Q.変更契約は管理受託もサブリースも電話可?
A.電話で行うことが可能です
2023年度の試験では、管理受託契約変更契約の重要事項説明(以下、重説)を電話で行う場合に限定した問題が問3に出題されました。これは今年度の試験における改正点なので、予想どおりの出題でした。
変更契約は電話可 新規は適用されず
管理受託契約の重説は、対面かITの活用による説明が望ましいですが、変更契約に関しては、一定の要件を備えることで、電話による説明ができます。あくまでも変更契約に関してなので、新規に管理受託契約を締結する場合には適用されません。
管理受託契約の変更における重説を電話で行う場合は次の要件をすべて備える必要があります。
※電話による重説の要件
①事前に管理受託契約変更契約の重要事項説明書などを送付し、その送付から一定期間後に説明を実施するなどして、賃貸人が変更契約締結の判断を行うまでに十分な時間を取ること
②賃貸人から管理事業者に対し、電話により管理受託契約変更契約の重説を行ってほしいとの依頼があること
③賃貸人が、管理受託契約変更契約の重要事項説明書などを確認しながら説明を受けることができる状態にあることについて、管理事業者が重説を開始する前に確認していること
④賃貸人が、電話による説明をもって当該管理受託契約変更契約の重説の内容を理解したことについて、管理事業者が重説を行った後に確認していること
IT重説の希望 賃貸人の意思尊重
賃貸人から管理事業者に対し、電話により重説を行ってほしいとの依頼があった場合や、賃貸人から、対面かITの活用による説明を希望する旨の申し出があったときは、当該方法により説明しなければなりません。また、前述した変更契約における電話での重説は、管理受託契約に限らず、サブリース事業者が行う特定賃貸借契約の場合も可能です。
音声のみの情報 内容理解を不安視
現在52歳の筆者は、電話といえば音声で双方向のやりとりができるものをすぐにイメージします。しかし、スマートフォンに慣れた若い人にとって電話すなわち音声だけですぐにイメージが湧くのでしょうか。
多数存在するSNSの機能を使って映像と音声を活用して会話するのは普通になり、それを電話機を利用して行うので、ITと電話の境目は微妙になりつつあります。
しかし、法令には、IT重説についての詳細な要件を定めた規定はありますが、電話についての要件を定めた規定は存在しません。
重説の方法は3種 メールは使用不可
国土交通省は、実務における賃貸住宅管理業法の解釈の指針として、「賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律の解釈・運用の考え方」と「賃貸住宅管理業法FAQ集」を公表しています。
前者には、変更契約における「電話」による重説の要件が明記されています。
後者にも同様のことが記載されているのですが、「相手方からの承諾がある場合、電話やメールによる手段を用いて、管理受託契約の重要事項説明を行うことは可能ですか」という問いに対して、「新規契約の重要事項説明については、電話やメールによる手段での重要事項説明は認められません。ただし」として「電話」による説明が可能となる要件を定めています。
わかりにくい表現ですが、以上をまとめると、「対面」「IT」「電話」「メール」「その他」という分類になり、対面・IT・電話の三つの方法だけが認められるとなるのでしょう。
【問題】管理受託契約変更契約の重要事項説明を電話で行う場合に関する次の記述のうち、正しいものはいくつあるか。(2023年度問3)
ア 賃貸人から賃貸住宅管理事業者に対し、電話による方法で管理受託契約変更契約の重要事項説明を行ってほしいとの依頼がなければ行うことはできない。
イ 賃貸人から電話による方法で重要事項説明を行ってほしいとの依頼があった場合でも、後から対面による説明を希望する旨の申し出があった場合は、対面で行わなければならない。
ウ 賃貸人が、管理受託契約変更契約の重要事項説明書を確認しながら説明を受けることができる状態にあることについて、重要事項説明を開始する前に賃貸住宅管理業者が確認することが必要である。
エ 賃貸人が、電話による説明をもって管理受託契約変更契約の重要事項説明の内容を理解したことについて、賃貸住宅管理事業者が重要事項説明を行った後に確認することが必要である。
1. 一つ
2. 二つ
3. 三つ
4. 四つ
正解:4
すべての選択肢が正しい内容なので4が正解です。
【著者プロフィール】
Kenビジネススクール
田中嵩二社長
中央大学大学院法学研究科博士前期課程修了。2004年に不動産取引の専門教育機関としてKenビジネススクール設立。同社は、国土交通大臣の登録を受け「登録講習」「登録実務講習」を実施している。現在は、オールアバウト宅建試験専門ガイドとしても活躍中。「これで合格宅建士・賃管士シリーズ」(Ken不動産研究)など多くの書籍を執筆。
(2024年1月29日17面に掲載)