大変だが業務効率化取り組む価値有り

【連載】現場レポート 賃貸業界のキャリア形成 VOL.87

賃貸経営|2019年07月22日

 不動産テックの導入が進んでいる。

 なにから始めればいいのか。みんなを見てからやればいいのか。中には、「あんなもの役に立たない」という人も。今回は新規事業推進の考え方について論じたい。

イノベーションが生まれないと、嘆く前に

 立教大学の田中道昭教授がちょっと面白いことを言っている。「世の中の新規事業担当者の7割は会社から指名された既存事業のエース」だと。そう、新しいことを始めなさいと挑戦した人は、大概、新しいことなどやったことがないものである。「あと数年、言われたことをこれまでどおりやっておけば出世できるのに、やれIT重説だ、電子契約だと面倒だな」と思うのは当然だ。新しいことなど「やったことがない」のである。

必ず、「修羅場」に遭遇する

 そして、田中教授によると「新規事業は、当初思い描いていたようなキラキラとした高台にあるわけではなく、ド沼地に陥る。お金がない。人がいない。現場は反対する。慣れない。上司のサポートがない。お前のせいだといわれる。今までの仕事の流れでやっておけばつつがなく進む既存の枠組みが懐かしくなり、そもそも自信もなくなる」というわけである。

 そして「生産性改革リーダーになんかならなきゃよかった」「IoT空室対策なんかやめちゃおう」「相続セミナーは今回で終わらせよう」と、「新しいことをやるのは損」となる。時には社内が敵ばかりとなっていくという話だ。とても興味深い。

「VRは必要ない」を調べた銀行員

 とある不動産会社での話である。若いジュニアの社長がVR(バーチャルリアリティ)とスマート内覧の仕組みを導入した。銀行から出向していた監査役は、「若いジュニアが無駄遣いしている。会長に言いつけよう」と調査を始める。5~6月にチームを組み、各店舗に客として回った。暇なんだなあ。で、「〇店舗中、△店舗はこんなのいらないと言っています」と取締役会でプレゼン。「会長、あんたの息子はまだまだだ」というところだろうか。

 「活用していない店舗」にこそ課題があり、現場浸透を進めるべき話。そもそも、「繁忙期に、まだ入居者が住んでいて中が見られないからVR」であり、「繁忙期は、内覧に同行する人の確保もできないから、スマート内覧」である。「閑散期に調べてどうすんのか」という話。さすが元銀行員。そもそも、新規事業などしたことがなく、コスト削減して利益を出すのが役回りだから、笑って聞いてあげればよい。

 変革を否定するのは簡単。現場で実装させるのは、ホントに大変。別にジュニアが悪いわけではないし、銀行からの天下りが悪いわけではない。みな、まじめに仕事をしている。新しい仕事の仕方を浸透するのは、かなり大変であり、それを否定するのは簡単だ。

「一気通貫」という幻想のキーワード

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