賃貸仲介事業とその業務の現状を分析していく実態調査企画。今回は、22年5月の完全オンライン契約実現を目前に、IT重説の導入に注力している不動産会社に話を聞いた。
IT重説実施5割占める
高齢の顧客には対面で対応
都内を中心に年間約1800件の賃貸仲介を行うアイデアル(東京都千代田区)では、電子申し込みは6割、IT重要事項説明も5割を占める。高齢の顧客に対しては対面で応じるなど、顧客の年齢層や要望に応じて柔軟に対応している。
同社の売り上げは12億3000万円。事業別売り上げ構成比率は、不動産再生事業が50%、賃貸仲介10%、売買仲介は10%、PM(プロパティマネジメント)15%、その他5%となる。全社員38人のうち、賃貸仲介の営業スタッフは約22人だ。
商圏は都内の城北・城東エリアを中心とし、赤羽、池袋、秋葉原に仲介店舗がある。物件は、ワンルーム~1LDKの単身者向けが約80%以上、残りがカップルやファミリー向けの2DK~2LDKなど。仲介する顧客も70~80%が単身の社会人で、残りがファミリー・カップルやDINKS・学生だという。
賃貸仲介事業の売り上げは2億4000万円で、内訳として仲介手数料が60~70%、AD(広告費)が30~40%だ。仲介営業担当者1人あたりの平均契約数は年間約95件。仲介手数料は基本的に家賃1カ月分。平均成約単価は13万円だ。
成約件数のうち、一般媒介が90%、専任媒介が10%となっている。内見後の申し込みは電子が6割、紙が4割ほど。
同社は主に客付けを行っているため、自社物件以外は管理会社によって申し込み方法が異なる。中にはファクスを使った申し込みもあるが、新型コロナウイルス下以前は2~3割であったものが現在は1割ほどに減ってきているという。また、電子申し込みの場合にも高齢の顧客には来店してもらい申し込みを手伝うことがある。若年層の顧客が多いため、電子申し込みへの対応も早いという。
家賃債務保証会社に関しても管理会社に応じるが、自社物件の場合には主にダ・カーポ(東京都中央区)を利用している。
賃貸借契約と重説は同日に行い、実施方法は対面5割、オンライン5割とほぼ半々だ。顧客の希望に合わせて行っており、IT重説の場合には「Zoom」を用いる。非対面の場合、ほかの店舗にいる宅地建物取引士でも対応できるため、スケジュールを調整しやすいメリットがある。申し込みから契約までの所要期間は平均7~10日だ。鍵の受け渡しは、ほとんど店頭で対応している。
同社は研修制度が充実しており、月に2~3回は営業スタッフに対する研修が行われている。同社営業推進部の石井克典マネージャーは「電子契約や非対面接客など、デジタル化が進む中でも人間力、営業力などのアナログな部分も大切にすべきだと考えている。温故知新の気持ちを忘れず、仲介会社としての幅広い物件・地域の知識の提供に努めていきたい」
(2021年12月13日8面に掲載)