国が2030年までに住宅のZEH(ゼロ・エネルギー・ハウス)基準の標準化を目標に掲げる中、収益不動産のデベロッパーが開発を急ぐ。その中でも投資家向けに、いち早くZEH仕様賃貸住宅の開発を決めた3社のデベロッパーに話を聞いた。
ZEHとは
ZEHとは高断熱、省エネルギーを実現、再生可能エネルギーなどを導入し、住宅で消費するエネルギーを熱量換算した1次エネルギー消費量の年間収支をゼロとすることを目指した住宅のこと。
集合住宅の場合は4種類が定義されており、特に「ZEH-M Oriented(ゼッチマンションオリエンテッド)」は都市部などの狭小住宅で、屋根面積が狭く、太陽光パネルを設置しても十分な発電量を得られない住宅において適応される。
優遇金利で投資家にPR
アーバネットコーポレーション、投資用で先駆け 23年2月に第1弾
投資家向けZEH仕様賃貸住宅の開発に、最初に名乗りを上げたのがアーバネットコーポレーション(東京都千代田区)だ。
同社のZEH仕様住宅第1弾は東京都練馬区に23年2月に竣工を予定する。ZEH―M Orientedの認証を取得し、1次エネルギーの年間消費量を従来より20%以上削減する。
ZEH仕様に伴い建築コストは増加するが、オリックス銀行(東京都港区)との提携により、事業資金の借入は0.1%、購入する個人投資家は0.05%、金利が優遇される。よって、投資家は従来と同程度の返済額で購入可能だ。
服部信治社長は「第2弾は未定だが、5年後には開発物件の約半数を、8年後には全開発物件をZEH仕様にしたい」と話す。
アーバネットコーポレーション
東京都千代田区
服部信治社長(72)
グローバル・リンク・マネジメント、エネルギー消費26%減 24年度に全物件対応
グローバル・リンク・マネジメント(東京都渋谷区)は23年4月末に東京都北区に建築物省エネルギー性能表示制度(BELS:ベルス)による評価で最高位の5つ星を取得した物件を、23年8月末に中野区にZEH仕様物件をそれぞれ竣工する。
経営企画部の竹内文弥部長は「23年度には開発物件の約半数をZEHやBELSの環境配慮型住宅にする。24年度には、自社で土地を取得し開発する物件では、全物件を環境配慮型住宅にする予定」とコメントする。
建築費が約2%上がる計算だが、たとえ賃料を上げたとしても優先的に入居者に選ばれる物件になると同社ではみる。断熱効果に優れた物件のため光熱費を削減できるからだ。中野区のZEH賃貸では同じ条件下の物件よりエネルギー消費量を約26%削減できる見通しだ。
シーラ、太陽光発電重視災害対策にも効果
年間300~400戸の賃貸住宅を開発するシーラ(同)はZEH仕様物件の第1弾を東京都北区で23年12月末に竣工する。第2弾も同時期に竣工する。2物件ともオリックス銀行と提携して開発を行うことで金利優遇をアピールし、個人投資家への分譲販売を進めていく。
同社のZEH賃貸の特徴は、太陽光パネルの設置も行っていくことだ。蓄電池も設置するため、停電が起きた際にも各戸へ電気の供給が可能だ。
湯藤義行社長は「蓄電システムが安価になり、各戸に設けられれば、より環境に配慮した物件にできる。ZEHに対応でき得る物件はすべて対応させたうえで太陽光パネルの設置を目指す。25年にZEH仕様物件1000戸供給が目標」と話す。
シーラ
東京都渋谷区
湯藤義行社長(46)
(2022年6月13日26面に掲載)