新型コロナウイルス下において、住居の一部をオフィスとして利用するSOHO賃貸住宅の需要が高まっているという。SOHO賃貸の管理や仲介を手がける会社に、その可能性について取材した。
賃料5万円アップも
ジョイライフスタイル、2LDKに反響
東京都や神奈川県を中心にSOHO賃貸住宅の仲介・管理を手がけるジョイライフスタイル(東京都大田区)は、自社サイトにて2000件弱のデザイナーズSOHO賃貸を掲載し、40件弱の管理を手がける。
山内匠社長は「SOHO賃貸は需要に対して供給が圧倒的に少ない。管理するSOHO物件の入居率は、コロナ下前からほぼ100%だった。コロナ下では事務所をスケールダウンする企業も増えたため、さらに需要が高まった」と話す。
入居が2カ月決まらなかった物件をSOHO利用可能にしたことで、2週間で借り手が決まった事例や、家賃14万円だった物件をSOHO賃貸への変更で家賃19万円で決まった事例があることからも、需要の高さがうかがえるとする。
同社が管理するSOHO賃貸物件における入居者の属性は、男性が6割ほど。年齢は30代が最も多く、職種はデザイナーやクリエーター、IT系のエンジニアが6割を占める。
人気の高い条件は、駅から10分以内に立地する、広さ60~100㎡の2LDKだという。同社に問い合わせの多い東京の渋谷エリア周辺では、家賃が30万~50万円ほどになる。「60~100㎡は5~10人ほどで仕事ができる広さで、ニーズが最も高い。一方、実際に募集している物件は35~60㎡がメインになっており、需給ギャップがある」(山内社長)
SOHO賃貸の入居者は取引先の会社の近くを好む傾向があり、同社のサイトではJR山手線渋谷駅周辺の物件の反響が高い。2020年ごろからは神奈川県の湘南地域や鎌倉市などの郊外や、東京都内の大きな公園の近隣物件も自然を感じられるといった理由で問い合わせが増えているという。
一方で参入には課題もある。物件の立地する用途地域が住居専用の場合は、SOHO賃貸として利用不可能であることをはじめ、家賃が課税対象になる可能性があることや近隣住民とのトラブルなど、事前に検討すべき点が複数ある。
「都内には、立地は好条件なのに建物が古いままで活用されていない物件が多くある。SOHO賃貸のニーズは高いため、今後古い建物の活用に力を入れたい。オーナーにリスクやその対応策についても説明し、SOHO賃貸を増やしていきたい」(山内社長)
ジョイライフスタイル
東京都大田区
山内匠社長(56)
リビタ、築古も新築並家賃
シェアハウスの運営などを行うリビタ(東京都目黒区)は、22年9月に法人登記が可能なSOHO賃貸マンション「メトロステージ代々木上原」を開業した。
同物件は全5戸で、元寄宿舎を再生したもの。11月に全戸成約している。
問い合わせは、職業はデザイン職に就く個人事業主が、年齢は30代、世帯は単身者からが多かったという。
実際に入居したのはアパレル関連やデザイン関係の職種に就く入居者が多く、半数以上を男性が占めた。
最寄り駅から徒歩2分という利便性の高さなどもあり、同物件は築40年を超えるが新築に近い家賃価格帯で入居が決まっている。
また、敷金・礼金の価格帯がテナントではなく住宅と同設定であることや、事務所と居住用物件とを別々に借りた場合と比較して割安感がある点が、入居につながっていると同社はみる。
運営事業本部、地域連携事業部の増田亜斗夢氏は「引き続き、働き方の変化など住宅に求められるニーズを捉えた提案を行っていきたい」と話した。
(舘野)
(2023年1月23日20面に掲載)