美想空間(大阪市)は、大阪・難波で築70年の空きアパートを借り上げ、複合施設「FUN SPACE DINER(ファンスペースダイナー)」へと再生した。その後、施設内のレストランウエディングが人気となり、近隣施設との提携が進んだ。周辺の不動産の利活用が進み、地主が利益を得る状況を見た鯛島康雄社長は、大阪市港区築港エリアで、自ら貸し手となるエリアリノベの実践に取り組む。
大きな建物が良い
鯛島社長は、FUN SPACE DINERが周辺の不動産価値を上げることにつながった状況を分析し、エリアリノベを成功に導く二つの要素を見いだした。
一つ目は、起点となる大きな建物の存在だ。FUN SPACE DINERに改修する前の「千南荘」は、延べ床面積500㎡の2階建てアパートだった。南海電鉄南海本線なんば駅から徒歩4分に位置し、大きな存在感を放っていた。建物が大きいと、改修時に周辺に与えるインパクトが強い。
二つ目は「エリアが注目されていないこと」だ。すでに人気を獲得している場所だと賃料が高く、テナントの事業継続リスクも高くなる。誰もが知っている地域ではなく、ブランドを確立していない地域で取り組むからこそ、賃料収入のギャップ、拡大を狙える。
「大きな建物があり、人気を確立できていないこと。この二つの条件がそろう場所を探していた。条件さえそろえば、どこでも良いと思っていた」(鯛島社長)
改修前の建物は、1952年築で地下1階〜地上3階で、A〜C館が連なる3棟構造。延べ床面積1382㎡で、大きさは申し分なかった
大阪湾エリアへ進出
大阪市港区築港、大阪メトロ中央線大阪港駅の駅前に立つ、当時築66年の築古ビルの話が、鯛島社長に持ち込まれたのは18年だ。建物所有者の港湾運送業大手、上組(兵庫県神戸市)が解体を決めたことを地域住民が知り、「建物を残してほしい」という声が上がった。これを受けた大阪市港区の筋原章博区長(当時)が鯛島社長の活動を知り、相談を持ち掛けた
建物は、地下1階、地上3階のRC造で延べ床面積1382㎡と申し分のない大きさだった。また、周辺の築港エリアは、借地権の上に立つ建物が多く、不動産会社や地権者にとって再開発のハードルが高く、不動産としての評価が低かった。
「ここ、おもろいよなあ」建物とエリアの双方に魅せられた鯛島社長は、上組の役員を一人ずつ訪ねて、建物改修により得られるメリットを伝えた。「ビルを解体するには6000万円かかる。われわれは月50万円、年間600万円の賃料を払う。10年間貸すことで何もせずに解体費が手に入るという金額的メリット。また、この建物を起点に築港エリアのブランドを高めることができれば、上組のブランドも高まることを伝えた」(鯛島社長)
(2024年9月23日16面に掲載)