ファイバーゲート、再エネ 各住戸に供給【差別化戦略】

ファイバーゲート

商品|2024年02月26日

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 東証プライムに上場し、インターネット通信事業を中心に127億円(2023年6月期)を売り上げるファイバーゲート(北海道札幌市)。主軸の集合住宅向けネットサービスの売上高は96億円、サービス提供世帯数は累計約54万戸となっている。このネットインフラを活用した新事業となるのが、再生可能エネルギー(再エネ)事業だ。太陽光発電で得た電力を、割安で入居者に提供するモデルを構築。IoT機器も完備して入居者メリットを打ち出すことで、新たな付加価値を賃貸住宅に提供する。

入居者の電気代 割安に

川口市に物件取得 運用モデルを構築

―現在取り組まれている再エネ事業の概要を教えてください。

 賃貸住宅の屋上に太陽光パネルを設置し、発電した電気を入居者に提供することで月々の電気料金を割安にする取り組みです。2022年3月、埼玉県川口市に賃貸マンションを建設し、当社グループで保有しながら実験棟として運営を行ってきました。ネット設備のほか、IoT機器、玄関での顔認証や防犯カメラなどを完備し、電気料金込みで賃貸しています。

埼玉県川口市マンション外観写真

埼玉県川口市に実験棟として建設した全12戸のマンション。

マンション屋上に設置した太陽光発電パネル写真

マンション屋上に設置した太陽光発電パネル。

共用部の蓄電池写真

共用部の蓄電池に発電した電気を貯め、夜間に使用する

 入居中の全12世帯を対象に、日中と夜間、単身者とファミリーなどの属性に分けて電気使用量のデータを取ってきました。利用者の基本電気料金は、200kWhまでが月額2200円、超過分は1kWhあたり40.7円(時期により変動、いずれも税込み)に設定したところ、12世帯のうち半数程度が基本料金内の使用量に収まりました。

 利用者は専用アプリで日々の電気使用量を確認できるので、基本料金内に収めようという意識も持ちやすくなるでしょう。近隣相場より家賃を1万円高く設定していますが、設備が充実していることもあり、満室を維持できています。

専用アプリ画面

専用アプリにより使用電力を可視化

―設置した太陽光パネルと蓄電池だけで電力を賄っているのでしょうか。

 基本的に太陽光パネルで発電した電気を各戸で使用する電力に充て、余った電気を蓄電池に貯めて、夜間は蓄電池から電気を賄います。共用部に蓄電池を複数台設置し、集合住宅内の電力をすべて負荷するシステムを構築しました。当社が低圧電力を一括契約しており、普段は太陽光発電で賄いながら、足りなくなった分を電力会社から調達するというハイブリッド形式の運用です。

 入居者には「FGでんき」のサービス名称で電気を提供しています。当社で供給電力のコントロールを行い、各戸にスマートメーターを設置して使用分の料金をいただく仕組みです。

 このモデルでの運用を、今後、ほかの集合住宅にも広げていこうと考えています。ただ、発電量が少ない冬場に大量の電気消費があると負担が増えるため、基本料金分を130kWhまでにするなどの対策が必要なこともわかりました。なるべくクリーンな資源を利用して電気料金を下げるのが目的です。

料金体系イメージ図画像

事業間にシナジー 顧客への提案加速

―この事業モデルをどのように展開していきますか。

 当社では「すべての施設にWi‐Fiを」の方針を掲げ、集合住宅のほか、公共施設や商業施設、ホテルなどにWi‐Fi環境を提供してきました。一方、再エネ事業では、ネットインフラと同じ提供先に太陽光パネルや蓄電池の導入提案ができ、発電した電力の制御にはネットインフラが必要になるなど、事業間の高い相乗効果が見込めます。

 今後は、住宅や各種施設へのネットインフラの提供を強化しつつ、太陽光発電システムの提案も加速していきます。

 東京都では現在、太陽光パネルと架台、蓄電池に対しての補助金が出ています。設備の設置台数にもよりますが、最大設備代金の半額以上が補助されます。27年に申し込み、28年に竣工する物件まで対象になるので、当面は都内の新築物件は川口市と同様のモデルでサービスを提供していきます。

―周辺相場より家賃を高く設定できるというのも利回りの面でメリットが大きいですね。

 電気の基本料金が安いこともあって、入居者からは賃料に対する違和感は持たれていないようです。退去した方も、おそらく次の物件では電気代が高いと感じているのではないでしょうか。

 川口市の物件では、賃料が相場より約1万円高いことから、12世帯で年間144万円の収入アップが実現できています。オーナーには、今回のような設備投資による差別化をしたほうが良いですよと積極的に提案していきます。

インターネットを活用 物件に新たな付加価値

―ネット単体ではなく、IoTや電気とセットで提案をしているのですね。

 営業提案の現場では、これまでの「インターネット設備を導入しませんか」という話し方から、「IoTや再エネ設備を導入するためにネットが必要です」という内容に変わっています。ネット単体では競合他社との値引き合戦になって利益が出ず、共倒れになってしまう。ネットは、あくまでほかの設備を動かすために必要なインフラです。これまで構築してきたネットインフラを生かした価値提供として、当社では再エネに注目しました。

赤外線対応の家電操作画像

赤外線対応の家電も操作できる

各種IoT機器画面

各種IoT機器も完備している。左からスマートロック、顔認証オートロック、居室内センサー

―既存物件に太陽光発電システムを導入する場合、工事期間はどのくらいかかるのでしょうか。

 建物の規模により工事期間はさまざまですが、現地調査から申し込み、工事完了まで通常1カ月程度かかります。既存物件では、屋根の防水加工をやり直さなければならない場合もありますが、東京都では、その代金についても別途補助金があります。

―再エネ事業への取り組みは、環境配慮の面で重要になりそうです。

 今後、ペロブスカイトのような軽量・薄型の太陽光パネルが普及すれば屋根や壁面への設置が容易になるため、既存物件でも導入のハードルが下がるでしょう。オーナーの関心の高さも感じています。まずは東京都を足掛かりに全国展開を目指します。

ファイバーゲート会社概要

金子 尚 氏画像

常務取締役
ビジネスユース営業本部長
事業開発部長
金子 尚 氏

 

 

(2024年2月26日10面に掲載)

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