トランクルームの開発や管理を行うストレージ王(千葉県市川市)が4月、東京証券取引所グロース市場に上場した。東京都内でのトランクルーム開発を推進し、機関投資家への一棟売却で売り上げを伸ばす。荒川滋郎社長に成長戦略を聞いた。
機関投資家への販売で成長
4月27日に東証グロースへ上場を果たしたストレージ王は、都内でのビル型トランクルーム開発で成長に拍車をかける。
直近の2022年1月期は売上高30億6972万円、経常利益1億5842万円、純利益1億2386万円。トランクルーム管理室数は22年1月時点で7710室と直近の3年間で室数を22%伸ばした。23年同月には8900室に届く見込みだ。
同社の強みは、100室以上ある大型トランクルームの開発だ。専用の建物で、空調を完備。カードキーによる入室などセキュリティーも高い点が人気だ。土地の仕入れ、開発、投資家への売却後の運営まで自社で一貫して行う。
建設の多くは可動式コンテナホテル事業などを行う、親会社のデベロップ(同)に発注する。
荒川滋郎社長は、「当社にはリピートの機関投資家がおり、売却先が確保されている。そのため金融機関からの信頼が厚い。安定的に供給できる強みがある」と話す。
トランクルームの市場規模は年々拡大しており、20年には約774億円の見込みとなっている(矢野経済研究調べ)。新型コロナウイルスの感染拡大の影響で在宅時間が増える中、「部屋を広く使いたい」という要望から利用者が増加していることもあり、「1000億円規模程度まで拡大するという予測結果もある。今後も市場は拡大していく」(荒川社長)とみる。
都心ビル型を企画
同社は08年、親会社であるデベロップが開発したコンテナボックスの管理運営会社として設立。15年には岡山市でトランクルーム運営を行っていたアイトランク山陽と合併し、事業を拡大していった。
コンテナボックスは、土地所有者から土地を借り受けて建設する。投資家にコンテナ部分を売却し管理を受託。駅から遠い土地や変形地でも、ロードサイドであれば需要が見込める。同社の管理物件のうち、65%がコンテナボックスで、NOI(営業純利益)は約5~6%ほどだ。
19年から東京23区の大型トランクルーム開発を開始。これまでに6棟、累計30億円を同一の機関投資家に売却している。その後リースバックし運営。NOIで約4%程度となっている。
商業施設に併設
同社が上場を目指したのは19年のこと。上場の目的の一つは、資金調達力の強化だ。物件の開発ペースを進めると同時に、自社でも長期的に物件を保有し、運営することを計画している。
トランクルームの新たな活用方法も提案する。4月には千葉県佐倉市にあるショッピングモールに出店。買い物客が日用品などのストック品を安いときに購入し、そのまま預ける活用方法を提案する。
トランクルームに宅配ロッカーを併設した事例もある。宅配ロッカーからの発送が可能となっており、物を保管するだけでなく、受け取りや配送も可能だ。「個人用の物流施設として利用していただいている」(荒川社長)と話し、トランクルームの潜在需要を掘り起こしていく。
23年1月期は、売上高32億5600万円、経常利益1億9000万円を目指す。
【ストレージ王 荒川 滋郎 社長】
1960年5月6日生まれ、東京都出身。東京大学経済学部を卒業後、旧新日本製鉄に入社。経理を担当したのちパルコへ。経営企画や秘書などを経験し、不動産開発に携わる。2000年ごろ、仙台パルコの再開発を担当した。その後は寺田倉庫でトランクルーム事業を行い、16年にデベロップに入社、19年から現職。
(2022年5月30日28面に掲載)