本企画では「管理受託営業」に焦点を当て、各社の管理戸数を増やす手法を紹介する。今回は入居率を上げることにより、リピーターの獲得に成功している住宅情報センター(沖縄県宮古島市)とつばめ不動産(岡山市)の2社の取り組みを取り上げる。
住宅情報センター、知名度生かし紹介から受託
リーシング力で訴求
管理戸数1万3197戸の住宅情報センター(沖縄県宮古島市)は、知名度の高さとリーシング力を強みに、管理戸数を伸ばしている。
2021年度は333戸の純増となった。
管理物件の主なエリアは同県宮古島市と石垣市。受託する物件の傾向は、1棟アパート・マンションが多い傾向にある。管理物件の平均賃料は、約5万〜5万5000円。
管理受託する家主の人数は722人で、地主が過半数を占める。
受託営業スタッフは他業務との兼任で、ベテラン社員が担当する。二つある拠点に1人ずつ配置している。
宮古島ではホテルの開発が進み、関係企業の従業員向け住戸ニーズの高まりに対応するため、同市の拠点では2人体制に向けてトレーニング中だという。
新規管理の受託経路は、既存家主からの追加受託と、既存家主からの新規家主の紹介がそれぞれ5割ずつだという。
既存家主からの追加の管理受託については、新築の建築計画決定時などに、家主から同社に依頼の連絡が来るという。
リピートの依頼が多いのは、管理物件での入居者募集力が評価されているためだと、同社は分析している。同じ管理エリアの競合他社に比べ、仲介営業担当者を2倍の4〜5人配置することで、管理物件の入居率は約99%(8月末現在)。
このリーシング力の強さが既存家主に評価され、2件目、3件目の追加の依頼に至っている。
紹介された新規家主からの依頼については、受託につながる理由の一つが認知度の高さだ。
加盟するアパマンショップの知名度に加え、週に1回以上、地域の新聞2紙に広告を掲載し、PRしている。
加えて、同社のリーシングへの意識の高さや知識を受託営業時に伝えることも結果につながっている。新規の家主から相談が入った場合、同社の管理を説明するのに、受託営業スタッフだけでなく仲介営業スタッフも同席。物件が立地するエリアのニーズや相場、反響のある物件の情報を提供することで、信頼感を持たれるのと同時に、家主の物件に対する入居の期待が高まるという。
その際に使用する資料は、エリアの家賃相場動向と来店する入居希望者の傾向データだ。
リピート家主・新規家主ともに、依頼相談からの管理受託率は9割を超える。
賃貸管理部の佐藤久夫部長は「今後も同エリアで管理戸数拡大を目指す。将来的に受託営業を専任にしていくことも検討している」とコメントした。
つばめ不動産、空室解消で追加管理獲得
DM契機の依頼も3割
4768戸を管理するつばめ不動産(岡山市)では受託物件の空室解消により、家主から信頼を獲得。既存顧客からの追加受託につながっている。21年4月から22年3月の1年間で管理戸数を624戸増やした。対策のかいもあり解約は売買起因のみで13棟だ。
同社の商圏は岡山市。管理を受託する家主は377人で、地主系が67%、投資家系が33%だ。
全社員35人のうち、管理受託営業は新規オーナーからの管理受託や空室対策を行う1課の5人をメインに社員全員で取り組んでいる。6月末までは2人だったが部署を再編成した。社員ごとに業務を分けることでスタッフ間の関係に軋轢(あつれき)が生じたためだ。今では全社員でほかの業務も含め垣根なく取り組んでいる。
新規管理物件のうち、約5割を占めるのは既存顧客からの追加受託だ。次いで多いのは、ダイレクトメール(DM)をきっかけとした受託で3割近くを占める。残りは売買仲介にともなう管理受託や、グループ会社であるつばめガス(同)からの紹介、売買専門業者からの紹介などだ。
管理獲得の方針として、「入居率が上がれば結果的に管理戸数も増える」と桑原学社長は話す。
そのため、同社が力を入れるのも管理物件へのリーシングだ。同社に管理を委託される物件の平均築年数は33年。受託当初は入居率が50%、さらに低いと20%の物件もある。それを基本3カ月で満室にすることで家主の信頼を獲得し、追加での管理を任されている。追加依頼は最初にオーナーからの反響対応を行ったスタッフ宛てに来ることが多い。新規受託は同社商圏内であれば、ほとんど受けているという。入居率は現在、95.8%だ。
また、19年ごろから始めたDMも効果を上げている。反響率は1%。そのうちの約半数が管理につながっている。
DMでは同社の入居率や管理戸数、売上高や事業内容などを記載した上で、管理を任せてほしい旨を記載している。年に3回、岡山市中心部や主要駅のあるエリアに物件を所有する管理外オーナーに1回あたり約500通を送付している。
ただし、同社はしばらくは管理受託営業には注力しない予定だ。「管理戸数を増やすことよりも、入居率を上げることに専念する」(桑原社長)。23年3月末までに入居率97.5 %を目指す。
つばめ不動産
岡山市
桑原学社長(43)
(2022年9月5日5面に掲載)