京都府を主な商圏とする長栄(京都市)は、家主から受託する賃貸住宅の管理事業と、自社で保有する物件から得る家賃収入で、盤石な経営基盤を確立する。2023年3月期の売上高は、91億6200万円、経常利益は20億300万円で、売上高経常利益率は約22%の高さだ。自社物件を含む管理戸数は2万6000戸を超え、京都府、滋賀県を中心としつつ、中部、関東、九州地方にも事業範囲を広げる。長田修社長は「5年以内に、全国15都市に拠点を出すことを目指す」と話す。
利益率22%の高収益企業
家賃回収率は99.8%
長栄が自社で保有する物件から得る家賃収入は、23年3月期、51億5800万円に達し、売上高の56%を占めるに至った。今期も物件購入に積極的で、すでに6棟219戸を取得した。物件取得による家賃収入の伸長が利益率の押し上げにつながっている。
実際、事業部門別売り上げと経常利益(下のグラフ参照)を見ると、「不動産賃貸事業」の利益が、「不動産管理事業」の利益を大きく上回っている。
だが、長田社長が経営の基盤に置くのは、家主から得る賃貸管理料で利益を生み出す賃貸管理事業だ。自社保有物件は、管理事業を盤石にするための支えと捉える。
「管理契約は、家主側で起きる相続、売却など、解約のリスクを排除できない。自社物件を増やすことは、解約されることがない管理物件を増やすことと同じと考えている」(長田社長)
同社の賃貸管理事業のベースにあるのは「入居者ファースト」の基本方針だ。その精神は、管理業務専門拠点と、そこで業務に就くスタッフの数に現れる。所有物件を含めて2万戸の管理物件がある京都府には、19の管理拠点を置く。各拠点には平均7人のスタッフを配置し、24時間365日、管理物件で起きたトラブルに対し、30分以内に対応する体制を整える。
入居者向けサービスへの意識は、毎年、夏と冬の計2回実施する「長栄チャポン宝くじ」にも表れる。これはすべての入居者が無料で参加できるイベントで、各回、当選者400人に現金5万円を配る。そのほかにも、夏祭りとして花火大会の開催、水族館への無料招待など、年間で総額1億円をかけて、入居者向けのイベントを実施する。
徹底した入居者サービスにより得ているのは、99.8%に達する家賃回収率だ。長田社長は、入居率と家賃回収率を重要視する。管理物件の家賃収入を最大化し、確実なものとする業務の積み重ねが、長田流の真骨頂だ。
自社物件との二輪車経営
同社の歴史は、長田社長が1980年に創業して以来、賃貸管理業と共にある。入居者向け管理センター1号店を開設したのは90年。以降、管理戸数の伸びが加速し、2000年には1万戸、15年には2万戸を超えた。21年には東京証券取引所第二部(現・スタンダード市場)に株式上場を果たした