「不動産M&A(合併・買収)」は、不動産保有に特化した法人の株式を売買する、企業M&Aの一種だ。不動産M&Aで株式を売却すると、不動産そのものを売却するよりも手残り金額を増やせる可能性がある。不動産の現金化を求める顧客への提案の一つとして、不動産M&Aを活用するフジ総合グループの住江悠氏が、不動産オーナーや、不動産管理会社に向けて、「不動産M&Aの概要とメリット」「実例の紹介」「注意点」について、紹介する。(全3回)
現物売るより手残り増も
経営誌等でも取り上げられることが増えた不動産M&Aですが、その定義は、まちまちです。当社では、不動産の保有に特化し、それ以外の事業活動を行わない法人のM&Aを不動産M&Aとしています。昨今、あらゆる企業がM&Aの対象となりますが、企業の評価は財務諸表などから一律に行えるものではなく、事業内容により判断するべきポイントが異なります。複数の事業を扱う中で不動産も保有する法人の場合、評価を下す判断材料が各事業の内容にまたがり、複雑になります。そのため、この連載では、不動産保有に特化した法人のM&Aを不動産M&Aとして扱います。
不動産M&Aが不動産の現物を譲渡することに比べて、売り手のメリットを拡大する仕組みについて見ていきます。ただし、不動産M&Aが、現物譲渡に比べて、必ずしも優れているわけではありません。不動産の価値と適用される税を鑑みて、手残りが多いほうを事案ごとに選び、不動産を現金化する選択肢を広げることが重要です。
では、不動産の現物譲渡と不動産M&Aによる現金化との手残り金額の差を比較してみます。