大規模修繕の共済が実現

自由民主党賃貸住宅対策議員連盟, 全国賃貸住宅修繕共済協同組合, 全国賃貸管理ビジネス協会, 公益財団法人日本賃貸住宅管理協会, 公益社団法人全国賃貸住宅経営者協会連合会, 国土交通省, 渡邊浩滋総合事務所

その他|2021年12月08日

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 賃貸住宅の大規模修繕費用を経費として計上できるようになる。業界3団体が協力し、共済商品として提供。家主が修繕費用を計画的に準備できるような仕組みとして普及を目指す。適切な修繕を長期的な目線で行うことで賃貸住宅の資産価値の維持につながる効果も見込める。

掛け金は損金算入可能

業界3団体が協力

 賃貸住宅の大規模修繕に関する共済商品が実現する。11月16日に、東京都千代田区の自由民主党本部で行われた自由民主党賃貸住宅対策議員連盟(以下、ちんたい議連)の臨時総会において、賃貸住宅修繕費にかかる共済制度の認可が下りたと発表された。

 この共済制度により、賃貸住宅の修繕費を共済の掛け金として全額損金算入できるようになる。分譲マンションの長期修繕計画と同様のスキームになる。国土交通省によると、同省管轄で今回のような賃貸住宅修繕の共済は、全国的な規模のものとしては初だという。

 共済を提供するのは全国賃貸住宅修繕共済協同組合(東京都中央区)。全国賃貸管理ビジネス協会(同)、公益財団法人日本賃貸住宅管理協会(東京都千代田区)、公益社団法人全国賃貸住宅経営者協会連合会の賃貸業界3団体が協力。3団体の会員経由で、オーナーに同共済制度を紹介していく。

 開始当初は、賃貸住宅の修繕で共済金が払われるのは、屋根(屋上)、外壁のみが対象だ。ちんたい議連では、同共済の対象を、給排水管、専有部の空調設備や水回りなどまで拡充を求めていく。

 現在、共済の具体的な内容は、3団体で検討中。詳細が決まり次第、会員に告知をし、組合員を募集していく予定だ。提供の時期も未定だという。

課題は修繕計画か

 自身も家主である渡邊浩滋総合事務所(同)の渡邊浩磁税理士は「今回の共済は、毎月費用を積み立てて大規模改修に充てる仕組みに近い。経費計上できることはオーナーにとってもメリットが大きい」と話す。

 一方、課題もあるのではないかと言う。その一つが長期修繕計画だ。「分譲マンションの長期修繕計画と同様のスキームを使うのであれば、物件ごとに長期修繕計画を立てる必要があると考えられるが、長期修繕計画を立てている家主はほぼいない。自分で計画を作ることは現実的ではないため、事業者に依頼する必要がある。注意したいのは、修繕計画の費用を安く提示し、自社の工事として囲い込もうとする事業者もいることだ。実際のシミュレーション上の工事費用が適切なのかを家主自身が判断するのは難しい。また、将来の建築資材の高騰を考慮し、工事費用を高く見積もる事業者もいる。長期修繕計画と共済金額の掛け金がどう影響するかがカギになる」(渡邊税理士)

 修繕計画の立案者にホームインスペクターや建物診断士などの有資格者を置くなどの条件が付くかもしれないと渡邊税理士は推測する。

 これまでおろそかにされていた修繕を計画的に行いやすい制度ができれば、入居者も安心して住め、オーナーの資産維持にも貢献するだろう。

「資金的余裕がない」28%

 国土交通省が16年に実施した個人家主への調査では、計画的に修繕を実施している家主は2割ほどだった。「修繕・大規模修繕を実施していない理由」で最も多かったのは「資金的余裕がない」が28%、次いで「必要性が理解できない」が23.1%、「管理事業者からの提案がない」が20.7%となった。

 

経費化は個人家主に朗報

 修繕の積み立ては、家主にとってハードルが高いのが現状だ。法人であれば、「経営セーフティ共済」制度を活用して掛け金を経費計上でき、解約返戻金を修繕費用に使うこともできる。だが、個人事業主の家主は経費の対象にならない。貯蓄するか、自分で運用して増やすかしかない。私が知る限り、大規模修繕費用を積み立てているオーナーはまれ。今回のような共済制度で毎月積み立てられ、税金がかからないのは家主にとっても朗報だ。借り入れに頼らず修繕費用を捻出できるようになるだろう。

渡邊浩滋総合事務所 渡邊浩滋税理士の写真

渡邊浩滋総合事務所
東京都千代田区
渡邊浩滋税理士(43)

 

(2021年12月6日24面に掲載)

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