企業研究vol.036 唐津亮 社長

クライフ

インタビュー|2019年11月08日

地域密着で管理を行う唐津社長

 2012年に創業し、管理戸数が2500戸となり、毎年売り上げは120%超と好調なクライフ(京都市)。2人1組でペアを組み、管理を行うというユニークなスタイルを取る同社、唐津亮社長に手法を取材した。

12年の創業から毎年売上120%超

バディ(ペア)組み2人1組で管理

――不動産会社で勤務してから、7年前、設立したそうですね。

 大学を中退し、19歳のときに不動産仲介会社に就職しました。その当時、「オーナーは皆資産に余裕があるので、多少家賃を下げても問題ない。むしろその方が、空室が埋まる。だからオーナーにとっても良いことだ」と思い、果敢に入居付けをしていました。しかし、ある年配のオーナーから「空室を埋めるために改修し、入れ替わりのたびに家賃を下げてきたが、収支が合わず、赤字だ。だからもう売却したい」と言われ、自分がやってきたことが何だったのか分からなくなりました。オーナーのためにできる職種を選ぼうと管理会社に転職しました。しかし、入社した会社がハウスメーカーの下請けで、設備を新しくする場合でも、最適な機器を選ぶことができず、オーナーに対してよりよい提案ができないと感じました。そんな中、オーナーの息子から「君の言うことを信じて建設したのに...」と落胆されたことが心に刺さり、管理会社に転職しても、業界への疑問を払しょくするどころか、疑いが増す一方でした。そこで、オーナーに忠実な仕事ができる会社をつくりたいと思い、クライフを立ち上げました。

同社のエントランス。航海にたとえ、かじのロゴやオブジェを並べ、入りやすい雰囲気に

同社のエントランス。航海にたとえ、かじのロゴやオブジェを並べ、入りやすい雰囲気に

――とはいえ、管理会社の違いについてオーナーが判断することはなかなか難しく、ましてや新会社をPRするのは大変なことだったでしょう。

 設立当初は「クライフと取引しないほうがいい」と吹聴されたこともありました。しかし、地元の重鎮が来店し、なぜ独立したのかを聞かれ答えるや否や「君のところで任せるからよろしく」と言ってもらえました。それから依頼が増え、1年足らずで管理戸数は1000戸を超えました。

――具体的にどういった管理を行っていますか。

 賃貸管理業界はメンテナンスとリーシングに追われているのが現状です。しかし、本当の意味での管理とはオーナーの収益の最大化を図ることだと思っています。管理戸数は2500戸足らずですが、地域密着で2人がバディを組んで、メンテナンスからリーシング、改善提案まで行います。例えば物件巡回は管理・巡回専門・清掃担当の3者が月3回以上クロスチェックを行い、改善に務め、月に1回以上はオーナー訪問をしています。管理物件は築20~30年以上経過した古い物件が多いですが、入居率は97%と高稼働を維持しています。

賃料相場維持し、オーナーへ経営改善を提案

――創業から毎年売り上げが120%とお聞きしましたが、その要因は何でしょうか。

 多くの管理会社はオーナーに対して、「家賃を下げ、広告料をかけ、リノベーションしましょう。空いているよりマシでしょ」と提案しがちですが、地域の家賃相場が崩れてしまいます。当社では家賃を下げるのは最終手段で、改修が必要になった場合も最低限で済むようにし、投資効率まで説明します。すると、地域の相場を守るためにも当社を紹介した方がいいという流れが生まれ、顕著に管理戸数が増加しています。加えて、アメリカ発祥の資格、CPMやCCIMで学んだ賃貸管理と経営改善提案の両方を行うことで、土地活用や売却案件などが発生し、利益を生み出すことができています。

――オーナーへのコンサルティングはどのように進めているのですか。

 たとえば、オーナーから相続対策でアパートを建設したいと言われた場合、どんな人に住んでもらいたいのか、月額いくら家賃収入が必要なのか、期待利回りを考えてもらい、これを基にプランを練っていきます。60代の農業を営むオーナーの事例を挙げると、過去に建てたマンションの借金が3億円ほどありました。物件規模が割と大きいため、一見収入があるように見えましたが、キャッシュフローを出すと赤字となっていました。オーナーは息子から「野菜の売り上げを吸い取るようなマンションは要らない」と言われ、うまく売却できないかと当社へ相談を持ち掛けました。ほかの不動産会社からは売れてせいぜい3億円少しと言われましたが、金利を下げ、メンテナンス会社を変えることで運営費を60万円下げられました。利回りを改善したことで、5億円で売却することができました。利益の最大化を目指すことが目的だと感じているので問題解決できたのではないかと自負しています。

――相続対策にも対応できるように、税理士とパートナーを組んだそうですね。

 当社は京都市西京区を中心に展開していますが、顧客のほとんどが地主系オーナーです。そのため相続対策とは切っても切れない関係です。しかし、不動産会社に相続対策を持ち掛けても、「税理士のところへ行ってください」と突き返されるケースが多いように思います。相続税対策を専門とする税理士と、11月からパートナーを組みました。オーナーのさまざまな問題を共に解決していくことが真の管理業だと思います。

――今後の展開について教えてください。

 エリア拡大より、さらにエリアを限定して町への貢献にもつなげたいと思います。地域交流はもちろんのこと、発達障害児の支援スクールや、工場跡地をリノベーションしてサッカーやテニス場を造るなど地域の住環境に関わる事業を展開していきたいです。

小学生の社会見学実施

 地域貢献にも力を入れる同社では、近隣の京都市立桂徳小学校へ本を寄贈し、クライフゾーンを設けたり、社会見学で児童が同社に訪問したりしている。2 0 1 8 年、2年生10人が訪れ、オーナー宅へ訪問し、あいさつしたり、管理物件の電球を交換したりと業務を体験した。児童からは「優しく笑顔で教えてくれてありがとうございます」「住宅のおしごとが分かりました」などのコメントが寄せられた。

お礼の言葉が書かれた手紙。事務所に   飾られている

お礼の言葉が書かれた手紙。事務所に飾られている

会社概要

社名 : クライフ

住所 : 京都市西京区桂徳大寺南町59

設立 : 2012年9月

資本金 : 800万円

従業員数 : 17人

業務内容 : 賃貸管理、不動産売買、相続対策に関するコンサルティング業

会社メモ

2012年9月創業する。管理戸数がほとんどない状態から事業を開始するも、戸数を伸ばし現在、2351戸管理している。CPMを取得し、資産の最大化を図るプロパティマネジメント会社としてサービスを提供している。

社長メモ

唐津亮社長、1980年8月18日、新潟市生まれ。小学2年生のとき京都市内に移り住んだ。関西外国語大学を中退後、賃貸仲介会社に就職する。管理会社を経て、2012年クライフを設立する。現在、IREM JAPAN西日本支部副支部長を務める。趣味は読書、英会話学習、週2回のジム。2児の父親。

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