ハタスホールディングス、新体制下で不動産事業を推進

【企業研究vol.288】ハタスホールディングス

インタビュー|2025年05月21日

ハタスホールディングス 愛知県刈谷市 塚本 龍生社長(25)

 賃貸住宅の建築を行うハタスホールディングス(愛知県刈谷市)は、25歳の塚本龍生新社長のもと、不動産の買い取り再販と売買仲介に注力する。同社は複数種類の賃貸商品の展開により、オーナーの土地に合わせた収益不動産を建築。年20棟の賃貸物件を提供し、成長を続けてきた。今後は地主に加えて富裕層との接点強化を図る。

建築・管理が主軸 年20棟を受注

―2023年に会社を受け継ぎ、4代目社長に就任されました。

 当社は代々親族内で事業を承継してきたので、私も学生の頃から継ぐつもりでいました。視野を広く持つため、不動産売買仲介会社を2社経験してから23年9月にハタスに入社しました。同年に先代社長である父からハタスホールディングスの事業承継を受け、代表に就任しました。先に取締役に着任していた弟と、兄弟二人で会社を率いています。父や当時の役員らのバックアップを受けながら成長していく予定でしたが、25年1月に父が亡くなり、またそれまでの間に約50人の役員や管理職が退職。後ろ盾のない状況で、会社経営がスタートしました。

ハタスの本社外観

ハタスの本社外観

―不安はありますか。

 強い不安は感じていません。建築する物件に自信があり、受注もありがたいことに年20棟と安定しています。建築後は管理も受託し、管理戸数は7000戸を突破。管理を受託するオーナーは500人弱になりました。売上高は24年9月期においてグループ会社連結で54億2000万円。そのうち、管理が29億円で約53.5%と最も高い比率を占めています。建築の売り上げは約14億円と25.8%。これからは、建築に加えて不動産事業を強化し、さらなる売り上げ伸長を目指します。

事業構成比 売上等グラフ

―建築する物件の特徴を教えてください。

 大きく賃貸住宅、事業用賃貸の建築を手がけています。賃貸住宅の商品展開は、木造低層アパートの「Jouer(ジュール)」、RC造マンションの「Jouer Grant(グラン)」、木造戸建て賃貸の「Jouer Villa(ヴィラ)」、長屋タイプの木造アパートの「JouerDuo(デュオ)」、木造シニア向け賃貸アパートの「HATAS LASHISA(ハタスラシサ)」です。

―賃貸住宅商品を4シリーズ展開しているのですね。

 Jouerは4〜12戸の中規模で設計します。施工費は5000万〜1億5000万円ほど。平均表面利回りは土地代を除き6〜10%です。Duoは6〜8戸程度の規模で、施工費は約7000万〜8000万円。表面利回りは同6〜8%ほど。JouerとDuoの専有部はいずれも1LDKです。Villaの専有部は3LDKで、施工費にはばらつきがありますが、表面利回りは同7〜9%程度です。それぞれの数値は肌感覚も含まれるので、あくまで目安になりますが。

―他社と差別化できている点は。

 自社で建築し、自社保証サービスも提供している点が好評で、受注に至っています。受注の内訳としては、既存オーナーからの受注が60%、新規オーナーからの受注が40%です。賃貸住宅のほかにも倉庫付き事務所や事務所兼店舗、コンパクトオフィスなど複数の収益不動産商品を用意しています。オーナーの土地や要望に合わせた提案を行うため、現在の商品展開になりました。

―先ほど、年20棟を供給していると伺いました。供給スピードを落とさないためにどのような工夫をしていますか。

 「作業的な部分」を外注するようにしています。具体的にはパース作成や構造計算など、クリエイティブではないフローをアウトソーシングすることで生産性を高めています。ちなみに、設計士は4人を雇用しています。

Jouer

四つの賃貸商品。①木造低層アパート「Jouer」

木造戸建て賃貸「Jouer Villa」

②木造戸建て賃貸「Jouer Villa」

Jouer Duo

③長屋タイプの木造アパート「Jouer Duo」

HATAS LASHISA

④木造シニア向け賃貸アパート「HATAS LASHISA」のパース図

年商100億円掲げる 富裕層取り込みへ

―新たな体制における目標は。

 当社は1930年に創業し、2030年に創業100周年を迎えます。その頃に、売上高100億円企業になることを目標に掲げています。この計画を「100年100億プロジェクト」と称し、2025年5月1日から本格始動しました。達成するために、新たに不動産事業を展開していきます。

―どのように伸ばしていきますか。

 具体的には買い取り再販と売買仲介を行っていきます。この二つの事業は、地主オーナーへの土地活用提案と比較して、収益化するまでの時間を短縮することができると考えています。地主へのアプローチは、年単位で時間をかけて提案してようやく実を結びます。ですが買い取り再販と売買仲介は、不動産の仕入れや売買情報の取得ができれば比較的早く売却益を得ることができます。

―仕入れの問題はどのように乗り越えますか。

 不動産の仲介会社などの協力会社から有益な不動産情報を共有してもらえることも多くあり、解消できると踏んでいます。長く収益不動産の建築を行っていたことで協力会社間でのネットワークを構築できています。

―新たに狙う顧客層は。

 経営者などの富裕層です。余裕資金をうまく資産運用したいと考えているような投資マインドのある人たちにアプローチをしていきます。資産コンサルティングの需要もあると感じています。集客は、書籍の出版や「ユーチューブ」での動画配信、ホームページでのSEO(検索エンジン最適化)対策記事の掲載などのウェブマーケティングで行っていこうと考えています。

―これまで関係性を築いてきた地主オーナーとの関係継続も必要では。

 今の地主オーナーとの関係性強化ももちろんですが、地主オーナーは事業承継が徐々に始まっています。相続後に不動産を大手不動産会社に売却されることのないよう、次世代オーナーとの関係性構築に力を入れる必要性を感じています。そのために、オーナー会という、オーナーやその家族を呼んで開く感謝祭や、年1回はツアーを実施していきたいと考えています。

―事業規模拡大に向けて、そのほかに行っていくことはありますか。

 同業他社のM&A(合併・買収)と、社内有志による新規商品の開発です。新規商品の開発は「INNOVISTA(イノヴィスタ)」というプロジェクトチームを立ち上げ、取り組んでいます。そのチームには私や弟の取締役や1級建築士、賃貸仲介、マーケティングなど、部署を横断して担当者が参画し、第1弾のシリーズを開発中です。

兄弟は真逆の性格

 兄である龍生社長と、弟の宗万取締役は、お互いに「自分とは性格が違う」と感じている。龍生社長は人の思いや会社の理念を重視するタイプ。一方で宗万取締役は、戦略を立てるのが好きなマーケタータイプだという。「同じタイプではないからこそ、お互いの不足を補い合いながら進んでいくことができる」と二人は声をそろえ話した。

兄の龍生社長と弟の宗万取締役

(写真右から)兄の龍生社長と弟の宗万取締役

会社概要

社名:ハタスホールディングス
所在地:愛知県刈谷市熊野町4丁目75-1
設立:1987年9月
資本金:2億2000万円(グループ合計)
事業内容:建設、管理、賃貸仲介など

社長プロフィール

2000年2月26日生まれ。愛知県刈谷市出身。大学では心理学を専攻し、22年に卒業。不動産会社を2社経験し、主に売買仲介に従事。23年9月にハタスに入社し、同年12月にハタスホールディングスの社長に就任した。好きな言葉は塚本社長の造語の「共創共栄」。


(2025年5月19日9面に掲載)

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