アーキテクト・ディベロッパー、業界大手見据え新社名「帝国不動産」

帝国不動産,アーキテクト・ディベロッパー

管理・仲介業|2026年05月15日

帝国不動産 木本 啓紀 社長

 賃貸住宅の開発・管理を手がけるアーキテクト・ディベロッパーは、さらなる成長を見据え、5月1日付で社名を「帝国不動産」へ変更した。2021年の新体制移行から4年半で管理戸数を大きく伸長。利益重視の経営を軸に、人材の獲得・育成を進めていく。ゆくゆくはIPO(新規株式公開)を視野に入れる。

アーキテクト・ディベロッパーから変更

日本を代表する企業目指す

 アーキテクト・ディベロッパーは「帝国不動産」へ社名を変更した。次なる成長ステージへの移行と、日本を代表する企業を目指す決意を込める。

 同社は21年9月に木本社長がトップに就任して以降、経営再建と事業基盤の強化を進めてきた。経営の見通しが立ち、19年に同社へ出資したソフトバンクグループへの恩返しを考え、同業他社との事業統合を模索した時期もあったという。だが、他社と比較した際、自社の高いオペレーション水準や人材の能力の高さを実感。企業のカルチャーを維持し、独立して成長する道を選択した。足元では収益体質の改善と組織の再構築が進み、次の拡大フェーズに移行しつつある。

新社名

 新社名の由来について木本社長は「将来的に業界トップを目指す中で、不動産会社に多いカタカナの社名では新興感が拭えない。業界大手に並んでも負けない漢字の力強い名前が望ましいと考えた」と説明する。「一度聞けば忘れない言葉であり、ポジティブな響きや品格を持ちながら、業界では使われていない〝空き家〞のような言葉だった」

 スケールの大きな社名へ変えたからといっても、大型プロジェクトへとかじを切るわけではない。木本社長は「無理に大型案件に挑む必要はない。データドリブンで合理性に基づき、謙虚にビジネスを積み上げる姿勢を維持する。当社の営業利益は前期で46億4300万円。利益成長率25%が継続すると仮定すると、計算上は20年で4027億円。単純計算なら業界最大手と肩を並べる規模になる。ただ、大きな名前は背負っても、その野心の実現を焦らないことがとても大事だと考えている」と強調する。短期的な規模拡大ではなく、複利的な成長を前提に時間を味方につけることで、着実に企業価値を高めていく考えだ。

売上、営業利益の推移

4年で9社M&A、管理5万6000戸

 木本社長の就任から約4年半で、同社の業績と事業規模は大きく伸長した。21年当時約4万戸だった管理戸数は、自社開発とM&A(合併・買収)を両輪に、直近では約5万6000戸まで拡大している。

 M&Aは22年から本格化し、すでに9社をグループ化した。三大都市圏に加え、仙台市や福岡市など地方中核都市でも引き合いが増えており、今後も積極的に推進する方針だ。地場の管理会社の事業を承継。電子契約システムやオーナー向けアプリなどのIT基盤を導入することで、稼働率の向上や業務効率化を実現してきた。加えて、地域に根差したオーナーとの関係性を維持しながら、修繕や建て替え、売買などを受注。グループ全体の収益機会を拡張している。

 こうした取り組みは、単なる管理戸数の積み上げにとどまらない。管理物件の増加に伴う賃料や稼働状況、入退去といったデータが蓄積されてきた。それがサービスの高度化や意思決定の精度向上にも寄与している。木本社長は、IT投資負担の増大やデジタル化の進展を背景に「不動産管理業界は今後、確実に寡占化が進む」と分析。同社がその受け皿として機能することを見込む。

 直近の業績で際立つのは、売り上げ規模の拡大以上に「利益」を重視する経営姿勢が明確になっている点だ。25年6月期は売上高が640億600万円と前期比で3.4%増だった一方、経常利益は44億1300万円で25%伸ばした。

開発事業とPM事業の両輪で成長

開発事業とPM事業の両輪で成長

 木本社長は「インフレ環境下で、時間とコストをかけて開発した物件を安売りするのは合理的ではない。設定した価格で確実に売り切ることが企業の強さだ」と語る。現場での安易な値引きを抑制し、適正価格での販売を徹底したことが、利益率の改善につながった。

 自社開発においてもリスク管理を徹底する。「完成後のキャッシュフローを精緻に見極め、建築コストから逆算して土地を取得している。そのため、現在進行中の数十棟のプロジェクトに赤字案件はない」。短期的な市況変動に左右されない堅実な事業モデルを構築している点も特徴だ。

IPO視野、売上1000億円へ

成長が人材を引き寄せる原動力

 同社が継続的な成長と変革を志向する背景には「人材獲得」という明確な目的がある。木本社長は「成長や変化がある企業にしか優秀な人材は集まらず、定着もしない」と指摘する。単に安定した収益を上げるだけでは、社員のモチベーションは維持できないとする。常に次の挑戦がある環境をつくることが、魅力ある組織を維持するうえで不可欠だとの考えを示す。

 実際、採用力は年々高まっている。26年4月には51人が新たに加わり、来春には新卒社員70人が入社する予定だ。待遇改善にも力を入れ、既存社員に対しては23年6月期から24年6月期に年収ベースで11.9%、24年6月期から25年6月期にかけては同14.2%と2桁の賃上げを実施。利益を着実に人材へ還元する。「不動産業は人がすべてであり、企業カルチャーこそが競争力の源泉だ」

 長期的にはIPOを視野に入れる。プロパティマネジメント事業というストック型ビジネスの粗利で一般管理費を賄える体制を維持。開発事業を組み合わせることで収益の安定性と成長性を両立させる。この両輪により、高い利益率を確保しながら売上高1000億円規模への到達を目指す。マクロ環境の変動にも耐え得る財務基盤およびデータと人材を軸とした経営体制を武器に、新生・帝国不動産としての一歩を踏み出す。

(河内)
(2026年5月11日20面に掲載)

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