3000戸を管理するWAOWAO-create(ワオワオクリエイト:大阪府岸和田市)は、相続コンサルティングを強みに受託戸数を伸ばす。公営住宅の建て替えプロジェクトにも参画。跡地の開発を通したまちづくりにも着手する。
月額制のコンサル契約10件
FCツールを活用 関連売上20%に
WAOWAO‐createは、相続コンサルティングを行うことにより、管理解約の抑制や既存オーナーからの追加受託につなげる。毎年100〜200戸ずつ安定的に管理戸数を増やす。管理エリアは、本社のある大阪府岸和田市を中心とした泉南地域のほか、大阪市、堺市、東大阪市など。2024年5月期の売上高は1億3000万円で、売上総利益は2000万円、売上高構成比は賃貸仲介・管理・売買が3分の1ずつだ。
相続コンサルティング業務の開始にあたり17年に、くふう住まいコンサルティング(東京都品川区)が提供する相続支援フランチャイズチェーン(FC)の「不動産相続の相談窓口」に加盟。FCから提供される研修や資産分析表作成システムを活用して、自社の既存オーナーや新規顧客の相続関連の相談を受け付ける。24年には相続関連の相談から派生した売り上げが月間売上高の2割程度となった。その内訳は、物件売買の仲介4割、管理受託に伴う管理料増加4割、新築時のコンサルティング費用2割だ。
オーナーに渡す資産分析表(サンプル)
コンサルティングの顧客は、同社が開催する月1回のセミナーで集客する。同社やグループの建築会社エスクリエイト(大阪府岸和田市)で相続コンサルを受けたオーナーからの紹介も増えてきた。WAOWAO‐createの脇島田貴弘社長は「コンサルを始めて8年がたち、当社の提案を評価するオーナーが新規の顧客を紹介してくれるケースが出てきている」と話す。
相続人・資産を聴取 分析後に対策提案
相続コンサルティングでは、オーナーの状況理解が重要だという。オーナーからの相談に対し、まずはオーナーの系譜を確認し、相続に関わる人を把握する。次に、オーナーが所有する資産の内容を確認。その後は資産分析表を作成して所有財産の価値を診断し、必要な提案を行う流れだ。
相続人や所有財産に関するヒアリングは、基本的に脇島田社長が担当している。資産分析後の提案は、アパートや駐車場などの土地活用から遺言書作成、家族信託の組成まで多様だ。
土地活用の提案では、複数の選択肢を用意する。アパートを建築する場合は、同社がアパートメーカー複数社から見積もりを取り内容を精査。アパートメーカーに建築費の交渉を行い、顧客に3〜4案を提示する。
顧客は、実施した作業や提案に応じてコンサルティング料金を支払う。前述の新築コンサルティングであれば、金額は物件の賃料1カ月分を目安とする。
相続財産に関する相談を随時受け付ける月額制のコンサルティング契約を締結するケースもある。コンサルティング契約は、2万〜5万円の年間契約で、月に1回ミーティングを実施。物件の経営分析・空室対策など賃貸経営の助言、資産の組み換え提案などを行う。3月末時点で10件の契約がある。
同社が相続コンサルティングに取り組み始めたのは、既存オーナーが代替わりする際の顧客離れを防止するためだ。相続コンサルという形で遺言書作成や家族信託組成を支援できれば、相続前に相続人との接点を持てる。同社では、相続コンサルティング開始前は年に5〜6件あった代替わりでの管理替えが、現在はほとんどなくなっているという。
市営住宅建て替え 転居サポート担当
同社は、地元自治体との官民連携事業にも携わることで、賃貸仲介や管理物件のリーシングにつなげる。18年から、本社のある岸和田市の隣の貝塚市で、築50年の市営住宅の建て替えに伴う住民の住み替え支援と跡地の開発を進めている。
建て替え対象の市営住宅は7棟220戸。貝塚市は18年に民間事業者のノウハウを活用するPFI(民間資金を活用した社会資本整備)の手法の導入を決定。同市は委託先の選定にあたり一般社団法人大阪府宅地建物取引業協会泉州支部(同)に相談。同支部から地元密着で賃貸事業を行っているWAOWAO‐createに声がかかった。同社を含む5社で特別目的会社(SPC)の貝塚まちづくりパートナーズ(大阪府貝塚市)を設立し、官民連携事業に取り組む。
WAOWAO‐createは同事業の中で、市営住宅の入居者の転居先の紹介や引っ越し事業者の手配などを担う。引っ越し先の住居は貝塚市が借り上げ、入居者に転貸する。
3月末時点で3棟の入居者の立ち退きが完了。6月ごろからは3棟の取り壊しと、跡地の再開発が始まる予定だ。同社は再開発の担当として、跡地を貝塚市から取得し、誘致した事業者に売却していく。
「跡地は三つに分け、賃貸住宅ゾーンと分譲地ゾーン、店舗や地域住民が交流できる公共施設が建つゾーンとする予定。賃貸住宅や分譲地には若い人に入ってもらい、個性的な店舗や子育て施設などで活気あるまちをつくっていく」(脇島田社長)
(中村)
(2025年4月28日20面に掲載)