シェアオフィス事業を強みに業績を伸ばすのがWOOC(ウォーク:東京都品川区)だ。同事業開始から約10年で拠点数を204カ所にまで拡大する。阪谷泰之社長に強みと今後の戦略を聞いた。
売上高60億円、年10%成長継続
「仕事を自由に」 住宅街出店に強み
―売上高、管理戸数ともに右肩上がりですね。
おかげさまで、2023年度の売り上げは59億6400万円。19年度が32億2200万円ですので、4年で1.85倍になりました。住宅、オフィスを含めた管理物件数は24年3月末時点で6045戸。そのうち賃貸住宅の管理は2000戸程度です。
―中でもオフィス運営事業が好調だとか。
当社の事業を大きく分けると、オフィス運営、リフォーム、賃貸住宅管理の三つとなっています。事業構成比としては、70%程度がオフィス運営、約17%がリフォーム、約13%が賃貸住宅の管理です。今一番伸びているのがオフィス運営事業で、コワーキングオフィスの「BIZcomfort(ビズコンフォート)」とレンタルオフィスの「BIZcircle(ビズサークル)」の二つのブランドで展開し、拠点数は計204拠点となりました。BIZcomfortは全国146カ所で、利用会員数は1万5000人、BIZcircleは全国58カ所で会員企業は4000社程度となっています。
―より注力しているブランドはどちらですか。
BIZcomfortです。当社によるオフィス事業の理念として「仕事を自由にする」という考えがあります。利用者が自由に仕事をするためには、どこでも使えるということが一つのポイントです。そのため、生活動線の中にあることを大事にしています。そのため、ビジネスエリアと住宅街のどちらにも出店します。当社は特にベッドタウンへの出店に強みがあります。
―ベッドタウンへのコワーキング出店はニーズが少ないというリスクもあります。
BIZcomfortは個人によるリモートワークのニーズに合わせ、ソロワークがしやすい仕様にしています。あえて会議室を造らないなど、コストを抑えることで利用料を安価に設定できます。1都3県(東京、神奈川、埼玉、千葉)であれば駅から徒歩10分圏内の物件で企画しています。
賃料収入20%増 新たなニーズ対応
―特徴的な物件企画や新たなニーズはあるのでしょうか。
最近だと、新築の物件の相談で住宅とオフィスを掛け合わせています。これまでに3棟を手がけています。オーナーから新築の企画が上がったところで相談を頂きました。新型コロナウイルス禍でテレワークが一般化したものの、居室内にワークスペースがない課題があります。住宅は1階部分の賃料が下がりやすいということもあり、3棟とも1階部分をコワーキングオフィスとしました。ある物件では、すべてを住宅とした場合の賃料想定より、オーナーの年間賃料収入が約20%多くなりました。
―そのほか、オフィスと掛け合わせた事例はありますか。
ホテル内にBIZcomfortを造りました。ホテルの部屋でも作業できるので、利用者は多くないのではないかと思いましたが、予想以上の利用者数となっています。ホテルの滞在客が、会議室を来客とのミーティングに使ったりすることが多いようです。
―17年12月にコスモスイニシアと資本提携をしました。
理由は与信力の強化です。シェアオフィス事業を推進していく中で、床面積の大きなものを造るためには、ファンドなどの大手法人が所有するビルの中にシェアオフィスを造ることもあります。オーナーの審査に通りやすくするため、大手のコスモスイニシアの力を借りました。コスモスイニシアからは年間2件ほどのシェアオフィスの依頼もあり、いい関係を築いています。
―今後も積極出店を進めていくのでしょうか。
はい。現在は年間20カ所ほど新規出店しています。テレワークが進んでいく中で、フレキシブルな働き方に変化しています。拠点数が少ないとそれを支えることができなくなります。北は北海道札幌市、西は兵庫県神戸市まで出店しています。地方出店をさらに進めていきます。
(柴田)
(2024年6月17日20面に掲載)