【賃貸管理会社の経営分析 ~受託営業編~】新規家主と既存家主をつかむ営業法

ハウスプロメイン, ジェクト

管理・仲介業|2022年06月03日

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 管理会社の関心が高い「管理受託営業」にフォーカスし各社の実態を調査。第3回となる今回は、管理物件売却先の新オーナーにプレゼンテーションし、受託につなげるハウスプロメイン(兵庫県神戸市)と、毎月の空室対策レポートを欠かさないジェクト(神奈川県川崎市)の事例を紹介する。

ハウスプロメイン、売却先の家主にプレゼン

実施後の受託率7割

 管理戸数4671戸のハウスプロメインでは、既存オーナーからの新たな物件紹介で安定的に戸数を増やす。一方でオーナーチェンジが発生した際に、買主に対し管理受託営業の場を設け、管理を獲得する。直近の1年間では164戸純増した。

ハウスプロメインの会社情報まとめ

 2021年5月〜22年4月での新規受託戸数は322戸、減少は158戸だった。管理物件の所在エリアは神戸市や阪神間が中心。

 管理部11人のうち、管理受託営業担当は7人だ。受託営業はエリア担当制をとっており、一人あたりの管理担当戸数は670戸程度。約560人のオーナーから受託しており、地主系が7割を占め、投資家系や法人が3割だ。

 新規管理受託のうち、5割が既存オーナーからの新規受託だ。既存オーナーが新たに物件を購入し、その管理を受けることで例年平均150戸ずつ新規受託を獲得できている。

 同社はオーナーチェンジに伴う管理会社替えによる解約抑制を課題とし、21年秋ごろから新たな取り組みをスタートした。オーナーが管理物件を売却する際に、買主に受託依頼のプレゼンを行うようにした。

 オーナーから売却する連絡を受け次第、オーナーと担当する売買仲介会社を通し、買主へプレゼンの機会をつくってもらうよう打診をする。

 プレゼンでは、該当物件の担当者がパワーポイントの資料を作成し、会社紹介や、会社の強み、管理会社を変更しないことのメリットなどを30分〜1時間程度で説明する。

プレゼンテーション資料の写真

実際にプレゼンテーションを行った際に作成・活用した資料

 買主は特に入居者の属性や人柄、入居者対応の仕方を気にする傾向にあるため、入居者情報を持っている点が同社へ管理を受託する決め手の一つになっている。

 ほかにも、物件の修繕履歴を把握していることや、買主にとって安心材料となり、受託の決め手になるという。プレゼン後の管理受託率は7割と、大きな成果が出ている。

 なお、買主のほとんどが投資家系・法人オーナーだ。そのため同社では直近1年間の新規オーナーのうち投資家系・法人の割合が全体の5割と、増加傾向にあるという。

 同プレゼンを始めた背景として、管理物件の解約理由のうち、売却に伴うオーナーチェンジが肌感覚で25%ほどを占め、最も大きい比率になっていた。地主系オーナーからその子どもが物件を相続したものの、遠方に住んでおり遠隔での運営が難しいなどの場合があったという。

 三宮営業所の松谷隆幸所長は「今後の管理の方針としては、オーナーとの相性を重視していきたい。当社としてもリーシングしやすい物件にしていきたいため、物件改善に意欲のあるオーナーと関係性を築いていきたい」と話す。

ジェクト、入居率97%強みに400戸増

既存顧客のリピート半数

 神奈川県川崎市を中心に約3000戸を管理するジェクトは、20年9月末時点と比べ約400戸管理戸数を増やした。建築から入居者募集、管理、リノベーションまで一気通貫サービスの提供を強みに、既存オーナーからの追加受託などで管理戸数を増やしている。

 商圏は川崎市中部と横浜市北部。管理営業担当者は合計5人。管理を受託するオーナーは現在約500人。地主系が中心だ。

ジェクトの会社情報まとめ

 21年の新規受託戸数は約400戸。大手企業の社宅をリノベした案件が約100戸、新築物件の管理受託が約100戸、どちらも既存オーナーからの依頼だ。そのほか地元の不動産会社から廃業などの理由で、管理物件を引き受ける場合などが約200戸あったという。

 管理営業スタッフ一人につき、約780戸を担当し、内外装の設備点検、リフォーム提案、退去立ち会いを行っている。

 同社は一気通貫のサービスを強みに加え、オーナー一人に対し、管理、仲介、建設、メンテナンス、資産コンサルティングなど、別部門の複数の営業担当がつく。対応内容ごとに営業担当者を分けることで、会社全体でオーナーをサポートする体制を提供できるという。

ジェクト中原店の外観写真

仲介店舗である中原店の外観

 重層的な関係を築くことでチーム一丸となって、入居者募集や物件の価値向上、資産運用提案などを行いオーナーの信頼を獲得。既存顧客から、数十戸の新規管理を委託された例もあったという。

 また、月に2回程度、仲介営業スタッフが空室物件を巡回し、入居につなげるための検討会議を実施。1件ごとに物件の特徴や魅力をレポートにまとめ、空室改善の対策提案をオーナーに行う。こういった空室解消の取り組みで97%という高い入居率を維持。同社への信頼が既存オーナーを通じて地域のネットワークへと広がり、地元在住の新規顧客からの新規受託につながるケースも増えてきている。

 不動産部の戸叶哲部長は「地元密着企業としてオーナーや地域住民からの信頼を得るためにも、管理物件での入居率改善提案を重視していきたい」と話した。

 今後、空室対策だけでなく相続や資産活用などオーナー一人一人のニーズや悩みに個別に対応できる体制をさらに整えていきたいとしている。

(2022年6月6日7面に掲載)

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