賃貸市場、コロナ禍の影響は?エリアルポ~宮崎編~

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企業|2021年11月24日

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 新型コロナウィルス下の賃貸マーケットの今を伝える「エリアルポ」。今回は宮崎県を紹介する。九州南東に位置する同県は、県庁所在地の宮崎市に次ぎ、都城市、延岡市の順に人口が多い。総務省が発表した「平成30年住宅・土地統計調査」では、空き家率が15.4%と過去最高を記録。コロナ下でどのような影響を受けたのかを取材した。

宮崎市内から車で30分の郊外、空室増

≪宮崎市の賃貸住宅事情≫
 宮崎市は9月1日現在の人口が40万1078人で、17年から1599人増えた。世帯数も17年から7085世帯増えて18万5558世帯。供給過多により、市内では郊外の賃貸住宅に空室が目立ち始めている。

カンエイ、入居率1%上昇 2.5ヵ月で満室に

 宮崎県全域で7876戸を管理するカンエイ(宮崎市)は、入居率が2019年の97.5%から現在98.5%に上昇し、コロナ下で入居率が1%伸長した。同社が管理するRC造の賃貸住宅を求める入居者が増えたことが理由の一つと同社は話す。

 管理物件は、グループの神崎建設工業(同)が建築した「ユーミーマンション」シリーズがほとんどだ。1棟あたり15~20戸。エレベーター付の5階建てRC造となる。台風に強いほか、在宅時間の長期化で騒音の問題が少ない構造も入居率の上昇に寄与した。コロナ下では住まいに快適さを求めて部屋探しを行う人が増えているようだ。

 仲介管理グループの藤原真人リーダーは「今後、病院や商業施設がある利便性の高い中心部と過疎化が進む郊外の物件では、賃貸ニーズが二極化するだろう。県内では、スルガ銀行の不正融資問題に加えて、賃貸市場の先行きが不透明なコロナ下で銀行の融資引き締めがより一層厳しくなった。特に、木造や軽量鉄骨造を郊外に建築するハウスメーカーの新築着工数が減っている印象だ」と語る。

 同社では、グループで年間20~25棟のユーミーマンションを建築し、コロナ下で着工数に変化はなかった。高い入居率を維持している実績が安定した賃貸経営を見込める判断材料となり、オーナーが銀行から融資を受け取ることができているようだ。「新築が満室になるまでの期間がコロナ下で平均2.5ヵ月と従来より2~3ヵ月ほど早まったほか、新築の問い合わせも増えている」(藤原リーダー)

 

大興不動産、木造の建売好調 20年に57棟売却

 宮崎市内で5230戸を管理する大興不動産(宮崎市)は、2019年から開始した木造の建売住宅が19年に30棟、20年には57棟が売却となり、コロナ下で騒音の心配がなく、快適な広さの戸建ての需要が伸びた。

 グループ会社で建築し、同社で販売する戸建ては、3~4LDKとなる。宮崎市のほか延岡市や日向市にも進出している。営業・販売スタッフを7人から9人に増員するなど、建売住宅はコロナ下を機に今後も同社で注力していく事業だ。ただ、21年は、木材の価格が高騰したウッドショックによって販売価格が値上がりした。11月時点で売却件数は20年を下回る40棟となっている。

 21年の収益物件の仲介件数に関しては、20年比で1.65倍となった。営業部の原田太樹部長は「今まで割高と感じていた売買価格が、適正な価格に戻ったことが要因。コロナの影響もあり積極的に売却を進め、適正な利回りでの売却価格設定となったため、融資も付きやすくなった」と語る。

 傾向としては、3~4棟を運営し、安定した賃貸経営ができているオーナーに銀行が融資をしているようだ。同社では、各銀行が融資をしやすい物件の構造を分析し、融資を受けて収益物件の購入を検討するオーナーへのアドバイスを行っている。

 部屋探しの顧客動向にも変化があった。20年の反響数が19年比5%増加となる一方で、飛び込み来店客が19年比50%程度に減少するなど、インターネット上で物件を探す顧客が増えている。

 また、快適さを住まいに求める人が増えたことで、家賃を5000円~1万円ほど上げて築浅の広い部屋を探す単身者の住み替えが目立った。一方で、洗面台がなく、室外に洗濯機置き場がある家賃3万円以下の1Kの需要が減っている。

 「単身者向けに関しては、コロナ前に即決だった家賃3万~3万5000円の物件が決まらなくなった。その代わり、設備の整った家賃4万円超の物件が人気になっている」(原田部長)

 

アンティ、ウッドショックで新築家賃4000円上昇

 宮崎市内で1156戸を管理するアンティ(宮崎市)の弓削有輝社長は「数年前からハウスメーカーの建築が著しく増加し、宮崎市内は賃貸住宅が供給過多となっている。利便性の高い市内中心部は賃貸住宅の需要が高いが、中心部から車で20~30分離れた場所の賃貸住宅に空室が目立ち始めている」と語る。

 同社の管理物件は、コロナ下で家賃が平均4000円上昇した。ウッドショックにより建築費が値上がりしたことも家賃上昇の一因だと考えられる。

 売買に関しては、建築費が上がり、市内の物件価格も値上がりしていることから、売り手側が販売価格を強気で設定。そのため、買い手側が求める手ごろな価格帯の物件が市場に少なく、売買仲介の取引件数がコロナ前に比べて同社では2割程度減っている状況だという。

アンティ 弓削有輝社長の写真

アンティ
宮崎市
弓削有輝社長(37)

 

 

≪都城市の賃貸住宅事情≫
 都城市は9月1日現在の人口が15万9797人で、17年から3187人減っている。一方で、世帯数は7万1395世帯と17年から951世帯増えた。戸建ての賃貸住宅が多いエリアだ。

新興不動産、法人の引っ越し 宣言中避け分散

 都城市を中心に7000戸を管理する新興不動産(宮崎県都城市)は、入居率(非開示)が例年並みを推移し、コロナ下で管理物件に著しい変化がなかった。

 ただ、これまで1~3月、9月に集中していた管理物件の退去と新規入居がコロナ下で緊急事態宣言を避けたタイミングで動いたことで、引っ越しの時期が分散した。年間の賃貸仲介数のうち2割を法人が占めるが、仲介件数の増減は見られなかった。

 部屋探しの顧客が求める物件へのニーズの変化もあまりなかったという。もともと供給が少ない3LDKのファミリー向けは、入居者募集を行うと即成約する状況がコロナ前から続いている。また一部ではあるが、広さを求めて45㎡の1LDKを探す単身者やDINKSの姿はあったようだ。

 開発の動きとしては、鹿児島方面にアクセスできる高速道路が開通しており、病院や企業の工場が並ぶ都城市太郎坊町での賃貸住宅の需要が高まっているという。賃貸部の森和也部長は「都城市は宮崎市と鹿児島県の間に位置する。利便性の良さから支店を置く企業も多い」と語る。

 ただ、市内では新築の供給が進み、築浅の物件でもリーシングが難しい状況だ。同社でも築15年以上の物件は入居が決まらず、家賃設定の見直しや、1か月のフリーレントを付けるケースがある。そのため、家賃アップは図れないが、無料のネットや、ケーブルテレビなどの設備面を拡充しながら物件の競争力を高める対策を講じている。

 「コロナ下では無料ネットの回線速度に関する入居者からのクレームがあるなど、在宅時間の増加で賃貸住宅の設備に対して質を求める人も出始めている」(森部長)

 

≪延岡市の賃貸住宅事情≫
 延岡市は9月1日現在の人口が11万6962人で、17年から5485人減っている。世帯数も355世帯減り5万1542世帯となっている。旭化成の工場があり法人需要も多い。

大興不動産延岡、結婚理由の移動 6割程度に減少

 延岡市を中心に1250戸を管理する大興不動産延岡(宮崎県延岡市)では、結婚に伴う引っ越しが20年は10県にとどまり、19年の6割程度に減少した。一方で、高速道路や市役所の工事にかかわる企業の契約が増えたことで、法人の契約が19年比1.7倍の63件に増加。ライフステージの変化で住み替える層がコロナ下での引っ越しを避けている様子と、後期の予定を伸ばすことができない企業側の事情がうかがえる結果となった。

 管理物件はコロナ前と変わらず、入居率90%前後で推移している。20年の夏ごろに、住居確保給付金の申請に必要な提出書類の発行を求める収入減少となった入居者に対応した事例はあった。また、テナント店舗や事務所の入居者からは、家賃の値下げ交渉もあったという。

 学生向けの管理物件に関しては、コロナ前はほぼ満室が続いていたが、現在33戸中12戸が空室の物件もあるという。萩森洋一郎社長は「学生の部屋探しが減っている。特に、駐車場のない物件に空室が目立つようになってきた」と語る。

 同社では、延岡市の賃貸住宅を供給過多とみる。だが、賃貸を受託する物件は、ここ数年間増加していないという。「新築を建てたハウスメーカーらがグループで管理を受託するようになった。管理をメーンに行う小規模の不動産会社が戦々恐々とする中で、不動産会社が淘汰(とうた)されていくだろう」(萩森社長)

大興不動産延岡 萩森洋一郎社長の写真

大興不動産延岡
宮崎県延岡市
萩森洋一郎社長(70)

 

 

都内からUターン、60代夫婦成約

 宮崎県に賃貸住宅26戸を所有するほか、ホテル、ゴルフ場、遊技場、飲食店を経営する峰山勝美オーナー(宮崎市)は、宮崎市内に建つリノベーションした築31年の賃貸マンションの1室が、入居募集開始から2日後に成約となった。入居者は60代の夫婦で、都内に勤務していた会社役員の夫がコロナ下で出社が減ったのを機に、夫の地元である宮崎にUターンを決意。早期退職で引っ越してきた。

 成約となった賃貸マンション「ミネックス川原」は、JR日豊本線「宮崎」駅から徒歩16分の場所に立地。地上10階建てSRC造だ。住居と事務所貸しで、全36戸中24戸が住居。最上階の1室をリノベーションした。

 峰山オーナーが所有する物件では、コロナを理由に引っ越してきた案件は同事例のみ。管理物件の入居者や入居率に大きな変化は見られなかった。

 今後の宮崎市内の賃貸住宅市況について峰山オーナーは「コロナ下で場所を問わない働き方を求める人や、テレワークを導入する企業が増えた。自然豊かで過ごしやすい気候の宮崎県に首都圏から住み替える動きが活発になるだそう」と語る。

峰山勝美オーナーの写真

峰山勝美オーナー(71)
宮崎市

 

(11月22日7面に掲載)

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