事件性なければ告知義務なし

【連載】新・法律エクスプレス 第20回

管理・仲介業|2022年03月29日

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 私は宅地建物取引事業者として不動産賃貸の仲介を行っていますが、今回賃貸物件として取り扱う物件において、入浴中の溺死事故があったことを知りました。こうした事実があることを入居希望者に告知する義務はあるのでしょうか。

事故物件に関する告知義務について

 結論として、入浴中の溺死による事故があった事実を知ったというだけでは告知義務は否定されるでしょう。

 取引対象となる不動産において過去に人の死に関する事案が生じた場合、従来は、宅地建物取引事業者による適切な調査や告知に関わる判断基準はなく、安心して取引ができないとの指摘がされていました。

 そこで、国土交通省は、2021年10月に「宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン」を策定し、告知義務を負わなくてよい場合を以下のように示しました。

 すなわち、①賃貸借取引および売買取引の対象不動産で発生した自然死または日常生活の中での不慮の死(転倒事故・入浴中の溺死など)が発生した場合②賃貸借取引の対象不動産における①以外の死が発生しまたは①の死により特殊清掃などが行われることとなったが、その後おおむね3年が経過した場合③対象不動産の隣接住戸または入居者等が日常生活において通常使用しない集合住宅の共用部分において①以外の死が発生した場合または①の死が発生して特殊清掃などが行われた場合は原則的に告知義務はないものとしました。

 もっとも、前述のような場合でも、人の死の発生から経過した期間や死因にかかわらず、買主・借主から事案の有無について問われた場合や、社会的影響の大きさから買主・借主において把握しておくべき特段の事情があると認識した場合などは告知する必要があるとされました。

 本件は、ガイドラインの①にあたるため、入居希望者から事案の有無について問われるといった事情がない限りは告知義務はないでしょう。

森田 雅也 弁護士の写真

森田 雅也 弁護士

上智大学法科大学院卒業
2008年弁護士登録
2010年Authense法律事務所入所
年間3000件超の相続・不動産問題を取り扱う

(2022年3月28日16面に掲載)

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