全国の管理会社に聞いた 建物管理業務を始める際のポイント

統計データ|2023年12月12日

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 賃貸住宅管理業法の施行以来、建物管理業務に注力する管理会社が増えています。建物管理に含まれる業務の領域は広く「どこから始めるか」「どうやるか」など考えるべきことは無数にあります。公益財団法人日本賃貸住宅管理協会(東京都千代田区)が認定する資格「賃貸住宅メンテナンス主任者」が創設されたこのタイミングで、全国の賃貸管理会社が建物管理業務をどう事業化させようとしているのか取材しました。

建物管理業務の内製化、外注化 どうすみ分ける?

§1 建物管理業務の実施状況は

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 日常清掃業務は、1社以外ほぼ外注しています。一方、定期巡回・点検業務は多くの管理会社が内製化。オーナーに提案をする管理部のスタッフが、建物の状況を確認したうえで報告書を作成しています。内製化する理由としては、自社のスタッフが確認することで、オーナーに対してより説得力のある提案ができるためです。

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 ハードクレーム対応はほとんどの会社が外注しており、内製化している会社でもコールセンターを利用しています。建物管理から発生する工事施工は、大規模修繕工事の場合は外注する一方、リフォーム・リノベーションの場合は工期が短いため、管理会社が元請けとして受注し、自社で対応できない工事をそれぞれの施工会社に分離発注しているケースが多く見られました。

賃貸管理事業における 建物管理の役割とは?

§2 賃貸管理業における建物管理の役割

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 では、そもそも賃貸管理業における建物管理の役割を、管理会社はどのように考えているのでしょうか。注目すべき事例を紹介します。

 まず一つ目は、工事ができることを武器に、管理の受託契約を獲得したTAKUTO(大阪市)の事例です。首都圏にも展開する大阪府の大手管理会社TAKUTOの場合は、工事担当者がオーナーに工事を提案することが、結果的に1年間で720戸の管理受託につながりました。工事から管理につながったきっかけは、自主管理のオーナーが物件の修理を依頼していた業者が廃業したことで、依頼先がなくなり悩んでいたところ、TAKUTOが工事もやると手を挙げたのがきっかけだったそうです。TAKUTOは、建物管理に伴う工事の売り上げが、PM事業全体の約半数を占めるほど重要な事業になっており、人の補充にも注力しているそうです。中長期的には、工事関係を3年で30億円、5年で50億円まで広げたいとのことです(グループの工事会社の売り上げも含む)。
 また、大阪市内には、消防などの法定点検を行わないオーナーが存在するそうで、そうしたオーナーに対して火災が起きたときの経営上のリスクを伝えることで、受注につなげているケースもあるとのことでした。

 二つ目は、神奈川県を中心に管理を行うジェイエーアメニティーハウス(神奈川県厚木市)の事例です。同社は管理拡大のためには、建物の管理による環境整備が重要で、物件を美化しておくことが良いリーシングにつながり、その事業性をしっかり担保することで管理拡大につながるという思いのもと建物管理に取り組んでいます。管理は徹底しており、日常清掃ではきれいにならなかった部分を高圧洗浄機で落とそうとしたところ、外構部に給水設備がなかったため、タンクの中に水を入れる給水車のようなものを職人と一緒に作って、給水設備のない物件でも高圧洗浄ができるようにしました。ここから新しい展開が生まれており、現在は、高圧洗浄を他社の管理物件や管理外物件のオーナーに提案し、単発の売り上げにつなげようとしています。今後は、積極的に管理外の物件も受注していきたいとのことでした。

 三つ目は、石川県金沢市と1都3県(東京、神奈川、千葉、埼玉)を商圏とするクラスコです。同社は、建物の維持にとどまらず、売り上げを生むため管理物件のバリューアップを重視しています。その中で取り組んでいるのがリノベーションにおける3点ユニットバスの分離です。3点ユニットバスの場合、1回のリノベはできても、2周目、3周目になると客付けが厳しくなることがわかり、シャワーブースとトイレに分離する工事を行うようにしました。その結果、入居者が決まるようになったといいます。さらに、ただ外壁塗装するだけでなく、物件のロゴやデザインパネルをプラスし、物件をブランディングすることで付加価値を付け、通常であれば平均で1棟あたり約300万円の受注案件を、多いところでプラス50万円の価格で提案し工事の利益率を高めています。

慢性的な人材不足への 各社の対応は?

§3 スタッフ育成について

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 賃貸管理の現場においては慢性的に人材が不足しています。人手不足が進むと、正常な建物管理もできなくなる可能性があり、どのように人材確保するか、仕組み化するかが建物管理業務にとって重要です。そこでスタッフ育成に関する注目の取り組みを紹介します。

 一つ目は、自社事務所の中に育成施設を造るケースです。営業所の中に、エアコンや水洗など、賃貸住宅の工事関係に使用する設備を配置した仮設の部屋を設け、そこで設備の設置や交換の作業を直接体験できるようにしています。

 二つ目は、施工会社と提携して研修を実施しているケースです。管理会社のベテラン社員や管理部の社員でも、個人レベルでは知識が足りないケースがあるようです。そこで、工事会社や施工会社のプロを講師に招き、建物や工事に関する知識を教えてもらいます。研修として定期的に行っている会社もあるようです。

 三つ目は、社内資格の取得です。ハウスメーカー系の管理会社では、親会社の建築会社が住宅の定期点検を行う際の社内資格をつくっています。管理会社の工事関係や建物管理の担当者も、2日間の講習を受けて資格を取得しているそうです。3年に1回、資格の更新があり、その時にまた1日しっかり講習を受けて、その商品やサービスに関する知識をアップデートしています。

 自社で社内資格をつくるのはハードルが高いと思いますが、11月6日から申し込みを開始した公益財団法人日本賃貸住宅管理協会の資格賃貸住宅メンテナンス主任者に関しては、取材先の多くの企業が興味を持っており、資格取得を推奨していくというスタンスを決めている会社もあるため、スタッフの育成に活用されていきそうです。

深刻化する現場の職人不足。 注目される対応とは

§4 職人不足への対応策

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 最後に、各社共通して挙がっていた現場の職人不足への対応について、注目すべき取り組みを紹介します。

 ある会社は、社員登用後に独立を支援する仕組みを構築中でした。具体的には、工業高校の卒業生を社員として自社で採用し、職人から現場で実地の訓練を受けさせます。1人で仕事ができるようになったら独立させて、自社の工事を継続して依頼していくといいます。今後、職人学校の設立を予定しているとのことでした。

 シルバー人材を活用するという会社もありました。現役時代にアフターメンテナンスを担当していたリタイア組を、自社で一度採用し、施工ができるようにしていく仕組みです。これも既に取り組んでいる会社もありました。自社スタッフによる施工に切り替えることで、施工のスピードを上げられるメリットも享受できるとのことでした。

 最後に紹介するのは多能工の育成です。社内に大工が2人いるという会社は、その2人にそれまで持っていなかった電気工事士の資格も取ってもらったといいます。この会社が目指しているのは、内製化によってコストダウンできる仕組みづくりです。1つの部屋の工事でも、電気工事しかできない、水回りの工事しかできないというのでは、1つの部屋に4人くらいの職人が入ってもらわなければ工事ができないことになります。それではコストがかかりすぎるほか、手が空いている時の業務効率が良くない一方、定められた期間ですべてを1人で工事できるようにすればコストダウンにつながります。また、実際に工事をした分の業績に合わせて、給料を増やしていく方法をとっており、従業員のモチベーションアップにつながります。

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