イエリスタホールディングス(以下、イエリスタHD:神奈川県横浜市)は、神奈川県内で展開する二つの不動産・建設グループの成長を目指す目的で設立され、4月から本格始動した。2グループの商圏を拡大し、互いの事業の強みを生かしていく。
2グループ、神奈川で商圏拡大
相乗効果に期待
イエリスタHDは、ウスイホームホールディングス(以下、ウスイホームG:神奈川県横須賀市)とハートグループホールディングス(以下、ハートG:神奈川県茅ケ崎市)の持ち株会社だ。二つのグループ企業の統括・経営管理を担う。顧客の相互送客や事業補完による成長に加え、新規出店で神奈川県内でのシェア拡大を狙う。
イエリスタHDは、国内の独立系ファンド、エンデバー・ユナイテッド(東京都千代田区)が管理・運営するエンデバー・ユナイテッド2号投資事業有限責任組合が出資する。
ウスイホームGの2024年3月期の売り上げは140億円。戸建て分譲、売買・賃貸を含む仲介、建築・リフォーム、賃貸管理を行う。商圏は神奈川県横須賀市を拠点として、県内南部を中心に38拠点を展開。総合不動産会社として、開発から売買、賃貸、生活支援まで幅広く一気通貫で対応できる体制を敷く。
ハートGの24年3月期売上高は60億円程度。戸建て住宅や土地の分譲、注文住宅の建築、売買仲介や管理などの事業を展開。神奈川・湘南エリアにおける住宅販売や建築、仲介にワンストップで対応できる点が強みだ。
エンデバー・ユナイテッドは22年3月に、ウスイホームGの株式を譲受。22年にはハートGの創業者から事業承継の相談を受け、ウスイホームGとの事業シナジーを生み出せるか、エンデバー・ユナイテッドとウスイホームGで協議を続けてきた。
2グループが協働することで相乗効果を生み出す可能性が見え、条件が整ったことから、エンデバー・ユナイテッドは23年9月にハートGの株式を譲り受けた。
24年4月には、2グループに出資する特別目的会社の社名をイエリスタHDに変更。2グループ体制での事業成長に向けて動き出した。
横浜市北部へ出店
イエリスタHDは、ミッションとして「人と街をつなぎ、住まいの『和』をつくる」を掲げる。「和」という言葉は2グループと同HDとの関係性を示すキーワードにもなっている。
イエリスタHDのロゴ
ウスイホームGのトップも兼務するイエリスタHDの木部浩一社長は「イエリスタHDが目指すのは、融合ではなく、融和。それぞれのグループがこれまで築いてきた歴史やポリシーは大切にする。そのうえで、選択と集中により、二つのグループを進化させていく」と語る。
その進化の一つが、エリアの拡大だ。ウスイホームGは、神奈川県の東側、ハートGは県央や西側で商圏を広げていく。
ウスイホームGは、事業拡大の余地が大きい横浜市北部への出店準備を進める。
「横浜市港北区の人口は約36万4000人。横須賀市の人口は約37万1000人と同じような規模になりつつある。横須賀市内には7店舗あるが、港北区はゼロ。年内に港北区に出店し、様子を見ながら増やしていきたいと考えている」(木部社長)
ハートGでは海老名市への出店を計画する。海老名市については、交通インフラが整備され、鉄道の東京への乗り入れも便利になっている。
平地が多く、住宅が立っていない土地が残っているところから、開発が進んでいくと考えられるという。
高齢者に照準
もう一つの進化は相乗効果だ。ハートGが建築した住宅の施主のフォローや住宅修繕を、カスタマーサービス(CS)やリフォームの人員を配置するウスイホームGが行うことも検討する。
建築においては、ウスイホームGが売買仲介した土地の顧客に対し、同社での提案に加え、注文住宅の実績を積んできたハートGの建築プランも紹介することが可能になる。ウスイホームGの顧客を基盤にしながら受け皿を広げられるという。
木部社長は、今後の事業成長に向けて、「高齢者」に注目する。
「高齢者の住宅の売却の数が非常に多い。住み替えの提案としてはウスイホームGではリースバックも含めた資金調達の手伝いなどもやってきた。二つのグループで高齢者顧客への対応を進めていけば、売却した物件の建築案件にもつながるだろう」と話す。
それに加えて、富裕層向けビジネスや空き家再生事業にも取り組む。
(河内)
(2024年7月29日20面に掲載)