賃貸仲介繁忙期に間に合わせたいSNS集客~前編~

Amufi Est(アミュファイエスト), Amufi(アミュファイ), ヴィダックス, グッドルーム

その他|2021年11月10日

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 SNSの利用者増加に伴い、集客にSNSを活用するためにアカウントを開設している不動産会社も珍しくない。しかし、「つくったはいいものの反応が芳しくないので放置している」という声も上がる。そんな中、SNSを活発に利用し、驚くほどのフォロワー数を獲得している会社もある。本企画ではSNS集客に強みを持つ各社と、SNS活用コンサルティング会社を取材し、集客の秘訣(ひけつ)を聞いた。

 本特集ではSNSの中でも代表的かつ、多くの不動産会社が現在運用中もしくは、導入を検討しているであろう「インスタグラム」、「ツイッター」、「フェイスブック」、「ユーチューブ」、「TikTok(ティックトック)」の五つのSNSについて取り上げた。SNSごとに特徴やユーザー層が異なるため、それぞれの特色に合わせた投稿をする必要がある。また、SNSを利用する際には根拠のない「No.1」や「最高」、「希少性の高い」といった表現や成約した後も物件を掲載することで宅地建物取引業法など法律に抵触する可能性がある。十分に注意してもらいたい。

Amufi/Amufi Est、投稿は大学生に依頼 7割が1カ月で成約

 賃貸仲介を行うAmufi Est(アミュファイエスト:東京都新宿区)は、グループ会社で不動産賃貸ウェブサービス「RoomPa(ルムパ)」を運営するAmufi(アミュファイ:東京都江戸川区)のインスタグラムとTikTokのアカウントにて集客を行っている。これらのSNSから同社が顧客対応に利用している公式LINEへ誘導。多い時には月に約5000~6000人の流入がある。

 TikTokは2020年10月に開始し、現在フォロワー数は8万3000人。インスタグラムは21年5月に本格的にスタートし、現在フォロワー数は2万6000人だ。ともに集客とブランディングを目的に運営している。Amufiの江渕大輝共同代表は「TikTokはシステム上拡散性が最も高いツール。インスタグラムはTikTokと比べると投稿の内容より物件の魅力に依存する違いがある」と話す。

「RoomPa」TikTokの投稿画像

「RoomPa」TikTokの投稿

 同社がターゲットとするのは1人暮らし経験者で30代以下の単身者かカップルの社会人。次の住み替え先を探す際に物件へのこだわりが強かったり、憧れの物件がある顧客を想定する。

 TikTok、インスタグラムともに投稿は毎日1戸ずつ行っているが、特徴的なのは投稿をインターンの大学生など若手に任せていることだ。普段からSNSを利用している大学生の目線で物件のアピールポイントを紹介。一般ユーザーの投稿に寄せており、ビジネス色が出にくい。

 江渕共同代表は「最低限の部分が動画で写っているか。広告表示等の法律リスク上の観点からアドバイスをすることはあるがそれ以外は口を出さないようにしている。また1日に何本も投稿を上げるとSNSの仕組み上、おすすめに載りづらくなり拡散されにくくなるのでそれも避けている」(江渕共同代表)

 撮影は週に1回、1週間分をまとめて収録しており、1本つくるのに撮影と編集を含めて30分程度。パソコンソフトなどは使わず、スマートフォンを利用する。

 SNSでの反響を基にグループ会社のAmufi Estで仲介を行う形を取っている。

 SNS集客による費用対効果はポータルサイトの出稿料7000万円分にあたると同社ではみる。投稿物件の7割は投稿から平均1カ月ほどで決まるという。ただし、投稿物件に対しての反響ではなく、部屋探しをしているという問い合わせから成約するパターンが多い。「この物件じゃないと嫌だという人は少ない。RoomPaなら投稿の物件と似た物件を探し出すセンスを持っているという信頼をSNSを通して築けている」と説明する。

 動画の撮り方については、TikTokは動画が次から次へユーザーのタイムラインに流れるため、ちょっとでも間延びしていたり、見たくないところが長いようなものは興味を失われてすぐにスワイプされ消される。そのため動画の長さは30~40秒ほど、長くても1分以内に収めている。

 

ヴィダックス、「モテ部屋」で注目集め 管理増加にも効果

 都内を中心に賃貸管理仲介を行うヴィダックス(東京都渋谷区)は自社サイトのリニューアルとSNSの利用を開始したことで、自社サイトのPV(ページビュー)数が急増した。以前は1万PV程度だったのが、平均して10万~15万PVにまで伸びた。

 結果的に自社サイト経由での成約数に貢献。SNS活用前は全体の3割だった自社サイトの反響は6割にまで増えた。

 同社で活用するSNSはTikTokとインスタグラム。ともに20年8月ごろから投稿を開始。新型コロナウイルス下でSNSの投稿を自宅でもさまざまな物件を楽しんでもらい、同社を知るきっかけとファンづくりのためにスタートした。10月28日現在、TikTokのフォロワーは1万4000人、インスタグラムは1万2000人だ。

 20代の1人暮らしの女性をターゲットに「モテ部屋15秒内覧」と銘打ち、それぞれ15秒で物件を見られる内覧動画を投稿している。現在はより長い動画も投稿できるため、30秒の動画も増やしている。

 SNSのアカウントは当初、水越英夫社長1人で運営していた。反応が良いため、今では物件撮影の担当なども兼任で女性スタッフ4人でグループをつくり運営している。投稿は必ず週3回以上、フォロワーがSNSを見る時間帯は午後7時以降が多いため午後の7~8時に投稿している。

 実際に内見する際の目線でエントランスから始まり、玄関、水回り、収納、バルコニーと入室してからを順番に見せるようにしている。また、全体を回るように撮影したり、玄関側とバルコニー側の両方から室内を撮るようにするなど、常に撮り方は更新し、動画に入れる文字もかわいいフォントに変えたりと、より良い投稿を目指しているという。

 動画の閲覧数はTikTokもインスタグラムもさほど変わらず、多いと10万~20万ほどになる。写真投稿の場合には1万~2万程度だ。「投稿はハッシュタグで検索しないといけないが、動画はタイムラインで流れてくるので動画のほうが目にする機会が多いのではないか。「いいね」されることでどんどんタイムラインに流れる機会も増える。ここ最近はTikTokのほうが伸びている」(水越社長)

 また、SNSをきっかけにオーナーから管理や募集の依頼が増え、中には一棟物件を任されるほどまでになったケースもあるという。「SNSのフォロワーが増えることで、認知度が上がった。最近は物件の投稿をオーナーから依頼されるようになった」と水越社長は語る。

ヴィダックス 水越英夫社長の写真

ヴィダックス
東京都渋谷区
水越英夫社長(41)

 

 

グッドルーム、インスタグラムを活用 閑散期の集客にも効果

 リノベーション物件やデザイナーズ物件などを取り扱うポータルサイト「グッドルーム」の運営と賃貸仲介を行うグッドルーム(東京都渋谷区)ではSNSを利用することで、来店者数の3割がSNS経由での来店という結果が出た。

 グッドルームに掲載する中で同社が仲介する案件は2割ほどにあたる。SNSによる反響のうち半数がインスタグラムからだ。SNS経由の来店の30~50%が成約しているとメディアオペレーション事業部の佐々木結芽マネージャーは推測する。同社サイトは毎月50万~100万UU(ユニークユーザー)を得ているが、そのうち数万UUがインスタグラムからだという。

 同社ではインスタグラム、ツイッター、フェイスブックの活用を16年の夏ごろから始めた。フォロワー数はインスタグラムが16万9000人、ツイッターが約9600人、フェイスブックが約9万2500人だ。

 反響や成約よりもグッドルームのファン作りや既存ファンをより濃いファンにすることをメーンに運用している。

 中でも、注力しているのはインスタグラムだ。同社のメーンターゲットが20~30代の女性。取り扱い物件がデザイナーズ物件やリノベーション物件に特化している。そのため、写真がメーンのインスタグラムとの親和性が高い。

グッドルームのインスタグラムのアカウント画面

グッドルームのインスタグラムのアカウント。「フォローする」の下にあるのがハイライト

 SNSは3~4人体制で運用。1投稿あたりにかかる時間が10分程度で済むよう、フォントや言葉遣いなども含めてマニュアル化している。投稿に使う写真やテキストなどはすでにサイトで投稿されているものを流用しており、投稿のために別途撮影は行っていない。

 各SNSは毎日投稿を行っているが、インスタグラムのストーリーズでは朝昼晩と一日に3回物件の投稿を行っている。さらに一日1回、PV数獲得につながりやすい午後7~9時の時間帯に通常投稿であるフィードにて、特におすすめの物件の投稿を行っている。

 投稿の際に気を付けているのは営業的にならないことだ。SNSは基本的にコミュニケーションの場ということもあり、営業をすると引かれてしまう。そのため、「この物件はいいね」と共感を生むような投稿になるよう気を付けている。

 分析も重要だ。投稿ごとの「いいね」の数や保存数、リーチ数などを確認し、反響がいい時のパターンと反対に反響が悪い時のパターンのデータをまとめて、投稿内容の改善につなげている。

 同社ではSNSのメリットは繁忙期や閑散期に関係なく、安定的に集客できるところにあるとみる。閑散期でも常にユーザーに対する接触機会が作れるからだ。ただし、すぐに反響に繋がるわけではないので、直近の反響や売り上げが欲しい場合には向いておらず、長期的な視点で運用する必要性がある。

 「インスタグラムはユーザーとのコミュニケーションにより、フォロワーが伸びていく傾向にあるそうなので、今後は質問を募集するなどフォロワーとのコミュニケーションにも力を入れていきたい」と佐々木マネージャーはコメントした。

(11月8日4面・5面に掲載)

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