住宅で省エネ性能の表示が努力義務化される。2024年4月以降に建築確認申請を行う建物の賃貸時に、省エネ性能を示す所定のラベルの表示が貸主に求められる。同制度が賃貸業界で周知されるためにポータル各社も動く。
広告の規定化が鍵か
国は「建築物省エネ法に基づく建築物の販売・賃貸時の省エネ性能表示制度」の省令・告示とガイドラインを9月に発表。新築物件の入居募集時には、貸主であるオーナーやサブリース会社が、物件の省エネ性能などを示す「省エネ性能ラベル」を表示することが努力義務化された。対象となるのは、24年4月以降に建築確認申請を行う新築建築物。対象物件が、再販売・再賃貸される場合も表示する必要がある。
同ラベルは、エネルギー消費性能、断熱性能、目安光熱費などを記載したもの。オーナーが新築時に設計士を通して発行し、入居募集を依頼する管理会社や仲介会社にラベルのデータを共有。ウェブや紙媒体などへの物件掲載時に併せて表示されるようにする。
制度普及のためには、同ラベルが部屋探しをする顧客の目に触れるよう、管理会社や仲介会社が正しく関わる必要がある。
資料作成し案内
入居募集時に利用されるポータルサイトの運営大手は、不動産会社に対し、同制度に関する情報発信に取り組む。
「SUUMO(スーモ)」を運営するリクルート(東京都千代田区)は、10月から社内勉強会を実施。不動産会社とコミュニケーションを取る関連部署のスタッフの制度理解を深めている。並行して、同制度の概略とQ&Aをコンパクトにまとめた資料を準備し、不動産会社への案内や疑問解消を行っている。
SUUMOリサーチセンター長の池本洋一氏は今後の同制度の普及について「今回の制度では、仲介会社に、省エネラベル表示や説明の義務が課せられなかった。その理由として、ラベルが正しくスムーズに仲介会社に伝達されるかが、現時点では見通せなかったことが考えられる。仲介会社の理解度と説明力を徐々に上げつつ、省エネ情報が途切れず消費者に届く見通しが立ってから義務化を求めるのが現実的な解なのだろう」と話す。
公取協の動き注視
「LIFULL HOME'S(ライフルホームズ)」を運営するLIFULL(同)は11月20日に、賃貸事業者向けの省エネ基準適合義務化と表示制度開始への対策セミナーをオンラインで開催する予定だ。
LIFULL HOME'S事業本部エグゼクティブ・アドバイザーの加藤哲哉氏は「公取協(不動産公正取引協議会)の広告表示規約で省エネ性能ラベルを必須項目にすることで、一気に省エネ性能表示の流れを加速させることができる。近い将来の表示必須化を期待したい」と話す。
アットホーム(東京都大田区)は運営する「不動産情報サイト アットホーム」にて、省エネ性能ラベルに記載のある項目や用語の不明点が解消されるような施策を検討する。松浦翼執行役員は「一般消費者から、省エネ性能の高い物件に関心が高まっていくのが理想的。そうなれば、仲介会社の対応が進んでいくと考えられる」と話す。
(河内)
(2023年11月13日20面に掲載)