30年に8000億円規模目指す
運用額3兆円を誇る大手資産運用会社のケネディクス(東京都千代田区)は、不動産STO(セキュリティー・トークン・オファリング)に積極的に取り組む。
中尾彰宏執行役員は「2030年には、不動産STOの不動産資産規模が2兆5000億円、公募額が1兆2000億~1兆3000億円になるとシミュレーションしている。そのうち、当社がSTで運用する不動産の規模を総額8000億円以上にまで増やしていくのが目標」と話す。
同社は8月までに8件の不動産STOを実施。運用資産総額は約892億円、ST(セキュリティー・トークン)発行総額は407億円になった。投資対象の不動産は住宅、物流施設、ホテルだ。運用期間は10年前後が中心。予想分配金利回りは3.5~5%、投資単位は一口100万円で統一している。
物件の調達役としてのオリジネーターは、ケネディクスと親会社の三井住友ファイナンス&リース(同)が担い、アセットマネジメントはグループのケネディクス・インベストメント・パートナーズ(同)が担当する。
証券会社の大和証券(同)、野村證券(東京都中央区)、SBI証券(東京都港区)と組んできた。
ブロックチェーン基盤は、三菱UFJ信託銀行(東京都千代田区)の「Progmat(プログマ)」とSTを扱うコンソーシアムが提供する「ibet for Fin(アイベットフォーフィン)」を利用する。
中尾執行役員は「証券口座を使って行う不動産投資という感覚で投資する個人が増えている印象」と話す。個人投資家1人あたりの平均投資額は22年に700万円強だったのが、23年には投資家の裾野が広がり、400万円ほどに下がった。最低口数の100万円を投資する層と、1人で3000万円ほどの多額を投資する層など、投資家の資産背景が多様化しているようだ。
安定した不動産投資商品の増加に期待
ケネディクスは資産規模100億円を超えるような大型案件を不動産STOの対象とする。第8弾として、東京都中央区に立つ300億円規模のタワーマンション642戸をSTとし、総額134億円を投資家から調達した。