空き家を再生したシェアハウスの運営を行う巻組(宮城県石巻市)は11日、ブロックチェーンの仕組みを活用してコミュニティーを形成するDAO(ダオ:分散型自律組織)型シェアハウス「Roopt(ループト)神楽坂DAO」の開業1周年報告会を開催した。入居者がオーナー権を持つシェアハウスの新たな運用方法の成果として、運営や集客コストの削減を挙げた。
入居者運営参加でコスト減
Roopt 神楽坂DAOは、築50年超の空き家をシェアハウスとして再生した物件だ。母屋と居住棟の2棟で構成され、居室部は、全4部屋10床。共用部として、コワーキングスペースも完備する。
同シェアハウスへの入居もしくはRooptシリーズ全物件でのワーケーション利用を希望する人は、NFT(非代替性トークン)を購入することで、入居または利用の権利を得る。加えて、物件運営にも携わる、いわばオーナーとしての権利も取得する。1トークンは3万円で、1カ月単位で購入可能。
稼働率は開業以来8割程度で推移。入居者は、家賃の安さとコミュニティーを求め、起業を志す20代の学生が多い。DAO型ではないシェアハウスの運営をシミュレーションしたものと比較し、家賃収入などの売り上げは1.7倍。利益率は、想定の10倍近い37.5% となった。
利益率を高められた要因は、DAO型であることで生まれた入居者の自律性にあるとする。例えば、清掃や物件の広報および集客は入居者を中心に実施できている。巻組から与えられた予算を使い、入居者同士で定めた役割に報酬を支払うこともできるため、自律性を保つモチベーションが担保される。
一般的なシェアハウスでは、巻組のスタッフが年に30回程度巡回する必要があるところを、同物件では年3回の巡回で物件内の状況把握や対応が完了している。
「10人規模のシェアハウスの維持管理コストが月間15万~20万円程度なのに対し、同物件は10万~15万円程度に抑えられている」(渡邊享子社長)
(2023年10月23日21面に掲載)