猛暑日の増加で注目集まる
不動産情報ポータルサイト「SUUMO(スーモ)」を運営するリクルート(東京都千代田区)で、住まいの調査研究を行うSUUMOリサーチセンターは6月27日、「SUUMOトレンド発表会2024」を開催。「断熱新時代」を2024年のトレンドワードに掲げた。
住宅性能が上がる中、特に関心が集まっているのが断熱性能だ。従来では、脱炭素社会の実現や光熱費削減といった点で、断熱性は注目されてきた。しかし、現在は健康意識の高まりから重要視されている。断熱性能の高い住宅も多彩になり、健康への好影響に関する研究成果も明らかになったからだ。その結果、断熱を重要視し、住宅に取り入れる動きが加速している。
同社は断熱に注目が集まる背景に、猛暑日が増加していることを挙げる。
23年、東京都では最高気温が35度を超える日が22日もあり、冷暖房効率の高さを前提とした家づくりが求められるようになった。さらに電気代の高騰も追い打ちをかける。こうしたことから、家を建てる人、探す人双方による断熱性と気密性への関心が一段と高まっている。
同社が23年に行った調査によれば、注文住宅を建築した人が重視した条件は耐震性に次ぎ、断熱性と気密性が2位となった。賃貸住宅の居住者に対しては、「ZEH(ゼロ・エネルギー・ハウス)仕様の賃貸住宅があれば、家賃が上がっても住みたいか」を尋ねるアンケートを実施した。その結果、子どもがいる世帯では約3割が「家賃が1~2割上がっても検討したい」と回答するなど断熱性能が高い物件の需要が高まっている傾向が見られた。
国も基準の見直しを進める。25年4月以降の新築住宅では省エネルギー基準を守ることが義務化される。
24年4月からは省エネ性能表示制度が新築物件を対象に開始し、既存住宅においてもラベル表示の検討がされている。今後、新築だけでなく既存住宅でも影響が出ると考えられる。
SUUMOリサーチセンター研究員の笠松美香副氏は「一年中快適な室温で生活することが健康につながる。健康寿命やクオリティー・オブ・ライフ(生活の質)の向上、省エネ効果といった観点から断熱をより身近な存在になりつつある。今までは脱炭素社会の実現や光熱費削減が重視されていたが、新しい時代に変化している。そのため、今年のトレンド予測を断熱新時代にした」とコメントした。
(2024年8月12日13面に掲載)