している。業界団体とポータルサイト運営会社、シェアハウス運営会社に聞いた最新の入居者のニーズや管理・運営側の取り組みを紹介していく。

各社の入居状況と戦略

Hidamari、エリアで入居率に格差鎌倉・湘南人気が継続

 熊本県を拠点に全国9エリアで全43棟305室のコミュニティー型シェアハウスを管理運営するHidamari(ヒダマリ:熊本市)は、管理物件全体の入居率が2020年2月時から比べ、21年1月には10%減の74%となった。同社の管理物件の特徴は、平均室数7部屋の小規模コミュニティー型で、入居者の多くは20~30代の若年層。

 入居率が下がった理由に、管理棟数が10棟ほど増えたことと、コロナ下で新規入居希望者の動きが滞ったことを挙げた。

 特徴的なのは、コロナ下での新規問い合わせ数や入居率の減少にエリア差があったことだ。林田直大社長は、「テレワークの定着化で、都内への通勤には不便だが憧れの街として人気のある鎌倉・湘南エリアの物件への新規問い合わせはコロナ下でも落ち込みはなく、例年通りだった」と話す。

 一方、新宿エリアに立地する物件に関しては、コロナ下の新規問い合わせはほとんどなく、稼働率はコロナ前までの95%から28%減の67%を切ったという。

 結果として減少した入居率だが、「三密を避けるため」「感染対策が不安」などのコロナを理由にした退去は発生していないと話す。「コロナが繁忙期シーズンに被ったため、然るべき引越しや転勤といった自然減に対する新規流入が見込めなかったのが原因」(林田社長)と分析する。

 同社の強みは、入居者間のコミュニケーションが円滑に図れている点だ。そのため、コロナ下の在宅勤務で想定される騒音問題に関しても、入居者間で対処し合いクレームという形で問い合わせを受けることは無かったという。

 今後、オンラインでの交流頻度が多くなっていくほど、リアルでのコミュニケーションの価値が上がっていくと考え、コミュニティー型シェアハウスの形を大事にしていきたいとする。

Hidamari 林田直大社長の社長

Hidamari
熊本市
林田直大社長(34)

 

 

Share-leaf、消毒液散布を定期導入安全性アピール

 コロナ下の入居率に大きな変動がないと話すのは、名古屋市内に全16棟248室の小・中規模型シェアハウスを管理運営するShare-leaf(シェアリーフ:愛知県名古屋市)の田辺憲一社長だ。

 同社の管理物件は、定員数10人~50人規模で、入居者の9割が日本人。年齢層のボリュームゾーンは25~35歳。2020年5月~21年2月までの平均入居率は95%と高止まりしている。

 入居率維持の理由として田辺社長は、「既存入居者の満足度を高めることを重要視している。ウイルス感染予防対策の清掃に力を入れていた自信がある」と話す。

 グループ会社として建築会社を2社経営する田辺社長は、建設事業で関わりのある清掃業者を人件費のみのコストで発注できるため、シェアハウスの定期清掃に加え、コロナ対策の室内消毒を専門業者に委託している。

 「定期的に共用部に消毒液が散布される光景を見ることで、入居者自身のコロナ対策への意識も高まる上に、シェアハウスへの安心・信頼感も強まると考えている」(田辺社長)。

 今後のニーズについて、「既存入居者の安全を守ることが、いずれは口コミという形で新規入居者の獲得にもつながっていくと考えている」と長い目で見ている。

Share-leaf 田辺憲一社長の写真

Share-leaf
愛知県名古屋市
田辺憲一社長(42)

 

 

こどもとみらい教育研究会、入居者の4割が生活弱者

家賃支払えず退去相次ぐ

 コロナ禍による経済への影響が、入居者の退去につながっているケースもある。

 一般社団法人こどもとみらい教育研究会(さいたま市)は、セーフティネットとしての役割を重視するシェアハウスを埼玉県と東京都に全5棟21室管理運営するが、2020年12月ころ、コロナの影響で職を絶たれ、支払い能力のなくなった入居者が一斉に退去。全5棟全体の平均入居率が一気に落ち込んだ。平均入居率は40%前後減の55%となり非常に厳しい状況にある。

 同社の管理物件の特徴は、入居者ターゲットの間口を生活困窮者に開いていること。入居者の約3~4割が児童養護施設を出た人や身寄りのない人だという。

 1棟あたりの定員数は10人弱と小規模型で、ドミトリータイプの部屋がメーンのため家賃が比較的安く、平均3万円台。家賃の安さで入居を決める入居者が残りの6~7割を占める。

別事業への転換計画

 21年2月の新規問い合わせは滞り、退去分の空室を埋められていない。さいたま市内に立つ物件が2棟あるため、うち1棟をなくす計画を進めているという。

 シェアハウス事業部中川峻一氏は、「セーフティネット利用者の動きがあり、コロナ下の20年5月~12月の間に入居した人で家賃支払いが困難になり同期間での退去が相次いだ」と話す。

 コロナ下の運営対応として、リモートワークを行う入居者からのクレームに防音シートの施工で対応したところ、一部で退去を防ぐことができたという。また、インターネット環境の精度もバージョンアップするなどし、既存の入居者の満足度向上に努めている。

 今後は、廃業予定の1棟を学童保育事業に転換する計画だ。もともと同社の別事業として既に展開しており、コロナ下でも継続が求められると考えている。

(3月15日5面に掲載)

関連記事▶【コロナ禍のシェアハウス最前線[前編][後編]】


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