札幌オーナーズ、「支えてくれる仲間がいる」

札幌オーナーズ

インタビュー|2025年05月15日

札幌オーナーズ 北海道札幌市 大西 裕司 社長(48)

 札幌オーナーズ(北海道札幌市)の2代目社長に、常務を務めていた大西裕司氏が、2024年11月に就任した。入社23年目で、同社の管理拡大をけん引してきた、たたき上げだ。5カ年計画を掲げ、30年には売り上げ10億円、管理7500戸を目指す。

創業社長から引き継ぐバトン 5年で売り上げ倍増狙う

生産性向上テーマ 売買の成長も視野

―新社長体制下の成長目標は。

 「景気に左右されない会社をつくる」。ストックビジネス重視型の森賢一会長の経営方針を変えるつもりはありません。この延長線上で、時流に合った経営判断をしていきます。そのうえで、掲げるテーマは生産性の向上です。25年10月期を初年度とする、5カ年計画を立てました。現在の従業員数55人規模を基本的には維持しつつ、増収を目指します。24年9月期は、粗利益で5億6000万円、管理戸数5000戸でした。事業構成比は、賃貸管理と自社保有物件の家賃収入が51%、売買仲介が16.5%、営繕工事が15%、賃貸仲介・マンスリー運営が11%、物件企画やストレージの運営が4.5%、温泉施設運営2%。これを30年に、売り上げ10億円、管理戸数7500戸を目標に掲げます。今期の粗利益は6億円の着地を見込んでいます。

粗利益管理戸数

―目標達成のため、何に注力していきますか。

 引き続き主力は賃貸管理事業。ストックビジネスに軸足を置きつつ、売買仲介の成長にも関心を向けています。管理戸数の拡大による成長を少数精鋭で実行しようとしても、業務の大半を内製化する当社の場合、限界があります。そこで利益率を高めるために、売買仲介事業の強化が不可欠です。5カ年計画では、売り上げの2割を売買仲介で達成しようとしています。ただ、現状のペースでは達成が厳しい見通しです。

―売買仲介のどこに厳しさを感じていますか。

 当社の売買仲介の案件獲得経路を分析すると、管理を受託する既存オーナー約300人から依頼されたものが大半でした。管理戸数の拡大に注力すれば、工事提案とセットで売買仲介を獲得できる。そのため、管理と売買仲介は兼務の体制を敷いてきました。ここに課題を感じています。売買仲介は本来、専門の知識や経験が求められることから、兼務の体制ではこれ以上の成長は難しいと考えます。

―売買仲介の成長のために、計画している取り組みはありますか。

 売買仲介の専門チームの結成です。26年には2人の新卒を採用し、人材の層を厚くしていきます。自社管理物件の入居付けを目的としてきた賃貸仲介事業を新人育成の場と位置づけ、縮小させる方針です。これにより捻出した人材・時間を、管理獲得営業と売買仲介事業に振り分けていきたいです。

―入社23年目、新社長に抜てきされました。

 実は、社長就任の打診があったのは15年前でした。私が30代半ばの頃です。当時、管理戸数は2000戸を突破し、従業員は20人程度。当時社長だった森会長と私、営業幹部2人がいる4人での会食の場で突然言い渡されました。森会長が2人に「社長に就任した大西を支えられるのか」と聞くと「もちろんです」と返事をしてくれたことを覚えています。とはいえ、責任の重さに一度は断りました。一晩考え、自分一人で経営をするわけではなく周りに協力者がいることを思い直し、翌日、会社を継ぐ意思を森会長に伝えました。4人だけの、ここだけの話をしたその日から、私は覚悟を持ちました。

管理200戸スタート 入居率武器に伸長

―大西社長が社員時代、注力していたことを教えてください。

 私が札幌オーナーズに入社した02年は、設立8年目でした。社長を入れた従業員数は5人。売買仲介を主力に、管理は200戸程度でした。営業職で入社し、特に注力したのは管理戸数の受託営業です。森会長は当時から「人間関係構築の先にビジネスがある」という考えを持っていましたから、何の用事がなくとも、管理を受託していた約20人のオーナーの元へ毎日通いました。受託戸数増加の転機は、コンサルティング会社の船井総合研究所(東京都中央区)とコンサルティング契約をした05〜06年です。

―どんな取り組みが管理戸数の増加につながっていきましたか。

 オーナー向けセミナーの開催です。空室対策や入居率向上をテーマに、当社で主催するものと、ガス会社と提携して行う2種類のセミナーが管理戸数の拡大につながりました。05年ごろは、札幌市の平均入居率が74%だったのに対し、当社の管理物件は85%だったことをオーナーに訴求しました。当社主催のセミナーは、私が講師となり年6回開催。ガス会社との合同セミナーも開催し、ゲストスピーカーとして登壇しました。これをきっかけに、自主管理・他社管理オーナーからの委託相談のほか、売買案件も獲得しました。管理は年間50〜80戸ペースで増加し、1000戸を突破。その後、10年ごろに2000戸、12年には3000戸と管理戸数を積み上げました。

商圏、柔軟に拡大 現地企業と連携

―今後の管理戸数拡大策は。

 管理エリアを柔軟に拡大する方針です。工事を内製化している当社は、現地に駆け付けられる札幌市内をメイン商圏とし、市外の受託は積極的にとってきませんでした。しかし25年3月末時点では、苫小牧市や釧路市まで管理エリアを広げています。広域に複数棟を所有する既存オーナーの案件で、札幌市外の物件の管理に挑戦しました。現地の管理会社と組み、オーナー対応窓口は当社、現地対応は地元の管理会社に依頼する分業制で管理をしています。今後、1人のオーナーで複数棟を所有するケースであれば、管理エリアの拡大は視野に入れていきます。

社長プロフィール

 1977年3月生まれ、北海道北広島市出身。売買仲介会社など2社の不動産会社を経て、2002年10月に札幌オーナーズに入社。モットーは「自分を信じる事と、人生に無駄な事は一つもないと信じる事」。

(齋藤)
(2025年5月12日20面に掲載)

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