持続可能な成長モデルを生み出し、不動産業界に新たな価値を与える―。建築家や研究者、賃貸経営者らがパネルディスカッションを通じ、SDGs(持続可能な開発目標)を基盤とした新しい不動産ビジネスの可能性を探るシンポジウム「不動産投資を新たなステージへ〜SDGsを新たな利益の源泉にする不動産業とは〜」が開催された。
シンポジウム開催
環境と経済の両立 有識者が意見交換
SDGs不動産・都市研究所(東京都新宿区)主催のオンラインシンポジウムが、2024年10月に開催された。不動産業界におけるSDGsの重要性をテーマに、最新の知見と実践例を共有。不動産投資家や業界関係者を中心とした登壇者が環境と経済を両立させる不動産ビジネスの未来について議論を交わした。
ESG(環境・社会・企業統治)マーク認証制度と不動産価値の関連を研究する一般財団法人日本不動産研究所(東京都港区)の古山英治氏、「ハーバード式不動産投資術」の著者で、慶応義塾大学大学院特任講師である上田真路氏などが登壇。それぞれ専門的視点から持続可能な不動産投資の戦略について発表した。
ESG認証物件 賃料上昇に効果
SDGsを意識した不動産賃貸事業は、経済的利益だけでなく社会的価値の創出にもつながる。
古山氏は、不動産投資で注視する「リスク」「リターン」の2軸に「社会的インパクト」という第3軸を加える重要性を指摘。不動産事業が環境や地域社会に及ぼす影響を考慮することが、不動産価値の向上や持続可能な運営につながると述べた。
古山氏は「当研究所の独自アンケートによると、ESGマークの認証を取得した物件は、将来的に賃料の上昇や稼働率向上といった経済的メリットを享受すると市場から予想されている」と報告した(画像参照)
さらに、室内環境の改善が生産性や居住満足度を向上させるという研究結果を紹介。眺望や採光、室温管理を工夫することで、健康的で快適な居住空間を提供し、それが長期的な収益向上に結び付くと述べた。
資金調達の面でも、銀行や投資家からの評価を高める効果があると指摘。不動産賃貸事業におけるSDGsの導入が市場競争力を高めるための鍵であると結論付けた。