約4万5000室の学生レジデンスを管理運営する学生情報センター(京都市)が、東急不動産(東京都渋谷区)との共同事業で手掛ける『CAMPUSVILLAGE(キャンパスビレッジ)』が2020年3月末で1000室を超える。2016年に東急不動産ホールディングスにグループ入りしてシナジー効果を図っている事業だ。「今後は学校が所有する不動産の活用についても相談してもらえるようにしたい」と語る吉浦勝博社長に、学生住宅の市場と今後の事業展開について取材した。
学校とのネットワーク生かし不動産事業の領域拡大
収益不動産として機関投資家が着目
――近年、学生向けマンションが収益不動産として着目されるようになりました。
事業者と運営管理会社が分離し、事業者側にさまざまな大手企業が名乗り出るようになったため、参入が相次いでいる印象を与えていると思います。大手デベロッパーが学生マンションを収益不動産として建設し、ファンドやリートに販売。機関投資家はポートフォリオに安定した収益を見込める学生向けマンションを組み込むようになりました。その場合、当社のような学生用住居専業の会社が管理運営を担っています。ただ管理運営会社のメーンプレーヤーは以前と変わりありません。共立メンテナンス、毎日コムネット、ジェイ・エス・ビーと当社を含めた4社です。実はこの4社の管理戸数を合算しても、市場の12%程度のシェアしかありません。
――収益不動産としての魅力は何でしょうか。
家賃は高くないですが同じ学生が4年間住み続けることが多く入退室の時期も予測できるため、安定した運用が期待できます。この安定性がポートフォリオにおける学生マンションの役目でしょう。開発目線では、適切な立地が明確で事業の見通しが立てやすい点に優位性があります。学校に近ければ、駅からの距離や周囲の環境は学生にとってあまり気にならないものです。そのため、今まで企業が活用をあきらめていた遊休不動産で、学生向けマンションを開発したいという相談が当社にも多く寄せられるようになりました。
――少子化の影響はないのでしょうか。
確かに出生数が下がり総数で見ると若年層の人口は減っています。しかし大学進学率を見てみると1990年は36・3%で、2018年は57・9%と21・6ポイント増加。専門学校を含むと53・2%から80・6%に上がっています。その中でも特に全国の主要都市に学生が集まる傾向があります。先に述べた業界大手4社を合わせたシェアから見ても、まだまだ伸びしろがあると考えられます。
――今春、JRの高架下に竣工する『中央ラインハウス小金井』も不動産活用の好例ですね。
もともとJR中央ラインモールが高架下空間を生かした沿線まちづくりを進めている一環で開発した学生レジデンスを、当社が管理運営することになった物件です。デザインコンセプトは「プライベートに配慮しつつも、交流を育み新しいライフスタイルを提案する」。全109室で、家具家電付きの各専用部は、トイレ・洗面・ユニットバス(一部はシャワーブース)が完備され、食堂では、管理栄養士によるバランスのとれたメニューで朝夕2食を提供します。