賃貸仲介の最前線を伝える「繁忙期速報」では、401社の回答から、成約動向を分析。伸びた会社の特徴や地方都市の大手に聞いたマーケットの動きについて紹介していく。
変異株の感染で来店5割減も
全体としては、成約件数は2021年の回答よりも、「増加」との回答が増え、「減少」の回答が減り、新型コロナウイルス以前に近づきつつある。とはいえ、繁忙期では、オミクロン株の感染による影響も少なからず出ている。
熊本市内を中心に年間1万630件の賃貸仲介を行うミリーヴグループの明和不動産(熊本市)は、1月~2月末の成約件数が21年同期比3%の微増となっている。学生の減少を一般や法人の伸びでカバーする。
打撃を受けているのが学生だ。コロナ前のピーク時に1日50~60組を案内していた学生の内見が今繁忙期では伸び悩んでいる。オンライン授業の実施状況などを様子見し、車で数時間かけて通学を検討する新入生もいるようだ。
同社では、4月末まで家賃の減額や初期費用の割引を実施する施策で一般客らの来店を促している。ただ、2月14日から3月6日まで熊本県内にまん延防止等重点措置(以下、まん防)が適応されてから客足が鈍化。繁忙期後半での巻き返しに期待する。
東京都港区を拠点に年間180件程度仲介を行うアイビーエステート(東京都港区)では前繁忙期と比べ、問い合わせ数、来店数ともに約5割減、成約件数に至っては約6割の大幅減となった。特に単身者の減少が激しく、5万円程度の低価格帯の物件への問い合わせが全くないという。新卒入社のために物件を探しに来る顧客はいるものの、それ以外の単身社会人からの反響がない。同社ではコロナの影響により、引っ越しを控えているとみる。また、その一方で地元に戻ることを理由に退去する入居者も増加しているという。
グラフ1の成約賃料動向で分かれたのは、「増加」がファミリー向けで87件あったのに対し、単身者は73件。「減少」は単身者向けが80件とファミリー向けの61件を上回った。一部で単身者向け物件の成約家賃が下落している。
成約が増加・大幅に増加と回答した「好調グループ(以下、好調G)」と減少・大幅に減少した「不調グループ(以下、不調G)」で比較して分析してみよう。「オンライン内見・仲介」の利用件数の増減を聞いたところ、好調Gでは「増加」が53.7%を占めた(グラフ3)。一方、不調Gでは34.4%にとどまり(グラフ4)、19.3ポイントの差が出た。
グラフ5のITサービスの導入率で比較していくと、「IT重要事項説明」は好調Gが74.2%に対し、不調Gが65.5%と8.7ポイント差。次いで導入率の高い「VRやリモートによる内見」では、好調Gが53%に対し、不調Gが46.7%で6.3ポイント差だった。「ビデオ通話システム」で好調Gが28.7%、不調Gが19.6%と9.1ポイント差と、内見から成約に至るまでの一連のIT導入率の違いが、成約件数の増減に影響を与えているようだ。
パノラマ動画で遠方顧客を獲得
沖縄県宮古島市を中心にグループで年間1708件を賃貸仲介する住宅情報センター(沖縄県宮古島市)は、1~2月で問合せが20~30%、成約件数が10%増えた。
1月9日~2月7日まで県内全域で適用されていたまん防の影響で来店や内見を自粛する顧客動向が目立った一方、オンライン上で物件を探す顧客が増えた。宮古島店の佐藤久夫店長は「県外の一般客からオンライン内見やIT重説を希望する声が今繁忙期は多くなっている。鍵渡しまで一度も来店せずに成約するケースもある」と語る。
(2022年3月7日4面・5面に掲載)