講演者
ランドマーク
満室経営新聞
寺尾恵介編集長
物件価値向上策で安定経営
不動産投資による安定収入について、一般的な概念とは少し違う話をする。私が21年間、不動産投資をしてたどり着いた結論は「キャッシュフローが安定収入になる可能性は低い」ということだ。不動産投資の解説本などを読むと、安定したキャッシュフローを確保するべきだと書いてあることが多く、私もそれを信じてきたが、投資を始めて10年ほどたったときに「これは安定収入とは違うのではないか」と考えるようになった。
多くの解説の実例では、返済比率の数値や税金の金額が実際より低く設定されているように思う。従ってキャッシュフローの数値も、現実としては想定よりも減ってしまう。さらに、総潜在収入の数値は経年によって下がっていくのが普通だ。
キャッシュフローを当てにしないためにはどうすればよいか。要は、物件の価値が下がらなければよい。キャッシュフローが安定する、入居が安定する、修繕費があまりかからないといった入りと出の安定ではなく、不動産の価値自体が下がらない、もしくは上がるものを買っていくことが、真の安定収入につながると考える。私はそのことに気付いてから物件の投資手法を変え、以後は不安定さから脱している。
聴講者がスクリーンに視線を集めた
売却益意識し運用 修繕で稼働率見直し
キャッシュフローによる利益が極めて薄いものと知っておけば、キャピタルゲイン(売却差益)を重視し、価値の安定を意識した購入や運営ができるようになる。つまり「売却益を得ていく」ということだ。もし手元に残していたとしても、いざ売れば利益が出る物件を持つ。これは、5000万円で買った物件を5000万円以上で売る、いわゆる土地転がしをするというわけではない。時間がたてば残債も減るため、その差も含め、売ったときにきちんと利益が出ることが重要だ。
では、売却益を得るためにはどうすればよいのか。まずは、不動産相場が勝手に上がっていくケース。例えば日経平均が上がったり、公示地価が全国平均で上がったり、最近では建築コストや材料費が上がったりなど、以前から保有している、あるいは材料費や人件費が安いうちに造った物件は、相対的に価値が上がる。ただし、これは自分でコントロールすることができないので、運任せになる。
次に、何らかの方法、例えば修繕や設備改善などで所有物件の価値を上げること。入居率の改善もこれに含まれる。収益物件としての価値は、入ってくる家賃とほぼ比例しているため、入居率が低かったアパートやマンションを自分の取り組みで満室にすれば価値は上がる。また、これは無意識に行っている人もいると思うが、土地に新築物件を建てることも基本的には価値が上がる。さらに最近増えてきた考え方として、用途の変更がある。例えば通常の賃貸だった戸建てを民泊にしたり、シェアハウスにしたりすれば収益性は高まる。ほかにも、再建築不可で道路を造ることができない土地の隣地を買い上げ、再建築できるようにすれば価値は爆上がりする。こういった、自力で物件の価値を高める方法は数多く存在する。
自身の経験をもとにした具体例を語る寺尾編集長
税圧縮目的の買主 出口戦略の一つに
最後に、別の目的で不動産を欲しがっている買主に売るということ。例えば、税圧縮が目的の人であれば、物件を買うことで法人税や相続税が何千万円単位で圧縮できるケースがある。その場合は多少高くても良く、とにかく買うことが重要ということになる。
こういった考え方を皆さんも取り入れてほしいと思うが、それが難しくても、一般的な価値向上策に取り組むことは悪くはない。簡単なところでは、雑草を抜く、放置自転車を処分する、部屋の内見の際の照明を明るくするといった簡単なことから実践するだけでも物件の価値は少しずつ上がるので、物件を買う際はぜひそのような視点を持ってもらいたいと思う。
(2026年3月16日17面に掲載)




